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その38 露見(後)
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(Side:ソフィア)
「ああ、その必要はない」
「ー…は?」
機嫌よく、再び彼の腕に手を絡めようとし…
冷めた声とともにパン!とその手を叩き落とされた。
(……え、一体何が…?)
呆然と、叩き落とされた自身の手を見つめる。
結構な力で叩かれたその手は、全体的にかなり赤くなっていた。
少し遅れてジンジンと痛みだし、自覚とともにくしゃりと顔を顰める。
「ひ、酷いですわアルフ様!
淑女たる私の手を叩き落とすなど紳士の風上にもっ!!?」
「ははっ!よりにもよって貴様のような人間に、
紳士淑女を語られるとはな?」
わなわなと震える肩もそのままにキッと王弟を睨み上げかけ…
かの男の目が、表情が、酷く冷め切っていることに気付き、硬直する。
たっぷりと私と視線を合わした後ーー口元が綺麗な弧を描いた。
「ひっ!!」
それはとてもとても美しくそれでいてーー
この上なく怖気の走る、
憎悪と嘲笑と殺意を過分に内包した眼差しでもって構成された微笑み。
訳がわからないながら、一刻も早く彼の前から去らねばと後退りしかけ、
がしりと両肩を背後から強く掴まれる。
「っ何っ、痛ッッ!!?」
逃亡できぬ焦燥感と肩を襲う痛みに顔だけで振り向けば、
そこには自分の肩を左右から掴んで離さない騎士が2人。
どちらも激しい怒りを宿した瞳で自分を見下ろしていた。
(何、何なのよ一体!?)
恐怖に支配されて震える私の姿を、
さもおかしいとクツクツ嗤いながら「なぁソフィア嬢?」と声が聞こえる。
嫌だ
振り向きたくない
しかしその底冷えする声色がそれを許すことはなく。
「そんなに我が国の人間は……我らは操りやすそうに見えたか?」
「……え」
振り仰いだかの王弟の顔には、もう笑みは浮かんではいなかった。
「我が国へ入国し、冒険者ギルドで様々な男達をその魔法で餌食にし、貴族の青年、あまつさえ兄上や俺までもその魔法で自身の欲の為に操ろうとでも?
ーー舐めるのも大概にしろ、阿婆擦れ」
「なっ!?」
凡そ王弟が口にするとは思えない侮蔑の言葉に、
思わず声が漏れる。
その私の声すら耳障りだと言わんばかりに片眉を上げ、「ああ煩い」と呟く。
「貴様が如き矮小で愚劣で下品な女の声を耳にしていたら早々に耳が腐る。
これ以上声を出すな。
いや寧ろ息もするな」
(何で、何で何で何で何で何で何で何で!!
何でこの男に魅了が効いていないの!?
王弟は兎も角この騎士達まで!?)
侮蔑の言葉そっちのけで自身の魔法が効いていないのことこそに恐怖を感じている私を見透かしたのか、徐に私の手首を指差す。
「あまりに好き勝手していたお前に対して、何の対策もしていないとでも?
それは魔封じの腕輪。
それを着用した者は一切の魔力を発することができず、魔法も当然行使できぬ。
そして何より、それを取り付けた人間にしか外すことも出来ん。
どういう意味か、分かるな?」
「ま、魔封じ、ですって……!?」
「最早お前は魅了魔法はおろか、簡単な生活魔法ひとつすら使えない。
ただの醜い塵だ」
(私を塵!?阿婆擦れ!!?よ、よくもそんな侮辱を!!)
目前の美貌の男に先ほどまでうっとりとしていた事実さえ忘れ去り、
恐怖すらも忘れて男をあらん限りの憎悪を込めて睨み付ける。
しかしながらそれすら痛痒に感じることなく。
冷たい双眸の男が、静まりかえった会場の中、告げた。
「入国以来から犯した罪に留まらず、
このような場で犯した貴様の愚行、度し難い。
故にーーこの場で貴様を断罪する、ソフィア・シモン元子爵令嬢」
ギラリと光る男の瞳の瞳孔が、獲物を前にした獣が如く縦に収縮した。
===============================================
※即ち、上げて、落とす!!なアルフ氏でした♪
「ああ、その必要はない」
「ー…は?」
機嫌よく、再び彼の腕に手を絡めようとし…
冷めた声とともにパン!とその手を叩き落とされた。
(……え、一体何が…?)
呆然と、叩き落とされた自身の手を見つめる。
結構な力で叩かれたその手は、全体的にかなり赤くなっていた。
少し遅れてジンジンと痛みだし、自覚とともにくしゃりと顔を顰める。
「ひ、酷いですわアルフ様!
淑女たる私の手を叩き落とすなど紳士の風上にもっ!!?」
「ははっ!よりにもよって貴様のような人間に、
紳士淑女を語られるとはな?」
わなわなと震える肩もそのままにキッと王弟を睨み上げかけ…
かの男の目が、表情が、酷く冷め切っていることに気付き、硬直する。
たっぷりと私と視線を合わした後ーー口元が綺麗な弧を描いた。
「ひっ!!」
それはとてもとても美しくそれでいてーー
この上なく怖気の走る、
憎悪と嘲笑と殺意を過分に内包した眼差しでもって構成された微笑み。
訳がわからないながら、一刻も早く彼の前から去らねばと後退りしかけ、
がしりと両肩を背後から強く掴まれる。
「っ何っ、痛ッッ!!?」
逃亡できぬ焦燥感と肩を襲う痛みに顔だけで振り向けば、
そこには自分の肩を左右から掴んで離さない騎士が2人。
どちらも激しい怒りを宿した瞳で自分を見下ろしていた。
(何、何なのよ一体!?)
恐怖に支配されて震える私の姿を、
さもおかしいとクツクツ嗤いながら「なぁソフィア嬢?」と声が聞こえる。
嫌だ
振り向きたくない
しかしその底冷えする声色がそれを許すことはなく。
「そんなに我が国の人間は……我らは操りやすそうに見えたか?」
「……え」
振り仰いだかの王弟の顔には、もう笑みは浮かんではいなかった。
「我が国へ入国し、冒険者ギルドで様々な男達をその魔法で餌食にし、貴族の青年、あまつさえ兄上や俺までもその魔法で自身の欲の為に操ろうとでも?
ーー舐めるのも大概にしろ、阿婆擦れ」
「なっ!?」
凡そ王弟が口にするとは思えない侮蔑の言葉に、
思わず声が漏れる。
その私の声すら耳障りだと言わんばかりに片眉を上げ、「ああ煩い」と呟く。
「貴様が如き矮小で愚劣で下品な女の声を耳にしていたら早々に耳が腐る。
これ以上声を出すな。
いや寧ろ息もするな」
(何で、何で何で何で何で何で何で何で!!
何でこの男に魅了が効いていないの!?
王弟は兎も角この騎士達まで!?)
侮蔑の言葉そっちのけで自身の魔法が効いていないのことこそに恐怖を感じている私を見透かしたのか、徐に私の手首を指差す。
「あまりに好き勝手していたお前に対して、何の対策もしていないとでも?
それは魔封じの腕輪。
それを着用した者は一切の魔力を発することができず、魔法も当然行使できぬ。
そして何より、それを取り付けた人間にしか外すことも出来ん。
どういう意味か、分かるな?」
「ま、魔封じ、ですって……!?」
「最早お前は魅了魔法はおろか、簡単な生活魔法ひとつすら使えない。
ただの醜い塵だ」
(私を塵!?阿婆擦れ!!?よ、よくもそんな侮辱を!!)
目前の美貌の男に先ほどまでうっとりとしていた事実さえ忘れ去り、
恐怖すらも忘れて男をあらん限りの憎悪を込めて睨み付ける。
しかしながらそれすら痛痒に感じることなく。
冷たい双眸の男が、静まりかえった会場の中、告げた。
「入国以来から犯した罪に留まらず、
このような場で犯した貴様の愚行、度し難い。
故にーーこの場で貴様を断罪する、ソフィア・シモン元子爵令嬢」
ギラリと光る男の瞳の瞳孔が、獲物を前にした獣が如く縦に収縮した。
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※即ち、上げて、落とす!!なアルフ氏でした♪
応援ありがとうございます!
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