処刑回避のため、頂点を目指しますわ!

まなま

文字の大きさ
34 / 48

29 妖精姫は悪魔の微笑みを浮かべるのですわ!

しおりを挟む

「これもよく似合うわ!じゃあこれももらうわ!レーナちゃんのサイズに急いで手直しお願いね。でもこれとは別に気軽なお茶会に着ていかれるドレスも何着か欲しいわね。既成のもので淡い色と濃い色、それぞれ用意できる?」
「かしこまりました。では、こちらとこちらと…こちらなどはいかがでしょう?」
「悪くないわね!じゃあレーナちゃん、着てみなさいな!」
「はい…………………」

お母様…が多すぎですわ!

お母様はラルフに渡してもらった手紙でわたくしの激ヤセを知り、急いで会いに来たらしいですわ…、それはもう、急いで。
王妃がドレスの裾をたくし上げて走って来ては駄目ですわ!
例えわたくしたち家族以外が許可なしでは立ち入れない、王族のプライベート空間でも!
一緒に走って来させられたデザイナーの方は声が出せないくらい息切れなさってましたわ!?

ちなみにデザイナーのお名前はノンナさん。
この国いちの売れっ子デザイナーなのですわ!
たまたまお母様のところにいらしていたらしくて、こうして一緒に駆け付けてくださったのですわ!全力で!

お母様がノンナさんを連れてきた理由はもちろん、わたくしの当面の着るドレスが無いから。ということで…既に仕立ててあるドレスを見繕ってくれているんですけれど…数が多すぎませんこと!?
って何でしたっけ!?

「お母様、わたくしこんなに着れませんわ!?」
「何言っているの!?こんっっなに!美しくなったのに!!楽しまなくちゃ!すぐにでもいろんなところに連れ回してあげるからね!楽しみねぇ~」
「えぇ~……」

お母様は淑女の中の淑女、可憐な妖精姫、舞い降りた天使…。そんな通り名がある程に可憐で優雅で美しいのですわ。

………外では。

「キャー!そのドレスも似合うわね!じゃあこれもね!あ、でも後でレーナちゃんだけのためのデザインのドレスも何パターンか作ってきてね」
「もちろん心得ております」
「あ、せっかくだから私とお揃いもいいわね!」
「王妃様とレギーナ姫様のお揃い…。さぞ美しいでしょうね!腕がなります!きっと次の社交シーズンには親子お揃いコーデが流行るに違いありませんね!」
「まあね!私とレーナちゃんだもの。当然よ!楽しみだわぁ」
「…………………」

お母様はいつも外では猫を何匹も何匹も被っておられるのですわ!それはもう、何があっても動じず、剥がれない鋼の猫を。鉄壁の猫壁なのですわ!
でもはしゃぐお母様を見ながら思いますの。人前に出たお母様ももちろん素敵ですけれど、猫を脱いだお母様もとても可愛らしいのですわ!
現に、お父様も四六時中デレデレしたお顔でお母様を見ておられますもの!

でも…猫を脱いだお母様もとても可愛らしいですけれど、わたくしを巻き込まないで欲しいですわ!
お母様とお揃いのドレス…。
わたくし確かにだいぶ痩せましたが「デブス-デブ=ブス」ってだけですから…妖精姫と呼ばれるお母様とのお揃いは辛いのですわぁ。

それにそんなにドレスはいりませんわ!
わたくしあまり社交の場は好きではありませんもの。
痩せる前からお母様はわたくしをなんとかしてお茶会に連れ出そうとしていたのだけれど、わたくしがと躱していたのですわ。
でもこの様子だと…今後、躱すのは難しいかもしれませんわね…。

「レーナちゃんとお揃い…なんて素敵なのかしら!」

うぅ…。こんなに楽しそうなお母様を見ていると断れる気がしませんわ。
それに、これはきっとわたくしのためでもあるのですわ。

「今までレーナちゃんが私たちに似てないだのなんだの言ってたやつらや、レーナちゃんの見た目を馬鹿にしてたやつらを見返してやるんだから!」

顔が似ているかどうかは置いておいて、わたくしとお兄様の特徴はお母様譲り。金の髪に青い瞳なのですわ。
なのに家族でわたくしだけブクブク太っていたため、よく「取り替えられたんじゃないか?」「王妃の浮気で産まれたんじゃないか?」だなんて言われていたって最近知ったのですわ…。
ものすごくお母様には肩身の狭い思いをさせてしまって………

「まぁ、そんなやつらはみんな私が裏から鉄槌を下してやったけどね!ざまぁみろだわ!そしてこれからは残党を残らず始末よ!おーっほっほっほ!」
「さすがです!王妃様!!」
「素敵です…!」

肩身の狭い思い、して……ませんでしたわね。そうでしたわね。お母様はきちんとやられたらやり返してたんでしたわね……倍返しで。
何をしたのか…聞くのも恐ろしいですわ……。
そしてノンナさんとヤーナがそんなお母様を羨望の眼差しで見ておりますわ。
え。やめてね?お母様化するのは。一人でもうお腹いっぱいですわ。
今日も今日とてわたくしの周りは混沌としておりますわね!?

「そ、そういえばお母様。ルスラン殿下との謁見は同席しなくてよろしかったんですの?お父様とお兄様は今、ご挨拶なさってるんですわよね?」
「あー、あのカエル王子?」
「カ、カエル……?」
「ほら、あの泣き声鳴き声が。」
「お母様、ルビがおかしくてよ………」

そして不敬でしてよ。
確かに鳴き声…じゃなくて泣き声は変わってはいますが。

「なんで泣いてるのかは知らないけどずっと泣いてるから謁見は明日になったのよ」
「ずっと泣いてるんですの…」
「うちの国に何しに来たんだろうね、あのカエル王子」
「いや、だから不敬でしてよ」

妖精姫は口が悪いのですわ。
そっか…ルスラン殿下はまだボリスラーフのことを引きずってますのね。
でもボリスラーフが今、幸せなんだから…それでいいのではないかしら?
悩んでも悔やんでも仕方がありませんもの。
ボリスラーフの幸せを一緒に喜んで、そしてゼレグラントをボリスラーフの代わりに立派に率いてあげれば…十分ではないのかしらね。

「あなたも謁見には出るんだからね」
「げ。」

しまった。本音が出てしまいましたわ。
こら、ヤーナ!小さい声で「カエル姫……」って言ったの聞こえましてよ!?

「明日の謁見にはどのドレスがいいかしら?とびきり綺麗にして行かないと!」

え、なんでそんなに張り切ってるんですの?

「…………ヒッ!?」

お母様、顔がヤッベェことになってますわ!?
人ひとりサクッと殺しちゃいそうな顔してますわ!!?

「私、知ってるのよ。あのカエル王子が裏でレーナちゃんを馬鹿にしてたこと」

ふわりと笑ったお母様の笑顔は凄艶で。妖精ではなく、むしろ悪魔。
こんな悪魔になら男たちは自ら魂を差し出すんだろうな、なんて現実逃避してしまいましたわ……。

「明日が楽しみねぇ~」

お母様の笑顔が怖いですわ…。
ルスラン殿下、頑張ってくださいませ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...