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第16章 今度は召喚(ビッチェ王女編)

第213話 勇者か魔王か

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 俺は模擬試合を行う前に準備運動を兼ねて剣技を披露することにした。
 するとそれを見ていたギャラリーは静まり返っていた。

 それはそうだろうな。
 こんな肉厚の大剣を目にも止まらぬ速さで振るわれたら、対処できないと思うのが当然だからだ。

「これは素晴らしい!!」
「なんと見事なのだ!!」
「これなら模擬戦は不要だ!!」
 見ていた騎士団の人達は手を叩きながら、俺の剣技を讃えてくれている。

「さすがは勇者エリアス殿だ!!なんという技量だろうか!!これで我が国も魔物の脅威から解放される!!」
 手を叩くサバイア国王と、横に立っているガストン宰相との会話が聞こえてくる。

「勇者召喚の話がビッチェ王女から出た時には、古代文献の眉唾ものだと思ったが…」
「そうですな国王。無事、召喚できて良かったですな」

 そんな会話が聞こえる中、オバダリア侯爵がバツの悪い顔をしていた。
 まあ、そうだよね。
 俺を『凡人』扱いしたのだから。
 まあこの国にとっては、外れて良かったのだろうけど。

「では模擬戦は無しでいいでしょうか?」
「あぁ、構わぬ。だが勇者なら魔法も得意なのであろう?」
 国王は勇者に何を期待しているのだろう。
 俺の中では勇者と言えば仲間に助けられ能力は平均80点主義の、1人では何もできない脳筋のことを言うのだぞ!!

「わかりました。ではお見せ致しましょう」
 そう俺は返答して訓練場の中心に向かって歩いた。

 俺の魔法の能力は火・水・氷・風・光だ。
 だが生活魔法レベルしか出来ない。
 そこで補うのはストレージだ。

 空気中の魔素を収納して、魔力に変換しストレージに貯めて置く。
 特に俺達が住んでいるアスケルの森は、魔素が多く溜まりやすい。
 そんなところに2年近く住んでいれば十分すぎるくらいに魔力も溜まっている。

 俺は人差し指の先にマッチで火を点けたくらいの小さな炎を出した。
 
 クスッ!!

 誰かが笑う声が聞こえる。
 もっともです。

 そしてここからストレージに溜め込んである魔力を、圧縮し指の先に集めていく。
 するとどうだろう。
 上空100mくらいのところに、東京ドームくらいの巨大な炎の玉が浮かんでいる。
 さながら両腕を上げていれば、『オラに元気を分けてくれ』と言った気分だろう。

 俺のやっていることは威力が無い分、魔力量で補う攻撃方法。
 指先くらいしか炎が出せないから、魔力を集め何十万倍の炎を出すと言うことだ。

 ファイヤーボール1発は大した攻撃ではないけど、同じ威力の魔法を同時に何十万発撃てたらそれは大魔法と同じだ。

 アリッサさんから魔力制御の使い方も教えてもらっている。
 だから俺は少ない魔力で大魔法を放てる。
 しかも魔素を収納して魔力は無限にあるときている。



 
 訓練場の人々は巨大な火の玉をただ見上げている。
「わ、わかった。実力は十分にわかりました。疑ってすまなかった」
 そうサバイア国王は言うと軽く頭を下げた。

 その場にいる者達がざわついた。
 公の面前で国王が頭を下げるなど、あってはならないことだ。

 だがこの時、召喚が成功しビッチェ王女を称えることよりも先に国王は戦慄を覚えていた。
 これ程の大魔法をこの王都に落とされたら…一瞬で焦土しょうどと化すと。

 召喚したのは勇者か、もしくは『魔王』だったのかもしれないと…。
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