この世界のスキル・アイテム“オリガミ”の秘密は僕だけが知っている

みけの

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前兆②

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 彼らはみんな、僕でも知っている有名人だ。
金色の髪と緑の瞳を保つ、白皙の美貌の持ち主でこの国の王太子である、お一人目はユリアス・ティル・ディーギャ。
この国の宰相閣下の息子で、紫紺の髪に水色の瞳の、やや繊細な感じのする美青年のお二人目はマイト・ファンタ・シャーマティ。
ラストは騎士団長の息子で、赤い髪にオレンジ色の瞳の、ガッシリ筋肉ボディの精悍な顔立ちの三人目・ゴーランド・ナイト。
王太子とそのお側付き達が、そこにいた。


  マリアに声をかけたいのに、彼女は殿下達と話しているせいで気がつかない。
どうしようか、と困っていたらおじさんが殿下達の前に進み出た。
「殿下。娘の誕生日にわざわざ足をお運び頂き誠に光栄です。わが伯爵家にとって今日は記念すべき日になるでしょう。……ですが」
そこで僕の肩に手を置いて、マリアの隣に引き合わせる。
「ご存じでしょうが、念の為ご紹介致します。彼はマリアの婚約者のカヤラ・オリガ伯爵令息です」
スムーズに僕を引き合わせてくれた。ホッとしながらおじさんに目礼し、殿下達に向き直る。
次男とはいっても伯爵令息。更に僕は精神年齢15+6歳だ。しっかりしたところを見せないと。
「はじめ……っ!?」
 でも……初めまして、と挨拶をしかけ……言葉が恐怖で固まった。
彼らの僕に向けた視線が、底冷えする位に冷たい。
まるで、汚いものでも見るような軽蔑とか嫌悪のこもったものだったからだ。
 …………どうして?
 彼らと僕は、今日が初対面だ。マリアを通して僕の事は聞いているかも知れないけどその程度だ。
 なのに……なぜ? と助けを求めるようにマリアを見たら、何故かビクッと体を震わせ、怯えた目で僕を見る。それに気付いた殿下が、彼女を自分の方に引き寄せて睨んできた。
 なぜ、なぜ? 何か……僕がすごい、悪人みたいになっている?
「? ……殿下、恐れ入りますが、親戚の者が是非挨拶したいと申しておりまして……。マリア、カヤラ君と2人で話でもしていなさい」
「は、はい……お父様」
 あれ?いつもはパパ呼びなのに。殿下の前だからちょっと礼儀正しいんだな。
 殿下達はおじさんの言葉に頷いて立ち上がった。
「じゃあマリア、また後で」
「はい、殿下……」
さっきは僕に怯えたみたいになったのに、殿下に微笑まれると一変、笑顔になる。
……何なんだ、これ。
ちょっとだけムカッとした。そりゃ、殿下達はカッコいいしさっき遠目で見ただけでも華やかさで圧倒されそうだった、そこは認める。
でも、こうまであからさまに、態度を変える事無いんじゃ無い? 婚約者なんだけど。
 僕が不機嫌そうにしていたら、
「え? ご、ごめんなさい……っ、私、何か……した?」
マリアがまた変になった。分からない事を言ってブルブル震えている。何で?
いつもなら『どうしちゃったのよ!』とか普通に訊いてくるのに。
「おいお前――!」
「落ち着け、ゴーランド」
 急に怒りだしたナイト様を王太子殿下が腕で制する。そして、
「マリア、何かあったら私達を呼ぶんだよ」
「はい、殿下」
マリアに声をかけてから、お2人を連れておじさんに案内を促す。
 そしてこの場を離れようとしたんだけど……。

 一瞬の隙をついて、騎士団長の令息が僕に近付く。
あれ? と思っていたら、僕の耳に口を寄せて……。

『ふざけてんじゃねぇぞ、クズ』

 ドスのきいた声が、脳に突き刺さるように響いた。


 あれから……記憶はハッキリしない。
ガタガタと震えるのを耐えながら、おじさんに『急に気分が悪くなりました。もう帰ります』と告げたのは覚えている。帰り際にプレゼントをマリアに渡した事も。
気がつけば僕はナルシト伯爵家ではなく、小さい公園のベンチに座り込んでいた。騎士団長の令息に言われた事。――いや、その言葉の裏にある悪意が、頭から離れなくて。
 前世を通して、今まででも誰かに“クズ”呼ばわりなんてされた事はない。
そりゃあ昔は兄や周りの同い年の子に“弱虫”とか“愚図”とか散々言われたけど……あんな一瞬で凍り付きそうな、どす黒い悪意の籠もった言葉を吐かれるような事は一度もしていないと断言出来る。
 僕はマリアの婚約者だ。
マリアだって言ってた。“彼らと仲良くするのは僕らの為”だと。僕が苦手だから、替りにやっているんだって。
 なのに……なぜ、彼らは僕に悪意を? 
マリアが僕の事を悪く言った? そう、思ったところで直ぐに打ち消し反省する。
 マリアがそんな事を、言う筈はないじゃないか。彼女は僕らの為に動いてくれているのに。



 グルグルと考えて、でも分からなくてまた考え……。
そんな不毛なループを破るような声が聞こえてきたのは、その時だった。
「へへっ、動くなよお嬢様! こいつがどうなってもいいのか!」
「…………くっ」
「お、お嬢様、お逃げ下さい……!」
 黒ずくめの人間が、腕にどこかの侍女らしいお仕着せ姿の女性を抱え、喉に短剣の先を突きつけている。
それに対峙しているのは――。
「あ……っ」
あれは――ケイト・ラッセン公爵令嬢!?
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