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その14 暇です…/Y・D・Kなアルフ君

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※ルシェルディア/アルフ+(おまけ)国王&宰相 視点です

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念願の冒険者登録を済ませたその翌日ー…

※  ※  ※



ごろごろごろ……ごろごろごろごろ……

「む~~……むむ~~~……」


昨日帰城後、(何故か)唐突に移居させられた広く豪華感倍増しな室内の広いベッドの上で。
朝の訓練を終えて朝食を済ませたルシェルディアは、部屋へ戻ってくるなりベッドへとソォイ!とダイブすると、与えられたドレス姿のまま縦横無尽に転げ回って唸り声を上げていた。

そも然もありなん、原因は一つしかない。
昨日、折角冒険者ニューピーとなったのに、愛する猫ちゃん様より冒険者活動に待ったをかけられてしまったのが殊の外ルシェルディアにとって無念だったのだ。

ロキ宰相閣下より、室内以外にも城内くまなく探検する許可はもらってはいたものの…もふり要員…ならぬ猫ちゃん様も朝より仕事(?)の為不在で昼まで戻らないと部屋付きの侍女・ソリューに告げられてしまった。
その瞬間のルシェルディアの顔といったら…。
ソリュー曰く「この世の全てに絶望した顔」と言わしめた程。

城探検にしても、猫ちゃん様が姿を現すまではする気にもなれず、
さりとても室内で何が出来る訳でもなく…。
結果、高速でベッド上を転げ回っている訳なのであった。

しかしそれも1時間が限界だった(そもそも1時間も転げ回っていられることも異常)。

ベッド中央でピタリと動きを止めると、ムクリと上体を起こし……


「ふむ、やはり空いた時間には鍛錬するしかありませんね!」


ぴょん、とベッドから飛び降りると朝食前の鍛錬時に着用していたゆったりとした衣服に着替え、入念なるストレッチを始めるのだった。


※  ※  ※



(城内、国王専用執務室)



カリカリカリ………カリカリカリカリ…………

「………で?」

「「で?とは??」」


ひたすらにペンを走らせる音が響いていたそれ以外に雑音すら響くことのなかった執務室内。
沈黙を破ったのはやはりというかなんというか、アルフレッドだった。
沈黙に耐えきれず、という訳では勿論なく、若干苛立った気配を漂わせながらのその簡潔な問いに。
気配も彼の心情も大凡察知していながら華麗にスルーをして職務に励む国王と宰相の顔つきはいたって涼しげだ。

そんな2人を白けた様に見遣り手を止めたアルフレッドーアルフは、は…とこれまた白け切った息を短く吐くと、視線に苛立ちを強めた。


「とは?と。取ってつけた誤魔化しは要らん。
昨日の夜の時点で、俺は自分の仕事は当面分含めて終え、提出した筈なのだが。
…なんでここで兄上達と仲良し宜しく並んで事務仕事に従事しているんだろうなぁ…?」

「「そんなの、その方が俺達が楽できるからに決まっているからだろうが(でしょうが)」」

「何が決まっている、だ!!」


バン!!


机を打ち揺らし立ち上がったアルフは、ちっと舌打ちをしつつ机上に置かれた大量の書類をパパパと素早く分類してまとめ上げると、それを宰相と兄兼国王の机上へとそれぞれドン!ドン!!と乗せる。


「ったく、なんで俺が他人の分まで雑務に励まにゃあならんのだ!
この程度の書類、2人でかかればすぐ終わるだろうに……」


そう言ってスタスタと部屋の出入り口へと足を進めるアルフに「どこへ行くんだ」と2人から声がかかる。
その声にすら煩わしそうに眉を顰めると、ああ?とガラの悪い破落戸の如く振り向いた。


「そんなの決まってるだろう。今日は朝食を終えたらまっすぐ姿でルーシェに会うつもりだったんだからな……知ってんだろが」

「まぁ部屋から姿で現れたお前を目にした時から分かっていたが。
それはそれ、これはこれ、だ。
今はこのひたすらに積み上がった書類の山を片付けるのを手伝って欲しいと……ん?おお、全部処理済みとは…流石は我が弟だ!」

「折角久々にその姿になったのです、文官の最高位たる宰相の俺処理能力の高い殿下に手伝ってもらわない手はないでしょう?
む……次はこっちの山、でしたか?」

「それも既に処理済みだ!!左のは不備や記入漏れが多いから各部署に返書し再提出要請しろ!兄上の真ん中の山は下らん陳情書、メモ書きに目を通した後破棄して構わん!
その左隣りのは少々きな臭い内容につき要注意!!一応要点纏めといたが熟読して慎重に返書及び対応!!
あとは自分達で処理しろ以上!!」

「「おお!!ご苦労(様です)!!」」


大仰に喜んで見せる2人の様子に再度鋭く舌打ちをかますとバタン!と荒々しく執務室を退出した。

(…ったく、ホンット…!
こちとらさっさと事情を説明したいって時に!!
これだから城内に残るのは嫌なんだ!!)


暫くはいつもの様に他国へと足を伸ばすわけにもいかんし、と城に腰を落ち着けなければならない状況に嘆息が漏れるも。
図らずも連れ帰ってきた翠の髪と瞳の愛らしくも破天荒な少女の姿を脳裏に思い浮かべ、
今の自分の姿を目にして彼女がどんな表情を浮かべるのか…と考えに耽りながら足早に廊下を進んでいく。

その口元には薄らと笑みが浮かび、先ほどまで室内で撒き散らしていた苛立ちはいつの間にやら霧散していることに本人が気付くことなく、彼女の部屋へと淀みなく進んでいった。


※  ※  ※


(執務室内会話・おまけ)




ダンテ「本当、あいつ仕事早いなぁ。メモ書きも分かりやすくて正確だし」

ロキ「それに経理から上がって来た書類の不備も事細かく…お、不正発見。
  多分これ横領ですねぇ、伯爵家が一家消えます。
  その上数年分溜まった殿下用の仕事も昨晩の内に処理済みですし……
  本当に超が付くほどの有能ぶりです、直属の部下に欲しい」

ダンテ「すごぶる付きってやつだな。
   ………もうこれ、あいつが国王でいいんじゃね?」

ロキ「………わざわざ争いの種を芽吹かせないで下さいよ陛下。
  ですがまぁ………同感ですね」

ダンテ「そこは嘘でも“国王は貴方に於いて他にはおりません!”
   とか言ってくれない!?」

ロキ「恐れ多くも陛下に向かって嘘はつけませんよ、
  そもそも自分で言ったんじゃないですか」

ダンテ「………なんか虚しくなってきた。仕事しよ……」

ロキ「それも同感です」



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※次回、人間アルフとルーシェちゃんの初対面!?
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