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第一章 特別推薦入試編
第十八話
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反転攻撃に出てすぐ、俺とキースは魔獣の大群に呑み込まれた。
「おいキース!あんまり俺から離れるなよ!」
「貴様に!言われる!までも!ないッ!」
そう言って、キースは俺の背後でカマキリの魔獣の鎌を何処からか取り出した剣で受け流し、そのまま流れるような動作で斬り捨てる。
しかし、攻撃を受け流して斬るまでの一連の動きはとても洗練されていて、まるで剣の達人を見ている様だった。
それにしても、キースの異能は何だ?
剣を作り出す能力……だけではないだろう。
見たところ身体能力も強化されている。
「キース、お前実は結構凄い?」
「ふんっ!当たりっ!前だっ!俺はプライド家だぞ!」
「ふぅん」
プライド『家』、成程な。
血統遺伝系の異能という事か。
となると職業系の能力か?
「……さてと」
考察はここらで辞めにして、俺は小声で呟き敵を見据える。
「っ!」
キースが息を飲む気配を感じる。
どうしたのだろう。
キースの背中を守りつつ『走馬灯』で人間の認識速度を超えた攻撃を避け、『火事場の馬鹿力』で身体能力の限界を超えた一撃を魔獣達に叩き込んでゆく。
「貴様……一体なんの……いや……まさか……」
なんかキースがちらちらと俺の事を見てくるが、やがて戦闘に集中し始めたので気にせず、勝手に盾にさせて貰う。
俺とキースが数匹くらいずつ撃破したところで、俺が対峙した赤ちゃんカマキリの魔獣の姿が突如として消えた。
瞬間、背後から『虫の知らせ』の反応があり、しゃがんで背後からの攻撃を回避すると、頭上で何かが空を裂く音がした。
すかさずバック転で反転しつつ、地面に着地しながら姿は消えても気配は消えていなかった赤ちゃんカマキリの魔獣に向かって足を大きく回して蹴りを叩き込む。
「おい、キース!敵さん通してんぞー!気を付けろよー!」
「何だと!?」
「カマキリだ。このカマキリが透明化してキースの眼をかいくぐったんじゃないか?」
「こっちの猿も!おかしいぞ!こいつら肥大化して!パワーが跳ね上がる!この化け猿共がぁ!」
キースが怒号を上げて元々の巨体を更に肥大化させて、血管が浮き上がらせて体表を赤黒く変色させた筋肉ムキムキ猿を両断する。
成程、猿は身体強化に近い異能、カマキリは透明化か、確かにこれは魔獣だ。
が、猿の身体強化は、パワーと身体強度を上げるためにスピードを犠牲にしている為、攻撃に当たらないように気を付けてさえいればむしろ変化前よりも組みしやすいし、カマキリの透明化は、姿は消せてもそれ以外の部分は全く消えていないため、気配を辿れる人間なら攻撃は当てられる。
相手は獣で戦い方は単純。
種さえわかれば後は作業。
殲滅にそう時間はかからなかった。
「さて、どうするキース。お前が面倒くさいかどうかとか、お前の呼び方についてとか、話し合いでもするか?」
殲滅が終わり、周囲に意識を失った魔獣達が転がっている中、俺は何かを考えこんでいるキースに向けて茶化すように笑った。
*
「一体何者なのだこの男は……」
俺は数メートル先で倒れた魔獣の山の中心に立っているエイタとか言う日本人をみて思わず口から言葉が漏れた。
この男を一目見た時、俺はなんて普通の奴なんだと思った。
同時に、なんでこんな普通の奴が暫定とはいえ、俺より上なんだとも思った。
だが、戦闘に入った途端、俺はこの男の異常性に気がついた。
まず驚いたのはこの男の異能だ。
身体強化に類する異能に、反応速度に類する異能、大穴で脳を強化する異能。
さらに背後からの不意の一撃を難なく避けたところから見て探知に類する異能も持っているだろう。
職業系異能を代々継ぐ家系はすべて把握しているが今回の試験参加者に職業系異能を継ぐ家系の人間は俺の他には一人だけ。
つまり、この男はほぼ間違いなく、少なくとも三つの異能を持つ希少な複数異能持ちだ。
しかし、俺はその程度では異常とは言わない。
この男の異常性は他にある。
この男は普通のまま戦うのだ。
戦闘に入ると、人は個人差はあれど、纏う空気が変わる物だが、この男にはそう言った変化が無い。
動作の全てが最低限で余分な部分が全く無く、自然体だ。
俺は実家の関係上、見た目は普通でも恐ろしく強い人間や、殺す事を躊躇わず、息をするように殺しを実行する人間とも戦った事がある。
でも、この男はそういう奴等ともまた違う。
この男のは何と言うか、戦闘と言う行為自体が日常生活の一環、例えるなら戦闘をテレビのリモコンを取って電源を入れる、みたいな行為と同様の行為と考えているのだ。
だから戦っている最中に息も切れないし、普通に話しかけてくる。
「さて、どうするキース。お前が面倒くさいかどうかとか、お前の呼び方についてとか、話し合いでもするか?」
茶化すように笑いかけてくるこの不思議で得体のしれない男は、一体どのような人生を送ってきたのだろう。
姫の悪戯で無理矢理受けさせられた試験だが、こんな奴がいるなら面白いかもしれない。
「……いや、そんな話し合いはいらん。そんなものはただの時間の無駄だ」
「じゃあこれからは様を付けなくていいわけだ」
「ああ、そうだ。と言うか貴様、様付けして俺を読んだことなど一度も無いだろうが」
「あれ?そうだっけか。まあそう言うのはもういいだろ。改めてよろしくな。キース」
そう言って手を差し向けてくるこの男、いや、フセエイタ。
「ああ、よろしく頼む」
俺はエイタの手を握った。
「おいキース!あんまり俺から離れるなよ!」
「貴様に!言われる!までも!ないッ!」
そう言って、キースは俺の背後でカマキリの魔獣の鎌を何処からか取り出した剣で受け流し、そのまま流れるような動作で斬り捨てる。
しかし、攻撃を受け流して斬るまでの一連の動きはとても洗練されていて、まるで剣の達人を見ている様だった。
それにしても、キースの異能は何だ?
剣を作り出す能力……だけではないだろう。
見たところ身体能力も強化されている。
「キース、お前実は結構凄い?」
「ふんっ!当たりっ!前だっ!俺はプライド家だぞ!」
「ふぅん」
プライド『家』、成程な。
血統遺伝系の異能という事か。
となると職業系の能力か?
「……さてと」
考察はここらで辞めにして、俺は小声で呟き敵を見据える。
「っ!」
キースが息を飲む気配を感じる。
どうしたのだろう。
キースの背中を守りつつ『走馬灯』で人間の認識速度を超えた攻撃を避け、『火事場の馬鹿力』で身体能力の限界を超えた一撃を魔獣達に叩き込んでゆく。
「貴様……一体なんの……いや……まさか……」
なんかキースがちらちらと俺の事を見てくるが、やがて戦闘に集中し始めたので気にせず、勝手に盾にさせて貰う。
俺とキースが数匹くらいずつ撃破したところで、俺が対峙した赤ちゃんカマキリの魔獣の姿が突如として消えた。
瞬間、背後から『虫の知らせ』の反応があり、しゃがんで背後からの攻撃を回避すると、頭上で何かが空を裂く音がした。
すかさずバック転で反転しつつ、地面に着地しながら姿は消えても気配は消えていなかった赤ちゃんカマキリの魔獣に向かって足を大きく回して蹴りを叩き込む。
「おい、キース!敵さん通してんぞー!気を付けろよー!」
「何だと!?」
「カマキリだ。このカマキリが透明化してキースの眼をかいくぐったんじゃないか?」
「こっちの猿も!おかしいぞ!こいつら肥大化して!パワーが跳ね上がる!この化け猿共がぁ!」
キースが怒号を上げて元々の巨体を更に肥大化させて、血管が浮き上がらせて体表を赤黒く変色させた筋肉ムキムキ猿を両断する。
成程、猿は身体強化に近い異能、カマキリは透明化か、確かにこれは魔獣だ。
が、猿の身体強化は、パワーと身体強度を上げるためにスピードを犠牲にしている為、攻撃に当たらないように気を付けてさえいればむしろ変化前よりも組みしやすいし、カマキリの透明化は、姿は消せてもそれ以外の部分は全く消えていないため、気配を辿れる人間なら攻撃は当てられる。
相手は獣で戦い方は単純。
種さえわかれば後は作業。
殲滅にそう時間はかからなかった。
「さて、どうするキース。お前が面倒くさいかどうかとか、お前の呼び方についてとか、話し合いでもするか?」
殲滅が終わり、周囲に意識を失った魔獣達が転がっている中、俺は何かを考えこんでいるキースに向けて茶化すように笑った。
*
「一体何者なのだこの男は……」
俺は数メートル先で倒れた魔獣の山の中心に立っているエイタとか言う日本人をみて思わず口から言葉が漏れた。
この男を一目見た時、俺はなんて普通の奴なんだと思った。
同時に、なんでこんな普通の奴が暫定とはいえ、俺より上なんだとも思った。
だが、戦闘に入った途端、俺はこの男の異常性に気がついた。
まず驚いたのはこの男の異能だ。
身体強化に類する異能に、反応速度に類する異能、大穴で脳を強化する異能。
さらに背後からの不意の一撃を難なく避けたところから見て探知に類する異能も持っているだろう。
職業系異能を代々継ぐ家系はすべて把握しているが今回の試験参加者に職業系異能を継ぐ家系の人間は俺の他には一人だけ。
つまり、この男はほぼ間違いなく、少なくとも三つの異能を持つ希少な複数異能持ちだ。
しかし、俺はその程度では異常とは言わない。
この男の異常性は他にある。
この男は普通のまま戦うのだ。
戦闘に入ると、人は個人差はあれど、纏う空気が変わる物だが、この男にはそう言った変化が無い。
動作の全てが最低限で余分な部分が全く無く、自然体だ。
俺は実家の関係上、見た目は普通でも恐ろしく強い人間や、殺す事を躊躇わず、息をするように殺しを実行する人間とも戦った事がある。
でも、この男はそういう奴等ともまた違う。
この男のは何と言うか、戦闘と言う行為自体が日常生活の一環、例えるなら戦闘をテレビのリモコンを取って電源を入れる、みたいな行為と同様の行為と考えているのだ。
だから戦っている最中に息も切れないし、普通に話しかけてくる。
「さて、どうするキース。お前が面倒くさいかどうかとか、お前の呼び方についてとか、話し合いでもするか?」
茶化すように笑いかけてくるこの不思議で得体のしれない男は、一体どのような人生を送ってきたのだろう。
姫の悪戯で無理矢理受けさせられた試験だが、こんな奴がいるなら面白いかもしれない。
「……いや、そんな話し合いはいらん。そんなものはただの時間の無駄だ」
「じゃあこれからは様を付けなくていいわけだ」
「ああ、そうだ。と言うか貴様、様付けして俺を読んだことなど一度も無いだろうが」
「あれ?そうだっけか。まあそう言うのはもういいだろ。改めてよろしくな。キース」
そう言って手を差し向けてくるこの男、いや、フセエイタ。
「ああ、よろしく頼む」
俺はエイタの手を握った。
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