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第12章 セトラー開国

第177話 数学の重要性

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 ある日、妻のアリッサさん、オルガさん、ノエルさんの3人が同時に、妊娠していることが分かった。
 まあ、一緒に寝るのも順番ですからね…。

 つわりが酷い3人は、しばらく1人で寝るそうだ。
 いつもお姉さま達と一緒に寝て居たエリザちゃんは、寂しい反面嬉しそうだった。
 遂に私と姉さまの子供が…、と言っていたけど違うからね。
 これからはメイドのアーネさんが、一緒に寝てくれる。


 エリザちゃんは興味津々で、アーネさんに色々聞いている。
 収穫はいつ頃かしら?
 来年の秋ぐらいかと。

 赤ちゃんは畑にりません。

 麦の種蒔きと同じ時期ね。
 えぇ、蒔いた種を刈ってまた蒔くのです。
 まあ、二人目を作ると言うことね。

 はい、そこアーネさん!!
 その流れから言うと、聞き方によっては下ネタです。
 実際、その通りですがエリザちゃんはまだ11歳です。
 あまり触れない!!
 


 季節は12月。
 この世界の冬は雪が積もるほどではない。
 しかし寒いことには変わりはないけど。

 練習場ではみんなが集まり、それぞれ剣やクロスボウの練習をしている。
 これで汗をかいて寒い冬を乗り越えようと言うのか。

 しかし熱の入り方が凄い。
 いったい何と戦う気なのか?

 50人くらい居る、10歳未満の小さい子供達は退屈そうだ。
 そうだ算術を教えよう。
 この世界では貴族であれば別だけど、農民などはまともな教育を受けていない。
 1桁の加減算も出来ない人が多い。
 今の年齢から覚えて行けば、将来役に立つだろう。

 数学を学ぶことにより物事を論理的に考える力が身に付く。
 そう言う考え方自体が、数学教育により培われるからだ。
 突然、製鉄方法を教えられても分からないだろう。
 しかし数学的素養を理解することにより、なぜその方法である必要があるのか、論理的に考えられるようになるからだ。
 それにより製鉄の改良や、後継者に技術の継承が出来るようになる。

 今のままでは俺が居なくなれば、この技術も消えてしまいそうだからね。
 
 暇を見て子供達を集めて算術教室を始めた。
 まずは一桁の足し算と引き算からだ。
 果物やパンなど具体的な例で教えていく。
 3つあるりんごから1つを食べれば減るとか、逆に1つもらったら増えるなど、目で見て覚えてもらうやり方だ。
 計算はイメージが大切だからね。

 加減算がある程度出来るようになったら、九九を教えていく。
 転移前の日本人の九九が優れているのは、調子をつけて覚えられる点だ。
 九九を覚え暗唱していれば、歌詞から掛け算を覚えることができる。
 そろばんに似た物も既にこの世界にはあるが、それはまだ早いだろうからね。


 そうと決まればまずはまずは黒板造りだ。
 木の枠を作り板を貼る。
 黒い顔料を塗って乾かせば黒板の完成だ。
 
 チョークは卵の殻を粉々になるまで砕く。
 それに小麦粉と熱湯をそれぞれ小さじ1杯加えて混ぜ合わせる。
 チョークの型枠を作って置き、数日間しっかりと乾燥させれば完成だ。

 あとは適当な布で黒板拭きを作って置けばいい。



 屋敷のホールに机と壁に黒板を付け、俺は算術を教え始めた。
 最初は良かったが、その内子供達が飽きてきた。
 それはそうだな、漠然と勉強を教えられても楽しいとは思えない。

 そうだご褒美を作ろうか。
 俺は子供達を屋敷の台所に集めた。
 
 わい、わい、わい、わい、
  がや、がや、がや、がや、

「何が始まるの?」
 子供達が聞いてくる。
「まあ、見ていて」
 俺はそう答えると魔道コンロに火を付けた。

 フライパンに、砂糖と水を1/3の割合で入れる。
  中火にかけて煮詰める。
 端から徐々に黄色くなりはじめたら、色が均一になるようにフライパンを回す感じでゆする。
 そして火を止める。
 まな板の上にスプーン一杯くらいの量を垂らす。
 そこに楊枝を刺していく。

 そして飴が冷えたら、はい『べっこう飴』の出来上がりだ!!
 作った飴を子供達に渡していく。
「美味しいから、舐めてみて」
 俺はそう言うと、飴を舐める真似をした。
 すると1人が舐め始める。
「甘~い!!」
「どれ、どれ」
「本当だ、美味しい!!」
 子供達は笑顔になった。

「これから勉強をする度に、この『べっこう飴』をあげるから」
「えっ!本当?!」
「嬉しい~!!」
 子供達が騒ぎ出す。
 この世界では、砂糖は貴重だからね。

「はい、静かに!!そして成績の優秀な子には、更に枚数を多くあげるよ!!」
「凄い!!それなら頑張る!!」
「私も~!!」

 それから子供達は、どんどん覚えていく。
 二桁の掛け算、割り算の筆算。
 分数や整数、因数分解を次々と。


 俺の屋敷で勉強を始めると、大人達もやってくるようになった。
 きっと子供達に、刺激を受けたのだろう。

 はい、そこ!!
 大人だからって授業終わりの、べっこう飴は1人1本ですよ!
 そんな~みたいな、残念な顔をしない。

 健康診断を兼ね鑑定で調べると、子供達の中に魔力持ちの子が何人かいた。
 その子達はアリッサさんが、個別に魔法を教えている。
 中にはエリザちゃんもいる。
 エリザちゃんは水属性のようだ。

 水魔法は多様な魔法だ。
 生活に役立つだけでなく攻撃や補助系、召喚魔法や回復魔法も使用可能だ。
「ほんとうですか、エリアス様?!」
 エリザちゃんが食いついて来た。
「私は回復魔法を覚えたいです」
 そうか!でもそれにはまず、人体構造を覚えないとね。

 俺は『創生魔法』を使い木製の人体模型を創った。
 そして他の子供達にも説明しながら、構造や臓器の役割を話す。
「エリアス様、これはなんでしょうか?私にはございません」
 エリザちゃんが俺に聞いてくる。
 しまった、男性の人体模型だった。

「エリザ様、これは『オプション』です」
 側に居たメイドのアーネさんが答える。
「『オプション』?」
「はい、機能を追加したり性能を高めるといった目的がございます」
「まあ、どんな機能が?」
「はい、それは…」
 はい、そこまで!!
 他の子供達も耳を澄まして聞かない。
 ツンツンしない。
「こうすると、性能が…」
 もう、いいです!!




 蒸気機関車を利用し、各領からセトラー国を訪れた親善大使は驚く。
 子供達を集め、勉強を教える学校があるという。
 するとそこで大使達が見たものは、見たことも聞いたこともない『方程式』と言う呪文を唱える大勢の子供達の姿であった。

 数十年後、セトラー国で学んだ子供達は、国の中枢を担う存在となって行く。
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