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おまけ◆数年後、王都のとある貴族家の晩餐会にて◆
しおりを挟む「ふん。やはり貴様らは似合いの夫婦のようだな」
久しぶりにやってきた王都での晩餐会で、元婚約者と再会した。
「おかげさまで仲良くやっておりますわ」
私は行儀悪く舌打ちしたいのを我慢して、淡々と返事をした。チラリと目をやれば、夫はすこし離れた場所にいる。
「相変わらずかわいげのない……。お前と気が合うのはあの化け物くらいだろうよ」
「失礼な言い方、やめてくださいませ」
「引き合わせてやった私に、感謝もなく、ずいぶんな言いようだな」
「よくもまぁ、そんな…」
「だいたい昔からあいつは気に食わなかったんだ! 貴様と同じくらい不愉快なヤツだった……! 見下すように助けてやったと言わんばかりに恩までうってきて、私をバカにして……。さぞかしお前と気が合うだろうと思ったんだが、案の定だな!」
……ん?
ふんと不愉快そうに鼻を鳴らした元婚約者の様子にぽかんとする。
……確かに、それは紹介先として、正しい判断なのかも……?
ううん?
確かに、この元婚約者とは合わないと思っている者同士は、合うかもしれない……?
敵の敵は味方、みたいな??
一応、あの時の顔合わせのセッティングは、この男なりに相性考えたチョイスだった……?
「……ありがとうございます?」
悪意なんだけど、悪意だけでもなさそうな何かを感じたのは、気のせいだろうか。
嫌そうに顔を顰めた元婚約者は吐き捨てるようにつぶやいた。
「別に、お前にもあいつにも、不幸になってほしいわけじゃないからな。だが、……その、あの時は、悪かったな。……幸せそうでよかった」
どこまでも嫌そうな様子に思わず吹き出す。一緒に怒りも飛んでしまった。
夫が近くまで歩み寄ってきているのを横目で確認しつつ、私は笑顔を浮かべる。
「いい御縁をありがとうございます」
元婚約者はもう一度嫌そうに鼻を鳴らして、夫が来る前に軽く手を挙げて去っていった。
まるで私たちのこと、心配してたみたいじゃない。
あの男に限ってそんなバカなと思うけれど、まあ、嫌な感じではあっても、普通の人ではあるのだ。もしかしたら、そういう事もあるのかもしれない。
隣に戻ってきた夫にちらりと目を向ける。
「……あなた、あの方に嫌われるような何をなさったの?」
「バカな騒ぎを起こしていたからそれを収めたことがあるが、それだろうか。結果的にアレを助けた形になったが……まさか覚えていたとは……」
世話になっておいてあの態度なのね……。
「……あの方とは、本当に、合う気がしませんわね」
あきれ半分、クスクスと笑う私に、仮面で顔を半分隠した夫が「同感だ」とため息をつく。
けれど、その合わない同士だからくっつけてやろうというその発想は、半分はきっと本当に悪意で、残りの半分はそれだけじゃない感情だったんじゃないかなと思った。そこには、なけなしの善意もあったのかもしれない。
許してあげるわ。
ほんの少し引っかかっていた元婚約者へのもやもやを捨て去る。
世の中にはどうしたって合わない人はいる。
きっと元婚約者とは一生わかり合えない。
ただ、キューピッドへの感謝くらいはしてあげてもいいわねと、夫と笑みを交わした。
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