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悪役令嬢のはずが実はヒロインでした
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私、なるべく穏便に舞台から降りることを目指しておりますの。
初めまして、ご機嫌よう。私はクリスティナ・ロアン。公爵令嬢ですわ。よろしければティナとお呼びになって。私、実は所謂悪役令嬢ですの。
順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世で児童養護施設への慰問など善行を重ねた結果、死後好きな世界に転生する権利を得られたのですわ。そしてこの世界で目が覚めましたの。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのですわ。でも、私、家族や使用人達から溢れるほどの愛を受けていますし、正直私には悪役令嬢になんてなる理由はありませんわ。しかし、ゲームの強制力があるかもしれませんし、ヒロインさんの暗躍があれば悪役令嬢に仕立て上げられる可能性もありますわ。
だから、私考えましたの。
ー善行を積んで、味方を多く作り、なるべく穏便に舞台から降りようと!
幸いにして兄がいるので公爵家の跡継ぎは心配いりません。最終的に修道院送りや国外追放になっても家の方はなんとかなりますわ。ということで早速、五歳の頃から人助けを始めましたわ。魔力を領地の畑や山、川、海で使いまくり、たくさんの食料を量産して簡単に確保し、領民達の生活を豊かにしましたわ。幸い悪役令嬢の中でもラスボスクラスの私は魔力が有り余るほどありますの。まだまだこんなものでは終わりませんわ。さらにスラム街や緩和病棟、戦地などに護衛付きで行き、全ての人々の怪我や病気を魔力を使って治しましたわ。こんなことができるのは光魔法の使い手のヒロインか、水魔法の上級者だけ。私は光魔法と闇魔法以外全部の属性の魔法が使えますの。そして、それ以外にも孤児院への寄付や慰問、街の清掃活動、教会への寄付。様々な善行を積みながら、皆から愛されてすくすくと健やかに成長しましたわ。
ー…
人助けを始めてから早数年。十五歳になってしまいましたわ。ここからが勝負ですわ。
「ティナ?何か考え事?」
「アレン。いいえ、大丈夫よ」
「…ティナ、君はもっと周りに頼ってもいいんだよ?」
そう言って優しく私を抱きしめるのは婚約者のアレン・ルテル。公爵令息ですわ。
「わかりましたわ」
「ティナはもう少し肩の力を抜いてもいいんだ。そんなに生き急ぐみたいに慈善活動に力を入れなくたって、他の貴族もノブレスオブリージュくらい理解してる」
そう言って緩く頭を撫でてくれるアレン。これまで私が暇さえあれば慈善活動をするのにも目をつぶってくれた優しい婚約者。でも、正直自分でもやり過ぎだと思う慈善活動は、やっぱり彼の目にも生き急いでいるように見えるようだ。
「ごめんなさい。でも、私達の将来のためですもの」
ごめんなさい嘘です、自分の将来のためです。
「…仕方ないな。君の気持ちは尊重するけれど、無理はしないでね」
「ええ、もちろん」
困ったように笑うアレン。そういう優しいところ好きよ。あともう少しの付き合いだけれど、愛しているわ。
…そして学園生活が始まり、物語は幕を開けました。ですが、ヒロインさんがいつまで経っても現れません。それどころか、本来ヒロインさんに起こるはずの貴公子達との出会いイベントや恋愛イベントが私に降りかかっています。これはもしかしなくとも、真ヒロインの現れない世界線の話が描かれた漫画版スピンオフ作品の世界なのでは?
ということで
悪役令嬢のはずが実はヒロインでした。
初めまして、ご機嫌よう。私はクリスティナ・ロアン。公爵令嬢ですわ。よろしければティナとお呼びになって。私、実は所謂悪役令嬢ですの。
順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世で児童養護施設への慰問など善行を重ねた結果、死後好きな世界に転生する権利を得られたのですわ。そしてこの世界で目が覚めましたの。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのですわ。でも、私、家族や使用人達から溢れるほどの愛を受けていますし、正直私には悪役令嬢になんてなる理由はありませんわ。しかし、ゲームの強制力があるかもしれませんし、ヒロインさんの暗躍があれば悪役令嬢に仕立て上げられる可能性もありますわ。
だから、私考えましたの。
ー善行を積んで、味方を多く作り、なるべく穏便に舞台から降りようと!
幸いにして兄がいるので公爵家の跡継ぎは心配いりません。最終的に修道院送りや国外追放になっても家の方はなんとかなりますわ。ということで早速、五歳の頃から人助けを始めましたわ。魔力を領地の畑や山、川、海で使いまくり、たくさんの食料を量産して簡単に確保し、領民達の生活を豊かにしましたわ。幸い悪役令嬢の中でもラスボスクラスの私は魔力が有り余るほどありますの。まだまだこんなものでは終わりませんわ。さらにスラム街や緩和病棟、戦地などに護衛付きで行き、全ての人々の怪我や病気を魔力を使って治しましたわ。こんなことができるのは光魔法の使い手のヒロインか、水魔法の上級者だけ。私は光魔法と闇魔法以外全部の属性の魔法が使えますの。そして、それ以外にも孤児院への寄付や慰問、街の清掃活動、教会への寄付。様々な善行を積みながら、皆から愛されてすくすくと健やかに成長しましたわ。
ー…
人助けを始めてから早数年。十五歳になってしまいましたわ。ここからが勝負ですわ。
「ティナ?何か考え事?」
「アレン。いいえ、大丈夫よ」
「…ティナ、君はもっと周りに頼ってもいいんだよ?」
そう言って優しく私を抱きしめるのは婚約者のアレン・ルテル。公爵令息ですわ。
「わかりましたわ」
「ティナはもう少し肩の力を抜いてもいいんだ。そんなに生き急ぐみたいに慈善活動に力を入れなくたって、他の貴族もノブレスオブリージュくらい理解してる」
そう言って緩く頭を撫でてくれるアレン。これまで私が暇さえあれば慈善活動をするのにも目をつぶってくれた優しい婚約者。でも、正直自分でもやり過ぎだと思う慈善活動は、やっぱり彼の目にも生き急いでいるように見えるようだ。
「ごめんなさい。でも、私達の将来のためですもの」
ごめんなさい嘘です、自分の将来のためです。
「…仕方ないな。君の気持ちは尊重するけれど、無理はしないでね」
「ええ、もちろん」
困ったように笑うアレン。そういう優しいところ好きよ。あともう少しの付き合いだけれど、愛しているわ。
…そして学園生活が始まり、物語は幕を開けました。ですが、ヒロインさんがいつまで経っても現れません。それどころか、本来ヒロインさんに起こるはずの貴公子達との出会いイベントや恋愛イベントが私に降りかかっています。これはもしかしなくとも、真ヒロインの現れない世界線の話が描かれた漫画版スピンオフ作品の世界なのでは?
ということで
悪役令嬢のはずが実はヒロインでした。
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