妹に婚約者を譲ったら、年下の宮廷魔導師見習いがぐいぐい来るようになりました

春乃紅葉@コミカライズ2作品公開中〜

文字の大きさ
28 / 45
番外編

ルシオとリーゼロッテ 1

しおりを挟む
 ※リーゼロッテの婚約者、レクルシオ視点の話です。




 自分には誇れるものが何もない。

 大国の第二王子という中途半端な存在の私には、国民から慕われ名将と崇められる兄と、魔法の才に長け天才と称される弟がいる。

 しかし、私は兄の隣で剣を振るう力もなければ、弟と共に研究に身を投じる知識も魔力もない。私はせいぜい、近隣諸国の姫君と政略結婚するぐらいしか用途はないと思っていた。

 だが、そんな私に存在意義を与えてくれた女性がいた。
 それは私の婚約者のリーゼロッテ姫だ。


 彼女と出会ったのは一年前。

 その日は私の婚約者候補が集められ、城で夜会が開かれる日だった。一応、私の誕生パーティーという名目だが、陛下からは今夜選べと言われている。
 三年前の兄の婚約者選びの日を思い出すと、憂鬱の一言しかでない。

「ルシオ兄様っ。今、お時間よろしいですか?」

 二つ年下の弟は今年で十三歳。常に研究室に引きこもっているせいか、年の割には幼く見える可愛い弟だ。

「リオン。また何か面白い物を作ったのか?」
「このブレスレット、着けていてくれますか? 目印なんです」
「目印?」

 見た目はただのシルバーブレスレット。
 しかしこれも何かの魔法道具なのだろう。
 リオンは新しい物を作ると、私で試すのだ。

「それを目印に転移魔法を使うんです! 前回作った水鏡は――」

 瞳をキラキラ輝かせながら道具の説明が始まった。
 こうなると止まらない。
 何を言っているのか理解は出来ないが、リオンのしたいことは知っている。

 魔法が使える人も使えない人も、幸せになれる魔法道具を作ることだ。魔法の楽しさや良さを一人でも多くの人に知って欲しいのだ。

「リオンは偉いな。好きな時に試してみなさい」
「はい! あの、お顔の色が優れないのですが、何かあったのですか?」
「また忘れているのか? 今日は夜会だ。あまり研究に没頭しすぎるなよ」
「夜会ということは、今日は兄様の誕生日……あぁ……」

 リオンは頭を抱え右往左往し始めた。
 小さい頃から毎年プレゼントをくれているリオン。
 研究に没頭し初めてからも、数日遅れになっても必ず用意してくれている。昨年は中庭のガボゼにリオン特製のランタンを付けてくれた。

「気にするな。今年はこれをプレゼントとして有り難く受け取らせていただくよ。これがあればいつでもリオンに会えるのだろう?」
「はい。ですがもう少し良いものを……」
「気にするな。これを御守りにして、今日という日を切り抜けて見せるよ」
「素敵な出会いになると良いですね。きっと一目見た瞬間に、何か感じるものがあるのではないでしょうか?」
「だといいのだがな」

 研究所に隠りっきりで世間知らずだからか、リオンは女性というものに幻想を抱いているのだと思う。
 実際はそんな生易しいものではない。
 意中の相手を射止める為に邪魔な令嬢のドレスにワインをかける女性や、堂々と言い合いや睨み合いを始める女性もいるというのに。
 
 兄の時も、恐ろしい夜だった。
 そして今宵も私の予想通り、女性達の熾烈な争いを見る羽目となった。


しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。

黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。 その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。 王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。 だから、泣かない。縋らない。 私は自分から婚約破棄を願い出る。 選ばれなかった人生を終わらせるために。 そして、私自身の人生を始めるために。 短いお話です。 ※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。

処理中です...