化け物伯と追放令嬢

真麻一花

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 化け物伯だなんて噂されてるけれど、話してみれば、私の失言も笑って許してくれる優しい方で、もしかしたら私は、とても良い方に出会ったのかもしれない。
 最初こそ怖い態度だったけど、結構失礼なことばかり言っていた私に全然怒る素振りのない辺境伯さまの懐は、たぶん結構深い。
 元婚約者に感謝するのは癪だけど、これはいい縁談だったかも。

「素敵な旦那さまができてうれしいです」
「そうか」

 笑顔の私の手を取って、彼が口づける。
 こうして私たちの婚約は相成った。





 出会いから半年後、私は王都を去った。
 元婚約者のせいで居心地悪くなったこともあるし、辺境伯様との婚姻の噂も好意もあるけど揶揄するものも多いし。未練はない。
 ただ、逃げたと思われるのはちょっと元婚約者に負けたみたいで嫌だし、化け物伯なんて呼び方もちょっと癪に障るので、仮面をつけた辺境伯さまと、ラブラブな様子を見せつけてから、仲のいい方たちからは祝福されて旅立った。

 仮面はちょっとインパクトあるけど、とにかく顔がいいから仮面がかっこよく見えるのよね。顔が良いって強い。
 羨ましがられて、ちょっと気分が良かったので、辺境伯さまにお礼を言ったら、微妙な顔をされた。

「きっと、そういうところが、君のいいところなのだろう」

 どこか諦めを含んだ声が印象的だった。
 顔にコンプレックスある方なので、そういう自慢は気分がよくないだろうな、というのもわかるの。それはちょっと申し訳ないんだけれど、グロかわも、イケメン顔も、どっちも顔が好きで突き進むつもりなので、これからも諦めてほしい。だから、謝りもせずにうふふと笑ってごまかしておいた。
 そんな私に辺境伯さまは苦笑する。

 向けられる表情は、最初に言葉を交わしたときとは比べ物にならないくらい柔らかだ。
 最初の厳しそうな口調が通常モード寄りらしいのだけれど、威嚇をやめて以降は「お前」なんて呼び方すらしなくなって、「君」と柔らかな言葉にしてくれている。今は口調も態度もずっと優しいままだ。その気遣いが、とてもうれしい。
 きっと私は、この人のことを大好きになるだろうなって、確信している。

 左目周辺は変わらずグロテスクだと感じるけど、結婚したらガッツリ触らせてもらって、触っても大丈夫なのを実感しようと心に誓う。
 それがなんだかとても楽しみで、辺境伯さまと過ごすこれからの時間は、希望に満ちていた。



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