上 下
14 / 22
第2章

第2話 ヘタレ公爵と氷の執事

しおりを挟む
 結局見かねた執事が長男を引き剥がしてくれた。そのまま執事が長男の首根っこを引っ付かんで引きずりながら長男の執務室まで案内してくれた。その後執事はお茶をいれに行き、長男の執務室には兄妹3人が残った。机を挟んで向こう側に長男。長椅子に座った私の右隣にルー兄様が座った。ちょっと不安でルー兄様の手を握ってしまったけど、ちょっとぴくってした後握り返してくれたから怒ってはいないと思う。誰も口を開かず時間だけがすぎて、執事が戻ってきた。いや、戻ってきたと思ったらいきなり長男の背中を叩いた。
 …………あれ?長男って一応公爵家の当主よね?執事が叩いても怒られないものなの?というかこの執事さっき長男を引きずって歩いてたなぁ。え?エリスには何しても良かったって?それはそれ、これはこれというやつだよ。そもそも領地の屋敷には使用人なんていなかったのだけれども。
「坊っちゃん?」
 執事、笑顔で威圧してるから!!なんか負のオーラみたいなの出てるから!って言うか物理で部屋の温度下がってない?寒い!!寒すぎてルー兄様と抱きしめあってるから!!
「リオート。」
「何です?ヘタレ公爵閣下?」
 ヘタレ公爵……。多分この執事の名前はリオートさんだなっ?
「あの、リオートさん?」
 恐る恐る声をかけてみる。
「エリスお嬢様。どうかなさいました?」
 笑ってくれた……。怒ってないっぽい…?
「先程は助けていただいて、ありがとうございました。」
さっきは助けてくれてありがとうございました!!お礼は大事!!前世からありがとうとごめんなさいはちゃんと言いましょうって習ったしね!!
恐すぎて若干腰がひけてるのと現実逃避してるのは内緒だ。抱き着いてるルー兄様には震えてるの伝わってるだろうけどね。
「いえいえ、私のような執事になんともったいないお言葉。そもそも悪いのはこのヘタレですしね。っと、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私はこの屋敷の執事長、リオート・グラキエスと申します。」
 優しく微笑みかけてくれたぁ!!でもミドルネームないから高位貴族ではないのかな?
「リオートはグラキエス子爵家の長男で、俺たちの幼なじみなんだ。さっき部屋の温度が下がったのはリオートの氷の加護のせいだな。」
なるほど。
「おや、温度が下がっておりましたか?申し訳ございません。お嬢様。こちら膝掛けでございます。よろしければお使いください。」
 え?今どこから出したの?見えなかった。執事すごい……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の婚約者は6人目の攻略対象者でした

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。 すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。 そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。 確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。 って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?  ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。 そんなクラウディアが幸せになる話。 ※本編完結済※番外編更新中

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。

香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー 私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。 治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。 隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。 ※複数サイトにて掲載中です

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...