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5 師匠
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師匠であるアトールとの出会いは偶然だった。
当時フリーシャは五才。王女といっても、王族の住まいから遠く離され、使用人の住まう一角に隠されるようにして暮らしていた。
そこの裏庭で木々に隠れ、こっそりと魔術を使って遊んでいるのを、彼に見つかったのだ。
アトールは一介の町医者で、城の使用人の病気を診た帰りだった。
そこは普段なら人が滅多に立ち入らない場所である。それでもそこへ足を伸ばしたのは、不穏な魔力を感じ、探りにやってきたのだ。
「面白い力を持っているね」
魔力で浮き上がり、風に乗りながらふわふわと揺らめきながら木の枝から枝へと飛んでいたフリーシャは、突然かけられた声に驚いて、そのままぽすんと地面に落ちて座り込んでしまった。
にこにこと笑いながら話しかけてきた男に、幼いフリーシャは固まった。
フリーシャはこの力が使えるようになった時には既に、自分の力を人に知られてはならないと思っていた。
理屈ではない。本能的とも言える絶対な確信だった。
それ故、見つかったことに困って、今にも泣きそうになっていた。
「……参ったな。俺は、そんなに怖いかな」
笑いながら頭をかいたその人なつっこい動きに、フリーシャは戸惑った。怖くない人かもしれない、と、ほんの少しだけ警戒を解いた。
「……おじさん、ふりーしゃがあそんでたこと、だれにもいわないで?」
「うん、いいよ。内緒の遊びだったんだね」
おそるおそるお願いをすれば、彼が笑ってうなずいた。そこでようやくフリーシャはほっと力を抜いた。
「内緒だけどね、おにーさんも、そういうの、出来るんだよ」
彼はそういうと、きょろきょろっと辺りを見渡し、井戸の方を指した。フリーシャはその動きにつられて、指された方に目を向ける。すると井戸から丸い物が浮かび上がってきた。つるんとしていて、きらきら光って、透明で、とてもきれいな物だった。
「うわぁ……」
フリーシャは興奮してその丸い何かのところへ駆け寄った。
「おみず!」
フリーシャはびっくりした。水が丸い形で、ふわふわと浮いているのだ。
「こっちに来て、見ていてごらん」
おいでおいでをされて、フリーシャは、ちょっと残念に思いながら彼の元に戻ると、彼は笑いながらフリーシャの頭をなでて、「見ていてごらん」と、水の玉を指した。
すると、突然水の玉が割れるように飛散し、きらきらと光りながらこぼれ落ちていき、そこにはきれいな虹が現れた。
「すごい! すごい! おじさん、すごいのね!」
フリーシャは興奮して叫んだ。
「し~。おにーさんの方も、内緒の遊びだからね、小さいお声だよ」
笑いながら人差し指をたてた彼を見て、フリーシャも、笑いながら真似して「し~」をした。
「お嬢ちゃんは……きれいな服を着ているけど、このお城のお姫様かな?」
「そうよ。……ふりーしゃでございます」
フリーシャは、はっと挨拶する時のマナーを思い出して習ったとおりに、スカートの両端をちょいっとあげて、小さく膝を折って挨拶をした。
「それはご丁寧に。私は、町医者のアトールと申します。以後お見知りおきを」
アトールは笑いながらフリーシャに習って、おどけた素振りで、しかし優雅に礼を取った。
当時フリーシャは五才。王女といっても、王族の住まいから遠く離され、使用人の住まう一角に隠されるようにして暮らしていた。
そこの裏庭で木々に隠れ、こっそりと魔術を使って遊んでいるのを、彼に見つかったのだ。
アトールは一介の町医者で、城の使用人の病気を診た帰りだった。
そこは普段なら人が滅多に立ち入らない場所である。それでもそこへ足を伸ばしたのは、不穏な魔力を感じ、探りにやってきたのだ。
「面白い力を持っているね」
魔力で浮き上がり、風に乗りながらふわふわと揺らめきながら木の枝から枝へと飛んでいたフリーシャは、突然かけられた声に驚いて、そのままぽすんと地面に落ちて座り込んでしまった。
にこにこと笑いながら話しかけてきた男に、幼いフリーシャは固まった。
フリーシャはこの力が使えるようになった時には既に、自分の力を人に知られてはならないと思っていた。
理屈ではない。本能的とも言える絶対な確信だった。
それ故、見つかったことに困って、今にも泣きそうになっていた。
「……参ったな。俺は、そんなに怖いかな」
笑いながら頭をかいたその人なつっこい動きに、フリーシャは戸惑った。怖くない人かもしれない、と、ほんの少しだけ警戒を解いた。
「……おじさん、ふりーしゃがあそんでたこと、だれにもいわないで?」
「うん、いいよ。内緒の遊びだったんだね」
おそるおそるお願いをすれば、彼が笑ってうなずいた。そこでようやくフリーシャはほっと力を抜いた。
「内緒だけどね、おにーさんも、そういうの、出来るんだよ」
彼はそういうと、きょろきょろっと辺りを見渡し、井戸の方を指した。フリーシャはその動きにつられて、指された方に目を向ける。すると井戸から丸い物が浮かび上がってきた。つるんとしていて、きらきら光って、透明で、とてもきれいな物だった。
「うわぁ……」
フリーシャは興奮してその丸い何かのところへ駆け寄った。
「おみず!」
フリーシャはびっくりした。水が丸い形で、ふわふわと浮いているのだ。
「こっちに来て、見ていてごらん」
おいでおいでをされて、フリーシャは、ちょっと残念に思いながら彼の元に戻ると、彼は笑いながらフリーシャの頭をなでて、「見ていてごらん」と、水の玉を指した。
すると、突然水の玉が割れるように飛散し、きらきらと光りながらこぼれ落ちていき、そこにはきれいな虹が現れた。
「すごい! すごい! おじさん、すごいのね!」
フリーシャは興奮して叫んだ。
「し~。おにーさんの方も、内緒の遊びだからね、小さいお声だよ」
笑いながら人差し指をたてた彼を見て、フリーシャも、笑いながら真似して「し~」をした。
「お嬢ちゃんは……きれいな服を着ているけど、このお城のお姫様かな?」
「そうよ。……ふりーしゃでございます」
フリーシャは、はっと挨拶する時のマナーを思い出して習ったとおりに、スカートの両端をちょいっとあげて、小さく膝を折って挨拶をした。
「それはご丁寧に。私は、町医者のアトールと申します。以後お見知りおきを」
アトールは笑いながらフリーシャに習って、おどけた素振りで、しかし優雅に礼を取った。
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