公爵閣下のご息女は、華麗に変身する

下菊みこと

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ホワイトドラゴンの本音

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ニノンはホワイトドラゴンに運ばれる。ホワイトドラゴンはニノンを決して雑には扱わず、大切に大切に手の中に収めてくれていた。落ちないように、握りつぶさないように。その手つきに、最初はホワイトドラゴンに対してただ畏怖を感じていたニノンも気がついた。

これだけの巨体だ。ホワイトドラゴンが力加減を少し間違えただけで自分がどうなるかなんて知れているのに、そんな気配は一切ない。空中フライト中、ホワイトドラゴンに聞こえるのかはわからないがニノンは思わずお礼を言った。

「ホワイトドラゴン様、優しいんですね。丁寧に扱ってくださってありがとうございます」

「…ぐるる」

ホワイトドラゴンは、鳴き声一つで他の生命体を怯えさせてしまうことを理解している。しかし、ニノンの心からの言葉になんの反応も返さないのもどうかと思い喉を鳴らした。幸いにもそれはニノンに伝わった。

「ふふ、気遣ってくださってありがとうございます」

ホワイトドラゴンの本気の鳴き声は戦争一つを止めるほどだという記録を知っているニノンは、ホワイトドラゴンの気遣いをとても喜んだ。優しい方だと。ホワイトドラゴンはそんなニノンに少し照れる。

「ぐるる…」

「ホワイトドラゴン様?どうしました?」

だからこそ。こんな優しく気が効く幼い子供が、あの気まぐれで性格のひん曲がっているクソ野朗のおもちゃにされるのが不憫で仕方がない。ホワイトドラゴンは心からニノンに同情した。人間はなぜか、あのクソ野朗のことを寛容で人間を愛している優しい神だと誤解している。ニノンもきっとそうだろう。

「ぐるるるる」

この唸り声では伝わるものも伝わらない。自分にはあの神と違って人に意思は伝えられない。それがとても悲しい。しかも、神の眷属たる自分にはあのクソ野朗に刃向かう権利はない。この少女を守ってはやれない。せめて、ごめんと伝える。伝わることは、きっとないが。

「ぐるるるる…」

「…ホワイトドラゴン様、ごめんなさい。私はホワイトドラゴン様の伝えたいこと、わからないです。でも、ホワイトドラゴン様がすごく優しいのは伝わります!大丈夫です、私は雑草のように強い子ですから!神様とお会いするのはとても恐縮で…正直緊張で胸が張り裂けそうです。でも、きっとなんとかしてみせます!」

可哀想な子。健気な子。あのクソ野朗はそう言っていたが。案外、タフな子かもしれないとホワイトドラゴンは少しだけホッとした。もしかしたら、あのクソ野朗にただ壊されるばかりではないかもしれないと。それはポジティブ思考というより、もはや祈りに近かったが。
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