ありがちな異世界での過ごし方

nami

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第3話 街に怪盗がやって来た(後編)

9 これからよろしく♪

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「じゃあ改めて自己紹介するわね。アタシはノイア=セネシア。見ての通りリザーテイリアよ」

「クリムベール=リートフェルトだよ。これからよろしくね、ノイアさん♪」

「ええ」

 クリンちゃんとノイアさんが握手をする。クリンちゃんはすっかりノイアさんに懐いてしまったようだ。

「ロートレック=ヘーレンスです。カラミンサで司書をしています。これからよろしくお願いしますね」

 姿勢を正し、ロートレックさんが名乗った。

「えっと、田中有子です。地球という世界から召喚されちゃいまして、今は帰る方法を探している最中だったりします」

「そうなんだ。ユウコちゃんも深刻な状況を抱えているのね……」

「いえ、クリンちゃんやロートレックさん、それにカラミンサの人達が良くしてくれるから平気です」

「待てユウコ。なぜそこで私の名前が出てこないんだ。まったく、いくら頭が悪くとも、扶養者が誰かくらいは理解していると思っていたのだがな。それと、この際だから言わせてもらうが、お前は私に対して敬意が無さ過ぎる。若輩の身の分際で、私のことをアレックスなどと当然のように呼び捨てにしおって。本来なら年長者を敬い“アレックス様”と呼ぶべきだろう」

 すかさずアレックスは突っ込んできた。しかも、くどくどと長ったらしく。

「……あいつ、あんな感じで毎日私をいびってくるんですよ」

 ノイアさんにひそひそと耳打ちして教える。

「ユウコちゃんも苦労してるのね……」

 ノイアさんは深く同情してくれた。

「ユウコ、浅知恵を働かせてデタラメを吹き込むんじゃない」

 アレックスの言葉など完全無視だ。ってかこいつ、さっき自分のことを“アレックス様と呼ぶべき”とか言ってたよね? 何それ? 意味わかんない! こいつ、自分がしでかしたことを未だに反省してないわけ!? ってか、自覚すらしてないの!? 私はあんたが召喚儀式を失敗させたせいで、この世界に召喚されたんだからね!? しかも、地球に帰れないっていう最悪なオマケ付きで! 私は完全に被害者なんだから、オメーこそ私のこと“有子様”って呼びやがれっ、オラッ!

「そうは言うがユウコ、あれは私一人のせいではない。責任はロートレックの奴にもあるんだ。私ばかり責めるのは筋違いというものだ」

 アレックスがしれっと言い出した。

「ちょっと! なんでそんなこと突然言い出すワケ!? 私何も言ってないけど!?」

「それから、私は絶対にお前のことを“ユウコ様”などと呼ばんからな。まったく、若輩者の分際で傲慢な奴だ。身の程をわきまえろ」

「ホンットいい加減にしてよっ! 今この状況で心読む必要とかあった!? あんまり陰険なことしないでよねっ!」

「わからんか? 必要があったから使ったのだ。“見当違いの反抗心を抱いた子供を躾る”という名目の必要性がな」

 アレックスはよくわからない理屈を無表情にしれっと言ってのけた。
 これ以上何を言っても無駄だと悟り、思いっきり睨みつけて抵抗する。
 するとこいつは『どうだ思い知ったか』と言いたげな眼差しで私を見据え『これに懲りたら以後気をつけるんだな』といった感じで視線をスッとそらした。ク~ヤ~シ~イ~っ! ぐうの音も出ないくらいにボコッてやりたいッ!

「ほら、アレックスもノイアさんに自己紹介だよ?」

 クリンちゃんが無邪気にアレックスを促す。全員の視線がアレックスに集まる。

「アレックス=コールだ。クリムベールと、そこの恩知らずで傲慢な戯け者の小娘の保護者をしている」

 さっき名が上がらなかった仕返しと言わんばかりに、罵声三段構えで私を罵り自己紹介をした。ひっど! そこまで言う!?
 怒りの眼差しで思い切りアレックスを睨みつける。
 するとこいつは『何か文句でもあるのか?』と言いたげにしばらく見つめ返し『自業自得だろう、馬鹿め』と勝ち誇った感じにスッと視線を外した。む、ムカつく~! 思いッきりシバき倒したいッ!

「ねえ、アレックス。アタシどこの部屋を使っていいの?」

 ノイアさんがさも当然という風に、アレックスに訊ねる。うは! ノイアさん、この屋敷に転がり込むつもりなの!? それはさすがに図々しいんじゃない?

「ためらうことなくうちに転がり込もうとは。お前、一体どういう神経している」

「堅いこと言わないでよぉ。いいじゃない、こんなに広い屋敷なんだもん。使ってない部屋、いっぱいあるんでしょ?」

 ノイアさんの図々し過ぎる言葉に、アレックスは数秒程の短い間を置き、

「……空いている客間を好きに使え」

と、大変寛大なお言葉を返した。
 んなッ!? あっさり承諾しちゃうの!? ノイアさんも超厚かましいけど、その願いをものの数秒で認めるって、アレックスも一体どういう神経してんの!? 私がこの屋敷に身を寄せるって時は、何かにつけて反論してめちゃ渋ってたくせに! ノイアさんの場合は即OK!? この差は何!? まさか、ノイアさんがセクシー美女だから!? それで許可したんじゃないでしょうね!? ちょっと、そこんとこどーなの、アレックス!
 疑いの眼差しで、じと~っとアレックスを睨みつける。

「ユウコ、なぜそんなに睨んでくる?」

「ねえ、もしかしてノイアさんの同居をあっさり許可したのは、ノイアさんが美人だから?」

 無愛想に刺々しく言ってやった。

「そんなわけないだろう。どうせ断ってもお前達がなんだかんだいちゃもんをつけて、結局受け入れなければならん空気になるんだ。その無駄な手間を省いた。それだけの話だ」

 アレックスは無表情に淡々とそう語った。

「ふ~ん、ホントにそれだけ~?」

「何が言いたいんだ、お前は?」

「べっつにィ~」

 投げやりに答えた。あんなコト言っちゃって、実際どうだか……。こいつ、いつも無表情だからイマイチ本心を掴めないんだよね。しれっとクールぶってるけど、心ん中はすっごい下心でいっぱいかもよ!? もう頭ん中は“ピンク一色ッ!”ってくらい。

 あ~あ、私もあのナントカって魔法が使えたらなぁ……。そしたら、こいつの心ん中思いッきし覗き込んで、弱みとかい~っぱい握っちゃるのに。うっひっひ……。

「愚かだなユウコ。仮にお前が心覘術を使えたとしても、私は普段読まれて困ることは何も考えていない。弱みを握るなど不可能だ」

 アレックスが私を見据え、完全に馬鹿にした態度で言ってのけた。

「んなッ!? ちょっと! また私の心ん中覗いたねっ!? 信じらんないこの変態ッ! 面白おかしく乱用すんな!『必要に迫られた時以外は使わない』って、エッラソーに言ってたくせにっ! 何よあの言葉? おもっくそ詐欺じゃんッ!」

「そんなことを言われるのは心外だ。さっきも言っただろう? 必要に迫られていたから使ったのだ。“絶対に叶えられない願望を抱いた子供の目を覚まさせる”ためにな」

 屁理屈として機能してるかも怪しい台詞を、アレックスはまたもしれっと言った。

「~~~ッ!! もうそんな無駄な能力、捨てちまえーーッ!!」

 私の怒声が昼下がりの書斎に轟いた。
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