噛み痕をフライパンで焼いてツガイと別れてやりました

夜鳥すぱり

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 昴は、何も聞かない、こちらが話しかけない限り喋らない。別にツンとしてる訳でもなく、拾ってきた野良猫をむやみやたらと触らないタイプの人間らしかった。

「昴は、アルファだよね? 明らかにそんな感じ」

「うん、そう」

「あーー僕、オメガだけどさ、やっぱ、一緒にいるとこうムラムラする?」

 しないわけないよね、僕こんなに美少年だしね。リビングにある飾りだなのピカピカのガラスに映った自分を見て、うん、やはり美少年だと思う。大きな瞳は茶目で、くりっとしてて、長い睫毛がぱさぱさ。形の良い眉、小さな唇、小顔だし、髪はサラサラだし、体型だってすらりとしてる、人によっては貧弱に見えるかもだけど。身長は168でちょっと小柄だけど、男はそういうとこが可愛いって言うし、僕も大きなアルファにぎゅってされるのが好きだし。

 あーあ、先輩の身体、身体は理想的だったよな、でっかくてさ、引き締まっててさ。ちらりと、昴をみる、でもま、昴も悪くないよな、身長180あるだろ、でかいもん、顔は先輩よりも良い……てかほんと、今時の顔というか、僕と同じくらい良い。何より目が印象的、何もかも見透かしてるみたいな、話す前にじっと考え込むとことか、落ち着いてて雰囲気に逆らえないオーラがある。

 昴は、僕をじっと見つめて、その穏やかな口調で顔に似合わない言葉を吐いた。

「ムラムラ? 飛羽に性的興奮を覚えるってこと?」
「うっ、そーだよ、なんだよ、感じないの?  部屋に連れ込んで自分のベット貸しちゃってさ、下心くらい有ったんだじゃないの?  え? 僕だよ? こんなに、美少年なんだよ、美少年だよね? え? えっと、もしかして、違う? 僕、自惚れてる?  僕の美的感覚的にかなりの美少年だと思うけど、あれ?」

 なんだか、だんだん不安になってきた。だって僕ついさっき振られたんだよ、認めたくないけど。誰かに負けるなんて有り得ないって思ってた僕のプライドに完全にヒビが入ったんだよ。富士山みたいな自信も揺らぐってもんだろ。

「僕、可愛いくないだろうか」

 とうとうこんな惨めな言葉を口にした。あぁ、地の底に叩き付けられた気分だよ。歪んだ顔でうつ向く僕に、昴はまさかと、頭を振った。

「まさか、飛羽は可愛いよ、今までこんなに綺麗な子に有ったこと無かったから驚いたし」

「本当に? お前、変に気を使ってたら」

「気なんか使わないし、事実を言ってる、綺麗だし可愛い」

「あ……そ、ふん、そうだよね、そうだと思ってたけどさ」

 プライドのヒビに接着剤を塗って貰えた気分。こいつ、やっぱり良いやつだ。

「でもムラムラはしないかな」
「は?」
「ムラムラはしない」
「へ、へーーあ、そう、ふーん、なら良かった、こっちも、そんな気分じゃないし、迫られても困るし、世話になったから相手してやらないとかななんて思ったりしただけだし」

 なんだろ、また、欠片がポロポロしだしたんだが、おい、いま、治したばっかだぞ、頼むから。これ以上ダメージ与えないでくれない?

「飛羽がどうこうじゃなくて、僕、昔からフェロモンを感じないんだ。だから、オメガだからってムラムラしたりしないよ、安心して」

 安心してって、フェロモンに左右されないアルファなんて居るのか? 自制心がめちゃくちゃ高いとか?

 目の前の昴を、僕は物珍しげに、しげしげと見つめた。



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