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「そうですか。私もそのクッキーを存じております。城でも流行っているらしく、宮廷魔導師の方から、口直しの飴を頂きました。良かったらオルフェオ様にどうぞ」
メイドにそう伝えると、ライナーが白い飴玉をアニスに渡し、宮廷魔導師様にいただいたことを伝えた。
アニスは小さく唸り声を上げているオルフェオ様の隣に跪いた。
「オルフェオ様。宮廷魔導師様が作られたお薬だそうです」
「宮廷魔導師が、なぜ薬を……まさか、昨日の宮廷魔導師からか?」
オルフェオ様は辛そうに体を起こすと私を睨み付けた。唇が少し腫れ、口の周りも赤くなっているお顔で凄まれて、気を緩めたら笑ってしまいそうになるのを我慢し、私はその場を去ろうと礼をした。
「失礼致します」
「お、おいっ!? 質問に答えろっ。それからっ、そ、その花束はなんだっ!?」
部屋を出ようとした私を、オルフェオ様は怒鳴りつけ、花束へと鋭い視線を向けていた。
今まで怒鳴ったことなどなかったのに、昨日から怒ってばかりのオルフェオ様。
私を見ると苛立つのかもしれない。
視界に入れるもの嫌だと言っていたのは、本当のよう。
アニスも目を丸くしてオルフェオ様を見ている。
「……私など、視界に入れるもの嫌だとお伺いしました。ライナーが存じておりますのでお聞きください。ご気分を害してしまい申し訳ございませんでした。失礼致します」
「お、お前はっ。俺と政略結婚の為に婚約していたのかっ!?」
「はい?」
それしかないですけど。急にどうしたの?
驚いて言葉を返せない私に代わってアニスが間に入ってくれた。
「オルフェオ様ったら。お姉様は、私とオルフェオ様の方がピッタリなので、身を引いてくださったのですわ。政略結婚だからだなんて、そんなことありませんわ」
「いや。エミリアは宮廷魔導師の見習いの前ではヘラヘラと笑っていた。俺の前では一度も笑ったことなどなかったのになっ」
「そんなことありませんわ。お姉様は、オルフェオ様をお慕いしておりましたわ」
「ほら、アニスも分かっているじゃないか。お慕いしていた、と。今はもうしていないということだろう?」
「それは……。お姉様は、色々な物事に精通する完璧な紳士で在らせられるオルフェオ様と、自分は釣り合わないと思って、泣く泣くオルフェオ様から心を切り離しただけですわっ」
アニスは言葉を濁らせるも、何とかそれっぽい話を絞り出した。よくそんな上手く話を作れるな、と感心していると、オルフェオ様は少しずつ気分を良くしていた。
「ほぉ~。それであんなひ弱な宮廷魔導師へ逃げたのか。そうか。ならばアイツが宮廷魔導師など続けられないようにしてやろう」
「そ、そんなっ」
私が声を上げると、オルフェオ様は意地悪く笑みを溢した。
「やっと喋ったか。そんなちっぽけな花束を貰ったぐらいでアイツに入れ込んでいるのか? 諦めろ。俺に棄てられたお前は、一生独りで過ごすしか道はないのだ。──さぁ、アニス。その薬を食べさせてくれるか?」
「はい。オルフェオ様」
お、痛みが引いてきだぞ。なんて笑うオルフェオ様が憎らしく見えた。
ひ弱ななどと馬鹿にし、辞めさせるとまで罵った宮廷魔導師の薬なんて、口にしなければいいのに。何て狡い男だろうかと。
気がついた時には、私は秘めていた胸の内を口にしていた。
「独りで過ごす方が嬉しゅうございます。オルフェオ様と過ごすよりも、何倍も有意義でしょう」
メイドにそう伝えると、ライナーが白い飴玉をアニスに渡し、宮廷魔導師様にいただいたことを伝えた。
アニスは小さく唸り声を上げているオルフェオ様の隣に跪いた。
「オルフェオ様。宮廷魔導師様が作られたお薬だそうです」
「宮廷魔導師が、なぜ薬を……まさか、昨日の宮廷魔導師からか?」
オルフェオ様は辛そうに体を起こすと私を睨み付けた。唇が少し腫れ、口の周りも赤くなっているお顔で凄まれて、気を緩めたら笑ってしまいそうになるのを我慢し、私はその場を去ろうと礼をした。
「失礼致します」
「お、おいっ!? 質問に答えろっ。それからっ、そ、その花束はなんだっ!?」
部屋を出ようとした私を、オルフェオ様は怒鳴りつけ、花束へと鋭い視線を向けていた。
今まで怒鳴ったことなどなかったのに、昨日から怒ってばかりのオルフェオ様。
私を見ると苛立つのかもしれない。
視界に入れるもの嫌だと言っていたのは、本当のよう。
アニスも目を丸くしてオルフェオ様を見ている。
「……私など、視界に入れるもの嫌だとお伺いしました。ライナーが存じておりますのでお聞きください。ご気分を害してしまい申し訳ございませんでした。失礼致します」
「お、お前はっ。俺と政略結婚の為に婚約していたのかっ!?」
「はい?」
それしかないですけど。急にどうしたの?
驚いて言葉を返せない私に代わってアニスが間に入ってくれた。
「オルフェオ様ったら。お姉様は、私とオルフェオ様の方がピッタリなので、身を引いてくださったのですわ。政略結婚だからだなんて、そんなことありませんわ」
「いや。エミリアは宮廷魔導師の見習いの前ではヘラヘラと笑っていた。俺の前では一度も笑ったことなどなかったのになっ」
「そんなことありませんわ。お姉様は、オルフェオ様をお慕いしておりましたわ」
「ほら、アニスも分かっているじゃないか。お慕いしていた、と。今はもうしていないということだろう?」
「それは……。お姉様は、色々な物事に精通する完璧な紳士で在らせられるオルフェオ様と、自分は釣り合わないと思って、泣く泣くオルフェオ様から心を切り離しただけですわっ」
アニスは言葉を濁らせるも、何とかそれっぽい話を絞り出した。よくそんな上手く話を作れるな、と感心していると、オルフェオ様は少しずつ気分を良くしていた。
「ほぉ~。それであんなひ弱な宮廷魔導師へ逃げたのか。そうか。ならばアイツが宮廷魔導師など続けられないようにしてやろう」
「そ、そんなっ」
私が声を上げると、オルフェオ様は意地悪く笑みを溢した。
「やっと喋ったか。そんなちっぽけな花束を貰ったぐらいでアイツに入れ込んでいるのか? 諦めろ。俺に棄てられたお前は、一生独りで過ごすしか道はないのだ。──さぁ、アニス。その薬を食べさせてくれるか?」
「はい。オルフェオ様」
お、痛みが引いてきだぞ。なんて笑うオルフェオ様が憎らしく見えた。
ひ弱ななどと馬鹿にし、辞めさせるとまで罵った宮廷魔導師の薬なんて、口にしなければいいのに。何て狡い男だろうかと。
気がついた時には、私は秘めていた胸の内を口にしていた。
「独りで過ごす方が嬉しゅうございます。オルフェオ様と過ごすよりも、何倍も有意義でしょう」
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