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18 わたくしも戦いますわ!
しおりを挟む『っ!?………………助けて!!!』
異変を察知しすぐさま蹲ったわたくしは、咄嗟に助けを求めましたわ。
*****
咆哮を上げた魔物は、自分で開けた穴に体を捩じ込み、魔法の壁の内側に入り込もうと更にバキバキと穴を広げているのですわ!
「グォォオオオォオオオオオ!!!!!」
「キャー!!」
「に…逃げろ!」
「うわぁーー!!」
逃げ惑う村人たちで辺りは騒然とし、パニック状態ですわ!
魔物はドラゴンのような見た目で、まだ胸のあたりまでしか出てきていませんが、見えているだけで10メートルはありそうですわ。今まで見てきた魔物の中でも、桁違いの大きさですわ…!
塀の外で聞こえた咆哮も、恐らくこの魔物でしょう。咆哮を合図に魔物たちがわたくしたちを襲ってきたことを考えると、もしかしたらこの魔物がリーダー的存在だったのかもしれませんわ。
知能を備えている、ということですの…!?
「グォァアアアアァアアアア!!!!!」
バキ…バキバキ、バキッ!!!
咆哮で全身がビリビリと痺れますわ。
…その時、ギョロリとした真っ赤な目玉と目が合い、湧き上がる恐怖で体が固まってしまいましたわ…。その目にどこか、怒りや憎しみが込められている気がして…本能が恐怖を訴えるのですわ。手が震えるのですわ…!
この魔物は、今までのとレベルが違う…!
「くっ…!全員、攻撃体制に入れ!」
「「「はっ!!」」」
団長様の合図により、すぐさま騎士様たちが魔物の迎撃準備を始めましたわ。
わたくしも微力ながら…!
「姫様!姫様は駄目です!避難してください!!」
「何をおっしゃいますの!?わたくしも…」
「危険すぎます!!」
団長様の真剣なお顔。………でも。
「それは、わたくしが戦力にならないということですの?」
「………違います。姫様はかなりの戦力です。しかし、御身は尊い身で…」
「そういう理由でしたら引けませんわ」
「しかし!」
「王族は民を守るために頂点にいるのです。ここで逃げ出すわけには参りませんわ。少しでも戦力になるのならば、わたくしも参りますわ!」
「っ!?我々騎士は民と…王族を守るためにいるのです!!」
「今日はわたくし、騎士団の見習いとしてここにいるのですわ」
「そんな詭弁…!」
わたくしがいずれ王族ではなくなるとしても、この国に処刑されようとも、今はこの国の姫。民のために戦うことはわたくしの義務。わたくしの、誇り。
「……行かせてあげてくれませんか?」
「オレグ様!」
「ガルロノフ様!?」
魔物の咆哮と壁にメキメキとひびが入る音、人々の逃げ惑う声が響き渡る中、困ったように笑って「オーリャだよ」って…今はそれどころではありませんわ!?
突然、横からガッとオレグ様の胸ぐらを掴んできたのは…チャラス様!?
「チャラス様!?何を…!?」
「ガルロノフ殿!本気か!?」
「ああ」
「っ、婚約者だろう!?好きな女を危険に晒すのか!?」
「…婚約者だからこそだ」
オレグ様の答えに、目を見開くチャラス様。
そしてオレグ様はわたくしを…慈しむように見ながら言ったのですわ。
「レーナは優しくて責任感のある子なんだ。王族として在るために頑張ってきたのをずっと見てきた。ここで行かせなければ…彼女はきっとずっと苦しむ」
「オーリャ…」
「私からもお願いします!本当は行かせたくなんてありませんけど…姫様に後悔なんてしてほしくないんです!」
「ヤーナ…!」
「それに危険な目に合わせるわけないだろう?僕が全力で守るよ」
「!」
はうっ!オレグ様……!蕩けるような笑顔でそんなこと言われたら…!
「グォォオオオオォオォオ!!!!」
「って、うるさいですわね!おちおちときめいてもいられませんわ!?」
「えっ?レーナ!?僕にときめいて…」
「さぁ!皆様!ちゃちゃっと参りますわよ!!」
「待ってレーナ!すっごく気になる!!」
んもぅっ!オレグ様!集中してくださいませ!!
さぁ、チャラス様も!わたくしは引きませんわよ!?行きますわよ!!
メキメキ…バキッ!
「魔物の体が入り切る前に、首を切り落としましょう!オーリャ、魔法でいけますか?」
「うん、水の刃でいってみよう」
オレグ様がスッと腕を上げ、精神を集中させると…宙に水が集まり、塊となりましたわ。
そして解き放つように腕を振るうと、一瞬で水が刃のように変形し、そのまま魔物へ向かって飛びましたわ!!
ザシュッ!
「グァアッ!」
「…駄目か!」
水の刃は魔物の顔に傷はつけたものの、致命傷には程遠いですわ…。
というか、今ので目付きが余計鋭くなった気がしますわ!?
「チャラス殿の魔法は風か?」
「タラスな!?俺は風だ。風で首を斬るのは難しいかもしれねぇな…」
「それよりも風の魔法が使えるなら…風であそこまでわたくしのことを飛ばせまして?」
「「は?」」
「ここは直接切ってみましょう!わたくしが出来る限りジャンプしますから、同時に風の魔法で魔物まで飛ばしてくださいませ!」
「「却下だ!!!」」
「はい!では…いきますわよー!せーのっ!」
「「聞けーーーーーーー!!!」」
ダダダダッ、ドォンッ!
助走をつけ、思い切り地を蹴った…ので、地響きが!
ごめんなさい皆様!今の音の原因は魔物ではなくわたくしの重みですわ!
「ったくもぉーー!」ブォンッ!
「ナイスですわ!」
文句を言いつつも風の魔法で飛ばしてくださるチャラス様!方向も力加減も絶妙ですわ!
「たぁぁあああーーーー!!!」ザンッ!!
わたくしの人一倍重い体重全てを勢いに乗せて首を斬りつける…も、
「グァァアアアァアアア!!!!」
「くぅぅっ!」
「駄目か…!」
「レーナ!引け!!」
魔物の首は思っていたよりも固く、剣はめり込みはしたもののそれ以上沈みませんわ…!
剣が抜けず、もたもたしていると…
「グォウッ!!!」ブゥンッ!
「きゃああっ!!」
「レーナッ!!」
「姫さん!!」
魔物が首を思い切り振ったことで、飛ば…される………っ!!
「間に合えっ!」タプンッ!
「ひゃあ!?」
これは…水の、クッション…?………オレグ様!
「レーナ!怪我はない!?」
「大丈夫ですわ!ありがとうございます!」
バキバキバキバキ…バァアンッ!!!
「グォァアアアアァアアアア!!!!!」
「ヤバいぜ、おい…壁を抜けやがった!しかも超お怒りだぜ!?」
「全員、迎え撃てぇーーーー!!!」
「「はっ!!」」
団長様の合図とともに、騎士様方が魔物へと向かっていく…けれど。
ブゥンッ!!
「ぐぁっ!」
「うわぁっ!?」
「尻尾一振りで騎士達が飛ばされて…!?」
「規格外だな…」
どうすればいいんですの!?
魔法も効かない。
剣も刺さらない。
力も規格外で…どうすれば倒せますの!?
その時。
「う…うわああああん!!」
「…マルコ!?」
逃げ遅れたのでしょう。広場でマルコはただ立ち尽くしたまま大きな声で泣いていて…まずいですわ!怒り狂った魔物がそちらを見…!!
「グォアアアァアアアアア!!!!!」
「駄目!待っ…!!」
魔物は大声で泣くマルコに怒りの矛先を定め、一気に距離を詰め…!くっ!間に合わないっ!!
マルコ!!!
「ダメぇーーーーーーー!!!!!」
その瞬間。膨大な光が放たれたのですわ…!
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