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妹は天使の皮を被っている
私は天使のような妹の本性を知っている。
はじめまして、ご機嫌よう。私、公爵家序列第1位のオルティーズ家の長女、レベッカと申しますわ。私には天使のような心も体も美しい妹がいますの。名前はルビー。その名の通り、赤い瞳が美しい子ですわ。波打つ金の髪も艶めいていて、とても綺麗ですの。みんながみんな、妹を褒め称えますわ。
一方で姉の私は、ストレートの銀髪に青い瞳。きりっとした顔立ちと、王太子妃教育により培われたポーカーフェイスで氷の令嬢と呼ばれておりますの。家族以外からは色々と誤解されて、心が折れそうですわ。
さて、そんな私は何故か婚約者である王太子殿下からこれ以上ない程の屈辱を味わわされていますの。しかも学園の卒業式という晴れの舞台で。まったく、関係ない卒業生の皆様まで巻き込んでなにを考えていらっしゃるのかしら。
「レベッカ!貴様には失望した!婚約は破棄させてもらう!」
そう私に告げた王太子殿下の隣にはルビー。ああ、そういうことですのね。
「恐れながら王太子殿下。どういうことでしょうか?」
「ルビーがお前に虐待されていたことは既に知っている!」
ざわざわとする会場。…ああ、もう。王太子殿下、覆水盆に返らずですわよ。
「王太子殿下、それはルビーが?」
「いいや!ルビーは最後までお姉様ではないと言い張っていた!そんな幼気な彼女をよくも虐待出来たな!」
「虐待の証拠は?」
「彼女のこの腕の傷だ!確認したところ腕だけではない!体中にある!」
再びざわざわとする会場。
「…王太子殿下が確認されたのですか?」
「なっ…!俺はそんなことしない!侍女達に確認させた!すごい傷だと口を揃えて言っていた!」
ああ、よかった。可愛いルビーの肌を殿方に見られたなんて、お父様の耳に入ったら血祭り確定だもの。侍女さん達は余りの傷にトラウマになったでしょうけれどもね。
「ああ、ルビー。そんなに震えて可哀想に。大丈夫、俺が守るから。この女と婚約を破棄して、断罪してみせる。そして、君を俺の新しい婚約者にしてみせるよ。なにがあっても守ると誓うから」
そう言って震えるルビーを抱きしめようとする王太子殿下。あちゃー。
「…ふざけんな!」
「うぐっ…」
ドスの効いた声が響いて、王太子殿下が吹き飛ばされる。ルビーが王太子殿下に腹パンしたのです。会場が一気にしーんと静まり返ります。
「お姉様じゃないって言ってんだろうが!」
「る、ルビー…?」
大分ルビーの遠くに飛ばされた王太子殿下は、小さな声でルビーに呼びかけますがルビーは素早く私の元に駆け寄ります。
「ごめんなさい、お姉様!お外で喧嘩してしまいました!」
「…こうなるともうどうしようもないわ。諦めて。帰ったらお父様に謝りましょう」
「はい。本当にごめんなさい、お姉様…」
そう。このルビー、見た目は非常に可憐な少女ですが、その実ものすごい強さを誇るバーサーカーなのです。
我が家では喧嘩っ早い上にものすごい強さを誇る彼女ははしたないとされて、お友達と喧嘩ばかりして戯れ合う彼女は時に監禁までされましたが、むしろ鬱憤が溜まって余計にバーサーカーじみた力を発揮するのである提案がなされました。
それはとある施設の地下リングで覆面を被って思う存分暴れていいというもの。その代わりに貴族社会ではそれをおくびにも出さないという条件付きですが。彼女は不屈の闘志と呼ばれて地下リングで大人気です。彼女の傷はその時のものです。…ただ、これからは地下リングにも行けなくなりそうですが。
「もう!アホ王太子のせいです!」
「こら、不敬罪で捕まるわよ」
「はぁい…」
「…え、な、なに…?」
王太子殿下は困惑しています。仕方なく私が事情を説明します。
「…な、そんな、ルビーが?」
「ええ、そうです。それと、先程あった私と婚約破棄する旨をお父様に報告しておきますね」
「ま、待て、待ってくれ」
「それでは騒ぎを起こした私達はこれで失礼しますわ。皆様、申し訳ありませんでした。ご機嫌よう」
「お騒がせしてごめんなさい。ご機嫌よう」
二人揃って綺麗にカーテシーをして、さっさと帰ります。あとに残されたのはアホな王太子殿下と呆然とする皆様。ああ、せっかくの卒業式でしたのに。残念。
ー…
その後のお話。私から卒業式での件をお父様にお話して、無事王太子殿下との婚約を白紙に戻していただけました。国王陛下からは愚息が申し訳ないとのお言葉も頂きまして、私の名誉も守られました。王太子殿下は公式な場で恥を晒したとして、王太子位を剥奪。離宮でしばらくの間謹慎となりました。しかし王籍は剥奪されていないので、まあなんとかなるかと。妹はお父様からこってり叱られた上に地下リングに出入り禁止令が出されました。久しぶりにわんわんと泣く妹を見て可哀想にと思いましたが、こればかりはどうしようもありません。むしろ今までの処置が奇跡でした。妹には王太子殿下との婚約白紙の件で感謝しているので、パンケーキをご馳走して、一晩一緒に寝て宥めてあげました。
さて、空いた王太子位ですが第二王子殿下がその座に就きました。そして第二王子殿下は婚約者がまだ決まっておらず、私が婚約者に内定しました。ですが第二王子殿下はとても優しく誠実な方ですし、優秀でいらっしゃるから私としては一安心です。妹の方は、正体がバレてしまったので婚約の話は来なくなるんじゃないかと戦々恐々としていましたが、何故か逆に人気に火が付き今まで以上に釣書が大量に送られてきます。妹はびっくりしていましたが、幸せになって欲しいものです。
そんな私達は今日も仲良く二人きりでお茶会をしています。これからも二人で支え合って生きていければ幸せです。
「お姉様、大好きです!これからも私がお姉様を守ってみせますね」
「私も大好きよ、ルビー。これからもよろしくね」
はじめまして、ご機嫌よう。私、公爵家序列第1位のオルティーズ家の長女、レベッカと申しますわ。私には天使のような心も体も美しい妹がいますの。名前はルビー。その名の通り、赤い瞳が美しい子ですわ。波打つ金の髪も艶めいていて、とても綺麗ですの。みんながみんな、妹を褒め称えますわ。
一方で姉の私は、ストレートの銀髪に青い瞳。きりっとした顔立ちと、王太子妃教育により培われたポーカーフェイスで氷の令嬢と呼ばれておりますの。家族以外からは色々と誤解されて、心が折れそうですわ。
さて、そんな私は何故か婚約者である王太子殿下からこれ以上ない程の屈辱を味わわされていますの。しかも学園の卒業式という晴れの舞台で。まったく、関係ない卒業生の皆様まで巻き込んでなにを考えていらっしゃるのかしら。
「レベッカ!貴様には失望した!婚約は破棄させてもらう!」
そう私に告げた王太子殿下の隣にはルビー。ああ、そういうことですのね。
「恐れながら王太子殿下。どういうことでしょうか?」
「ルビーがお前に虐待されていたことは既に知っている!」
ざわざわとする会場。…ああ、もう。王太子殿下、覆水盆に返らずですわよ。
「王太子殿下、それはルビーが?」
「いいや!ルビーは最後までお姉様ではないと言い張っていた!そんな幼気な彼女をよくも虐待出来たな!」
「虐待の証拠は?」
「彼女のこの腕の傷だ!確認したところ腕だけではない!体中にある!」
再びざわざわとする会場。
「…王太子殿下が確認されたのですか?」
「なっ…!俺はそんなことしない!侍女達に確認させた!すごい傷だと口を揃えて言っていた!」
ああ、よかった。可愛いルビーの肌を殿方に見られたなんて、お父様の耳に入ったら血祭り確定だもの。侍女さん達は余りの傷にトラウマになったでしょうけれどもね。
「ああ、ルビー。そんなに震えて可哀想に。大丈夫、俺が守るから。この女と婚約を破棄して、断罪してみせる。そして、君を俺の新しい婚約者にしてみせるよ。なにがあっても守ると誓うから」
そう言って震えるルビーを抱きしめようとする王太子殿下。あちゃー。
「…ふざけんな!」
「うぐっ…」
ドスの効いた声が響いて、王太子殿下が吹き飛ばされる。ルビーが王太子殿下に腹パンしたのです。会場が一気にしーんと静まり返ります。
「お姉様じゃないって言ってんだろうが!」
「る、ルビー…?」
大分ルビーの遠くに飛ばされた王太子殿下は、小さな声でルビーに呼びかけますがルビーは素早く私の元に駆け寄ります。
「ごめんなさい、お姉様!お外で喧嘩してしまいました!」
「…こうなるともうどうしようもないわ。諦めて。帰ったらお父様に謝りましょう」
「はい。本当にごめんなさい、お姉様…」
そう。このルビー、見た目は非常に可憐な少女ですが、その実ものすごい強さを誇るバーサーカーなのです。
我が家では喧嘩っ早い上にものすごい強さを誇る彼女ははしたないとされて、お友達と喧嘩ばかりして戯れ合う彼女は時に監禁までされましたが、むしろ鬱憤が溜まって余計にバーサーカーじみた力を発揮するのである提案がなされました。
それはとある施設の地下リングで覆面を被って思う存分暴れていいというもの。その代わりに貴族社会ではそれをおくびにも出さないという条件付きですが。彼女は不屈の闘志と呼ばれて地下リングで大人気です。彼女の傷はその時のものです。…ただ、これからは地下リングにも行けなくなりそうですが。
「もう!アホ王太子のせいです!」
「こら、不敬罪で捕まるわよ」
「はぁい…」
「…え、な、なに…?」
王太子殿下は困惑しています。仕方なく私が事情を説明します。
「…な、そんな、ルビーが?」
「ええ、そうです。それと、先程あった私と婚約破棄する旨をお父様に報告しておきますね」
「ま、待て、待ってくれ」
「それでは騒ぎを起こした私達はこれで失礼しますわ。皆様、申し訳ありませんでした。ご機嫌よう」
「お騒がせしてごめんなさい。ご機嫌よう」
二人揃って綺麗にカーテシーをして、さっさと帰ります。あとに残されたのはアホな王太子殿下と呆然とする皆様。ああ、せっかくの卒業式でしたのに。残念。
ー…
その後のお話。私から卒業式での件をお父様にお話して、無事王太子殿下との婚約を白紙に戻していただけました。国王陛下からは愚息が申し訳ないとのお言葉も頂きまして、私の名誉も守られました。王太子殿下は公式な場で恥を晒したとして、王太子位を剥奪。離宮でしばらくの間謹慎となりました。しかし王籍は剥奪されていないので、まあなんとかなるかと。妹はお父様からこってり叱られた上に地下リングに出入り禁止令が出されました。久しぶりにわんわんと泣く妹を見て可哀想にと思いましたが、こればかりはどうしようもありません。むしろ今までの処置が奇跡でした。妹には王太子殿下との婚約白紙の件で感謝しているので、パンケーキをご馳走して、一晩一緒に寝て宥めてあげました。
さて、空いた王太子位ですが第二王子殿下がその座に就きました。そして第二王子殿下は婚約者がまだ決まっておらず、私が婚約者に内定しました。ですが第二王子殿下はとても優しく誠実な方ですし、優秀でいらっしゃるから私としては一安心です。妹の方は、正体がバレてしまったので婚約の話は来なくなるんじゃないかと戦々恐々としていましたが、何故か逆に人気に火が付き今まで以上に釣書が大量に送られてきます。妹はびっくりしていましたが、幸せになって欲しいものです。
そんな私達は今日も仲良く二人きりでお茶会をしています。これからも二人で支え合って生きていければ幸せです。
「お姉様、大好きです!これからも私がお姉様を守ってみせますね」
「私も大好きよ、ルビー。これからもよろしくね」
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