魔王の花嫁

真麻一花

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 あまりにもぬけぬけと言う物だから、フリーシャは何かひるませることは出来ないかと頭をひねる。
 とりあえず、この際だから答えにくそうなのから聞いておく事にした。

「師匠は、魔王とどういう知り合いなんですか?」

 アトールのまねをして、なんの他意もなさそうに笑顔を浮かべてフリーシャは追求してみる。

「それは秘密だ。男には一つや二つ、謎があった方がかっこいいだろう?」

 ひるむことなくにやりと笑うアトールにフリーシャは別の質問を考える。

「それは気のせいです、師匠。じゃあ、年齢はどのくらいですか、おじいさん」
「バカを言うな。この俺のどこがおじいさんに見えるんだ。どう見てもお兄さんだろう。ついでに、謎めいた大人の魅力でかっこよさも倍増のはずだ」

 真剣に言い返してきたアトールに、フリーシャは、ふふんとすまして言い返す。

「図々しいです、師匠。残念ですが、最低四十年は姿が変わっていないと聞き及んでいますよ」

  ついでに謎めいた大人の魅力に関しての論議も言外に却下しておいた。

「王子だな。余計なことを……」

 言いながらアトールが、王子に目をやると、彼は素知らぬふりをする。
 アトールが否定しないということは。

「……やっぱり……」

 ここが反撃のチャンスだとばかりに言いかけたところで、アトールは唐突に話を変えた。

「しかしまさか、本当に花嫁を間違えていたとは、魔王も、案外バカだね」

 いかにも悪気のなさそうな笑顔で、はははっと、アトールが笑うと、すぐ近くでマーシアと王子がうんうんとうなずいた。
 話をそらすなとか、私の黒騎士をバカにしないでとか、言おうとして、フリーシャは口ごもる。
 よく考えれば……いや、よく考えなくても全てはそこに尽きる。
 反論する余地が今ひとつ見あたらなかった。
 ごまかそうとしているのは分かっているのに。けれどここで反撃しても、たぶんアトールはのらりくらりと逃げ切りそうなことも予測がつく。
 仕方なくフリーシャも複雑な顔をして、ため息をつきつつうなずいた。
 アトールはにこにこしながらフリーシャ達を見つめている。
 そうして、結局アトールはフリーシャの怒りを躱してしまった。どうにも食えない人である。
 その時、ぐいっとフリーシャの体が、後ろにあった大きな体に引き寄せられる。

「……え? なに……?」

 自分を包み込むように抱きしめる男を見上げる。

「消えろ」

 魔王はアトールに向けて無表情に一言放つと、フリーシャを隠すようにして身を翻した。
 アトールの幻影が消え、唐突に話は終わらされてしまった。

「え、ちょっと、まだ話が終わって……」

 その横暴さにフリーシャが文句を言ったが、結局それでアトールとの話は強制終了となり、フリーシャはひょいっと横抱きにされるとそのまま部屋を退出させられた。
 言い損ねたアトールへの文句と感謝については、次に合ったときに伝えてくれるよう、王子とマーシアに頼むことにした。
 そして、二人の滞在期間中に、色々とこの後のことをどうするかを取り決め、全てが決まると、二人は共に城を去った。



 それも、もう十日ほど前の出来事だった。


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