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第10部 結婚

第82話 運がない

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 俺はアルバンさんに任せっきりの、エリアス商会に顔を出した。
 そしてその後に泊まっている宿屋に帰って来た。
 
「ただいま」
「おかえりなさい、エリアス様」
 部屋のドアを開けるとカロリーナが待っていた。
 もう妻なのだからカロリーナ王女様と言うのも変だからね。
「どうでした?エリアス商会は」
「あぁ、『男子三日会わざれば』という言葉があるけど、商会も20日見ないだけで見違えるほど、大きくなっていたよ」
「エリアス様。それはたぶん、たとえが違うと思います」
「そうかな、あははは」
 俺は寒い笑いを返した。


「エリアス様の商会では、なにを扱っているのですか?」
「主に調味料かな」
「調味料ですか?」
「あぁ、それを使うと料理が美味しくなるんだよ」
「美味しくですか」
「たとえばこれとか?」
 俺はストレージからポトフを出してあげた。
「食べてみて」
 ズズズ~。
「まあ、美味しい!」
「ポトフて言う料理です。これに商会で扱っている『味元あじげん』という調味料を使っています」
「こんなに味が変わるんですね。こんな美味しい料理を食べられる、アレンの街の人が羨ましいわ」
「セトラー領に行けばこれから毎日、食べられますよ」
「まあ、それは嬉しいことです」

 その日の夕食は唐揚げと、デザートはカステラだった。
 聞くと最近アレンの街では、唐揚げやカステラが流行っているとか。
 高カロリーだと思いますが。

 カロリーナさん?さっきポトフ食べたよね?
 食べすぎですよ。
 

 食事が終わり2人で部屋に戻った。
 食事が終わればすることがない。
 TVもネットもなく、時間がつぶせない。
 だから子沢山こだくさんが多いのか?
 そして育てられない赤子は教会に捨てられる。

 しかも7歳未満の致死率が高い。
 それは衛生面が問題なのか?
 毎日、体を洗うだけでも違うと思うが。
 
 だがその水が貴重なのだ。
 井戸はあるが要所要所にないからだ。

 徳川家康が江戸幕府を開いた際に河川から街中に水路を引き、飲み水や生活水に使ったようにすればいいのに。
 水路を使い街から街へと荷物を運ぶことはしても、生活用水にするほど発展してはいない。

 
 さて、明日の用意でもするか。
 俺はストレージ内である乗り物を作ろうと考えていた。

 明日、セトラー領に行くのは俺以外に4人。
 カロリーナと侍女のナターシャさん。
 マリーと侍女のサブリナさんだ。

 王国から乗ってきた馬車は、普段使わないので馬ごと業者に売ってしまった。
 そこで考えたのが人力車だ。
 今回は4人乗りなの前列に2人、後列に2人の4人乗りの四輪にしようと思う。
 人力車を前後に2台くっついた感じだ。
 馬のいない小柄な馬車を俺が馬の代わりに引く、という感じだ。

 ストレージ内で作業をしている時は、パソコン画面の操作と同じになる。
 目の前の空間をタップし目を動かしている。
 傍から見たら『壊れた』と思われるだろう。

 カロリーナは側で何も言わずにそれを見ている。
 触れてはいけない事だと思ったのか。

 それとセトラー領に帰ったら、結婚についてみんなになんと言おう。
 騎士団の対抗試合で勝ったらカロリーナ王女がもらえ、マリーお嬢様からも『もらってほしい』と言われたから、もらいました!と言えるのだろうか?
 
  *    *    *    *    *

「痛い!」

 私はカロリーナ。
 元ジリヤ国王女。
 そして今はエリアス様の第一夫人。

 最近、タンスや柱の角に、足をよくぶつけるようになったわ?
 どうしたのかしら?


 カロリーナは知らなかった。
 女神ゼクシーの祝福という名の呪いを受け、運が-5下がった事を。

 可愛い息子を嫁に取られた、姑のささやかな嫌がらせであった。
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