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その37 露見(前)
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(Side:アルフ)
伯爵家令息、カールの精神支配が解けたことを彼の眼差しから理解した俺は、準備が整ったことに内心ほくそ笑んだ。
兄の魔道具は正常に作動、騎士団員らの配置も万全。
そして最後の懸案事項であった、強い洗脳状態にあったカール青年の
支配脱却もこれで完了した。
これでいつでもこの煩わしさ満点の女を捕縛出来る。
お誂え向きに、時刻は丁度ファーストダンスが始まる頃合い。
兄も密かにそろそろかとファーストダンスの為に壇上から降りる気配を見せている。
(では、そろそろこの茶番を終わらせるとするか)
そうでなくばせっかくの夜会、
強引にパートナーに仕立てたルシェルディアと踊れない。
俺が堕ちたと完全に勘違いしているおめでたい屑の処分を、
俺はようやく開始した。
※ ※ ※
(Side:ソフィア)
会場に音楽隊が準備を始めたのを見て取り、
「さぁアルフ様!!ともに参りましょう?」
少しばかり強引にアルフレッドの腕を引きながら、
ファーストダンスのために壇上を降ろうと促す。
私の誘いに拒否を示すことなく笑顔で動き出した彼の側をちらりと確認すれば、
状況が理解できていないのか、ただただボーッと突っ立っている翠髪の女が。
(ふん…目の前で自分の男をまた奪われかけているってのに随分と間抜けな。
まぁそのまま突っ立ってればいいわ)
こんな極上品はあんたには相応しくないのよ
一段一段勿体ぶって壇上から降りながら、彼と腕を組んで余裕たっぷりに周囲を見回す。
嫌悪を示す者、戸惑う者、歯噛みする者と様々な視線を一心に受け、
しかしそれこそに堪らなく優越感を刺激される。
最早ここまで来れば当然、自身の元パートナーに興味のかけらもなく。
壇上に放置してから既に存在すら忘れていた。
壇上から降りきり、この広いホールの中心に足を進め……
「っえ?」
「………」
そのまま中心を通り過ぎて出入り口へと向かうアルフレッドの行動に、
初めて戸惑いを覚えた。
腕を強めに引いてみてもびくともせず、ズンズンと歩く彼の歩みを止めることができない。
それどころか巻きつけている手首を脇で挟まれ、先ほどとは逆に自分が引き摺られそうになり何度もタタラを踏む。
1人滑稽なタップダンスをしながら移動しているような間抜けさに、
周囲からはあからさまな嘲笑が上がり、カッと血の気が上る。
「ね、ねぇ、アルフ様!?」
「………」
「あの!手が痛いので離して…」
「………」
「っ離してって言ってるでしょ!?」
無言で自分を引き摺るようにして歩く王弟に苛立ち、
周囲の耳目すら気にせず荒げた声の音量が上がっていく。
そうこうしている間に出入り口付近へと到達してしまった!
「一体どういうつもりなの!?
アルフ様は淑女にこんな乱暴な!」
カシャン…
「え」
「はいどうぞ。
お望み通りに手を離しましたよ、あー…レディ?」
さもレディと呼称するのを躊躇う表情がかなり腹立たしかったが、
解放された手首には美しい宝石の嵌まった繊細な細工の腕輪が。
途端に機嫌が浮上する。
「あ、あら。アルフ様ったら!
こんな素敵なプレゼントを私に贈りたいがためにここまで?」
「ー…ああ」
「ふふっ!こんな場所でサプライズだなんて…案外悪戯好きですのねぇ?」
「そう、だな」
私の言葉ににっこりと微笑みながら言葉を返してくれる彼。
(やはり私のものになるべくしてなるのだわ、この男は!!)
恥ずかしげに頬を染めて見せ、ありがとうございますと礼を言えば、
彼の笑顔も深まる。
あとはダメ押しにファーストダンスを!
「折角素敵な頂き物をしたのですもの、さぁ、今から共にダンスを」
「ああ、その必要はない」
「ー…は?」
機嫌よく、再び彼の腕に手を絡めようとし…
冷めた声とともにパン!とその手を叩き落とされた。
伯爵家令息、カールの精神支配が解けたことを彼の眼差しから理解した俺は、準備が整ったことに内心ほくそ笑んだ。
兄の魔道具は正常に作動、騎士団員らの配置も万全。
そして最後の懸案事項であった、強い洗脳状態にあったカール青年の
支配脱却もこれで完了した。
これでいつでもこの煩わしさ満点の女を捕縛出来る。
お誂え向きに、時刻は丁度ファーストダンスが始まる頃合い。
兄も密かにそろそろかとファーストダンスの為に壇上から降りる気配を見せている。
(では、そろそろこの茶番を終わらせるとするか)
そうでなくばせっかくの夜会、
強引にパートナーに仕立てたルシェルディアと踊れない。
俺が堕ちたと完全に勘違いしているおめでたい屑の処分を、
俺はようやく開始した。
※ ※ ※
(Side:ソフィア)
会場に音楽隊が準備を始めたのを見て取り、
「さぁアルフ様!!ともに参りましょう?」
少しばかり強引にアルフレッドの腕を引きながら、
ファーストダンスのために壇上を降ろうと促す。
私の誘いに拒否を示すことなく笑顔で動き出した彼の側をちらりと確認すれば、
状況が理解できていないのか、ただただボーッと突っ立っている翠髪の女が。
(ふん…目の前で自分の男をまた奪われかけているってのに随分と間抜けな。
まぁそのまま突っ立ってればいいわ)
こんな極上品はあんたには相応しくないのよ
一段一段勿体ぶって壇上から降りながら、彼と腕を組んで余裕たっぷりに周囲を見回す。
嫌悪を示す者、戸惑う者、歯噛みする者と様々な視線を一心に受け、
しかしそれこそに堪らなく優越感を刺激される。
最早ここまで来れば当然、自身の元パートナーに興味のかけらもなく。
壇上に放置してから既に存在すら忘れていた。
壇上から降りきり、この広いホールの中心に足を進め……
「っえ?」
「………」
そのまま中心を通り過ぎて出入り口へと向かうアルフレッドの行動に、
初めて戸惑いを覚えた。
腕を強めに引いてみてもびくともせず、ズンズンと歩く彼の歩みを止めることができない。
それどころか巻きつけている手首を脇で挟まれ、先ほどとは逆に自分が引き摺られそうになり何度もタタラを踏む。
1人滑稽なタップダンスをしながら移動しているような間抜けさに、
周囲からはあからさまな嘲笑が上がり、カッと血の気が上る。
「ね、ねぇ、アルフ様!?」
「………」
「あの!手が痛いので離して…」
「………」
「っ離してって言ってるでしょ!?」
無言で自分を引き摺るようにして歩く王弟に苛立ち、
周囲の耳目すら気にせず荒げた声の音量が上がっていく。
そうこうしている間に出入り口付近へと到達してしまった!
「一体どういうつもりなの!?
アルフ様は淑女にこんな乱暴な!」
カシャン…
「え」
「はいどうぞ。
お望み通りに手を離しましたよ、あー…レディ?」
さもレディと呼称するのを躊躇う表情がかなり腹立たしかったが、
解放された手首には美しい宝石の嵌まった繊細な細工の腕輪が。
途端に機嫌が浮上する。
「あ、あら。アルフ様ったら!
こんな素敵なプレゼントを私に贈りたいがためにここまで?」
「ー…ああ」
「ふふっ!こんな場所でサプライズだなんて…案外悪戯好きですのねぇ?」
「そう、だな」
私の言葉ににっこりと微笑みながら言葉を返してくれる彼。
(やはり私のものになるべくしてなるのだわ、この男は!!)
恥ずかしげに頬を染めて見せ、ありがとうございますと礼を言えば、
彼の笑顔も深まる。
あとはダメ押しにファーストダンスを!
「折角素敵な頂き物をしたのですもの、さぁ、今から共にダンスを」
「ああ、その必要はない」
「ー…は?」
機嫌よく、再び彼の腕に手を絡めようとし…
冷めた声とともにパン!とその手を叩き落とされた。
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******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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