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39 悪滅
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朝になって、僕が目を覚ますと、約束通りラクロア様は隣で寝ていた。すぅすぅ健康的な寝息をたててる。
「あ……ラクロア様の寝顔久しぶりに見たかも」
猫だった時は、ラクロア様よく僕の前で迂闊に寝てたけど、人間になってからは初めての寝顔かもしれない。
13年前と変わらない、優しいラクロア様。
すりっと、鼻をくっつけてみた。
(ふふっ、まだ起きない)
すりすりとほっぺにも。そういえば、ツガイは口と口をくっつけるって、王様が言ってた。
猫だった時はしたことあるけど、人間になってからはしたことないなぁ。
そーっと、少しだけ開いた口に、口をつけてみた。唇って、くすぐったいんだ、変な感じ。毛がないからこんな感触なんだ。
ラクロア様の唇ちょっとカサカサしてる、なめてあげようかな。
ペロッとした時、ラクロア様が目を開けて、少しだけビクッとした。
「あ?」
「ふふ、ラクロア様、驚いてる、ふふふっ」
「にゃ、りす、何して……?」
「唇が荒れてたからなめてたの」
「んんっ!?」
「ほら」
ペロッとまたなめたら、ラクロア様がガッバッと起き上がった。真っ赤な顔。
「にゃりす!!く、口をなめたらダメだ」
「どおして?」
「どおしてって、お前っ、と、とにかく、だめだ」
「だって、ツガイはお口とお口をくっつけるって、王様が言ってたの」
「エクシルのやつ、マセガキめ。とにかく、ニャリスはだめ、絶対だめ、他のやつともしちゃダメだぞ」
僕はこてりと首を傾げた。
「ええ?王様が嘘ついたの?」
「いや、嘘というわけではないが、その、人間にはそういうのは──年齢制限があるんだ」
ラクロア様がしかめっ面で真剣に言うから、人間はそういうものなのかと僕は納得した。
「そうなんだ、幾つになったらいいの?」
「18……いや、20だ」
「ふーーん、じゃぁ後7年もあるね」
「そうだぞ、もうしちゃだめだぞ」
「はぁい」
ラクロア様は、はぁっと、大袈裟なくらいのため息を吐いてベットから降りた。
「ね、ラクロア様、王様は無事だった?」
「あぁ、そうだったな、報告が遅れてすまない、無事だった、お前のお陰だ、今はまだ面会は出来ないが、お前に感謝していた、近いうちに会いに行こう」
「うん、良かった。エクリーヌ様も大丈夫だった?」
「あぁ、大丈夫」
「じゃぁ、エクリーヌ様の旦那様は?」
「……気づいていたのか」
「うん」
「そうか、お前は本当に賢い子だ」
ラクロア様の横顔が、悲しそうで、僕はラクロア様のお背中に抱きついた。少しでも慰めたい。
「エクリーヌの伴侶の、ディノアス公は西の棟に幽閉処分となった」
「首謀者だったの?」
「いや、だが公の側近の者の犯行ではある」
「王様は知ってるの?」
「あぁ」
「そう……」
自分の父親に命を狙われたなんて、王様はどう思っただろう。きっと、凄く悲しい。苦しい。あの太陽みたいな王様が悲しむのは嫌なのに。どうして、お父様がそんなことをするのかな。わからない、人間って変なことするね。家族は慈しむものなのに。仲間は大切にするものなのに。子供は護るものなのに。
悪意を向けたら、悪意は反ってくる。先に向けた方が負けるんだよ。考え足らずな行為の報いは受けなきゃいけない。呪いみたいにずっと、心を蝕んで……救われないまま心が壊れてく。だから悪行はためちゃだめなの。だめなんだよ。
「あ……ラクロア様の寝顔久しぶりに見たかも」
猫だった時は、ラクロア様よく僕の前で迂闊に寝てたけど、人間になってからは初めての寝顔かもしれない。
13年前と変わらない、優しいラクロア様。
すりっと、鼻をくっつけてみた。
(ふふっ、まだ起きない)
すりすりとほっぺにも。そういえば、ツガイは口と口をくっつけるって、王様が言ってた。
猫だった時はしたことあるけど、人間になってからはしたことないなぁ。
そーっと、少しだけ開いた口に、口をつけてみた。唇って、くすぐったいんだ、変な感じ。毛がないからこんな感触なんだ。
ラクロア様の唇ちょっとカサカサしてる、なめてあげようかな。
ペロッとした時、ラクロア様が目を開けて、少しだけビクッとした。
「あ?」
「ふふ、ラクロア様、驚いてる、ふふふっ」
「にゃ、りす、何して……?」
「唇が荒れてたからなめてたの」
「んんっ!?」
「ほら」
ペロッとまたなめたら、ラクロア様がガッバッと起き上がった。真っ赤な顔。
「にゃりす!!く、口をなめたらダメだ」
「どおして?」
「どおしてって、お前っ、と、とにかく、だめだ」
「だって、ツガイはお口とお口をくっつけるって、王様が言ってたの」
「エクシルのやつ、マセガキめ。とにかく、ニャリスはだめ、絶対だめ、他のやつともしちゃダメだぞ」
僕はこてりと首を傾げた。
「ええ?王様が嘘ついたの?」
「いや、嘘というわけではないが、その、人間にはそういうのは──年齢制限があるんだ」
ラクロア様がしかめっ面で真剣に言うから、人間はそういうものなのかと僕は納得した。
「そうなんだ、幾つになったらいいの?」
「18……いや、20だ」
「ふーーん、じゃぁ後7年もあるね」
「そうだぞ、もうしちゃだめだぞ」
「はぁい」
ラクロア様は、はぁっと、大袈裟なくらいのため息を吐いてベットから降りた。
「ね、ラクロア様、王様は無事だった?」
「あぁ、そうだったな、報告が遅れてすまない、無事だった、お前のお陰だ、今はまだ面会は出来ないが、お前に感謝していた、近いうちに会いに行こう」
「うん、良かった。エクリーヌ様も大丈夫だった?」
「あぁ、大丈夫」
「じゃぁ、エクリーヌ様の旦那様は?」
「……気づいていたのか」
「うん」
「そうか、お前は本当に賢い子だ」
ラクロア様の横顔が、悲しそうで、僕はラクロア様のお背中に抱きついた。少しでも慰めたい。
「エクリーヌの伴侶の、ディノアス公は西の棟に幽閉処分となった」
「首謀者だったの?」
「いや、だが公の側近の者の犯行ではある」
「王様は知ってるの?」
「あぁ」
「そう……」
自分の父親に命を狙われたなんて、王様はどう思っただろう。きっと、凄く悲しい。苦しい。あの太陽みたいな王様が悲しむのは嫌なのに。どうして、お父様がそんなことをするのかな。わからない、人間って変なことするね。家族は慈しむものなのに。仲間は大切にするものなのに。子供は護るものなのに。
悪意を向けたら、悪意は反ってくる。先に向けた方が負けるんだよ。考え足らずな行為の報いは受けなきゃいけない。呪いみたいにずっと、心を蝕んで……救われないまま心が壊れてく。だから悪行はためちゃだめなの。だめなんだよ。
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