この世界のスキル・アイテム“オリガミ”の秘密は僕だけが知っている

みけの

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公爵令嬢・ケイト・ラッセン~マリア・ナルシト視点~

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 突然現れたイカれた姿の女が場を壊した。ユリアスが彼女の名を呼ぶ。

「ケイト・ラッセン!」
 
 今日は卒業生はドレスやスーツ姿。在校生は制服。
けど、その女だけ着こなしがおかしい。ボレロ型の上着に、あんな金の刺繍は本来、ない。下のスカートもあんなマーメイドラインじゃないし。
髪は片方だけテールにし、編み込まれているのは金と赤の……組紐? それを更に巻込み、付け根をピンで留めている。
その目立つ闖入者は、ゴーランドの拳を扇で撥ね除けてから、まるで何も無かったかのようにユリアス様に向き直った。
「これは王太子殿下。いくら卒業パーティと言っても、いささかおふざけが過ぎるのではありませんか? 人の婚約関係に口を挟むなんて」
浮かべているのは笑顔だけど、目だけは冷ややかだ。
 その後ろでカヤラとエドワルド・ザッカートが、目を丸くしているのが見える。さっきすごく怒っていたのに抜け落ちたみたいだ。
 その顔を見ていると、ムラムラと怒りが沸き起こってくる。

 ――カヤラ! どーして否定なんてするのよ!!

 いつもの気弱で圧に弱いあんたはどこに行ったのよ。
いつも通り重圧に負けて、“とにかくこの場から逃げたい”って感じで私の言った事を認めてくれれば良かっただけでしょ!!
ギリギリと歯がみしたくなるのを押さえている間も、ユリアスとケイト・ラッセンの会話は続いている。
「貴様は……知らないからだ。マリアがこいつに、どんな扱いを受けていたか!」
怒鳴り散らすユリアスに、女は平然としている。
……図太いわね。高位貴族か特待生か知らないけどどれだけ無神経なんだろう。
「聞いておりましたわよ? 大の男が3人で、カヤラ・オリガ様が否定しているのを丸っきりお耳に入れずの言いたい放題を」
「証人もいるんだ!」
「証人? ……ああ……」
ユリアス達の言葉に女はちらり、とそちらを見てからキッパリ言う。
「薄いですわ」
「どこがだ!」
「この方々だけの証言では根拠が薄いのです」
「これだけの人数なら十分だろう!」
「薄いですわ。先程からの様子を見ていましたが、そっちで一方的に決めつけてばかり。そんな調子で並べられた証人の発言を、真実と言われてもねぇ……」
「私達が無理に言わせたとでも言うのか!」
「ほほほ……。言わせないで下さいませ」
ケイト・ラッセンの笑い声が室内に響く。すっかり皆度肝を抜かれた形だ。

――もう少しでうまく行くのに。
 

 「男は踏み台だと思いなさい」
小さい頃から、ママは私に言ってきた。
「今の貴女はカヤラ・オリガと婚約しているけど、遠慮はいらないわ。確かに貴族にとって、婚約は務めだけれどそれはあくまで家や国の繁栄の為。守らなくてはならない約束ではないのだから、より良い殿方がいればそっちにつく。それが賢く生きる方法なの」

 私が授かったスキル・アイテム“ルーペ”は鑑定系アイテムだ。
対象物にかざすと詳細な情報が分かる。学力が高い程情報が明確になることからも研究分野を目指すと最適と言われている。
 でも正直、私はガッカリした。勉強なんてつまらないし地味だからやりたくない。
 ハッキリ言ってつまんないなー、って思ったわ。でもある日、ふと思ったの。

――これ……人間に使ったら、どうなるんだろう? って。

 みんな性質だけを見て、使う対象を考えた事がなかったから思いつかなかったのね。今までもなかった訳では無いわ。病気や怪我をした体には使われていたけど、それで出て来るのはあくまで医学の知識についてだけ。
でももし、その人の持つ特性や、何を喜ぶのか逆に嫌な事は何なのか、そんな事が分かったら良いな、って思った。

――それに、“人の弱味”とか。

 試して見たら、案外うまく行ったわ。
相手に気付かれないよう注意するのが難しいけど、慣れたら案外遠い場所からでも見られた。どこを見たら良いかでも色々やってみたけど、やっぱり頭か胸が多いわね。
 使うごとに私のスキルはどんどん上がっていった。

“所持者の手によりスキル“嗜好を知る”が増えました”
“所持者の手によりスキル“大切なものの置き場所”が増えました”

ルーペのスキルは知りたい情報の種類が増えるみたい。
つまらないと思っていたのが嘘みたいに楽しかった。

そして、ついにそれを得ることが出来た。

“所持者の手によりスキル“知られたくない秘密”が増えました”

……そう、これが欲しかったの。

そう、この証人達は、私に弱味を握られている。
だから絶対に彼らは私を裏切らないわ。


 けど……ここでスキルを使ってケイト・ラッセンの弱味を見るのはヤバい。
下手をすれば手の内を見せてしまう。

どうしよう……?

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