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第二章 書籍部の先輩
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* * *
途中のハプニングもありつつ、バス停から歩くこと十分ほど。
坂野修復会社に無事(?)辿り着いた僕たちを迎えたのは、ひとりの女性だった。
「いらっしゃい、奈津美ちゃん。待ってたよ」
「真菜さん! 今日はよろしくお願いします」
「うん。こちらこそ、よろしくね」
奈津美先輩が、はしゃいだ様子で勢いよく頭を下げる。
どうやらこの人が真菜先輩らしい。
「で、そっちが噂の〝書籍部のエース〟君かな?」
「エースかどうかはわかりませんが、書籍部副部長の一ノ瀬悠里です。本日はよろしくお願いいたします、先輩」
「ご丁寧にどうも。書籍部OGの清森真菜です。紙資料全般の修復家見習いで、今は主に本の修復やデジタル化を担当しています。今日はよろしくね。あと、私のことは〝先輩〟なんて呼ばなくていいよ。なんか、そう呼ばれるのはこそばゆくって苦手なんだよね。それと、お姉ちゃんと紛らわしいだろうから、下の名前で呼んでくれていいからね」
真菜先輩改め真菜さんが、ショートカットの髪を揺らして朗らかに笑う。
奈津美先輩が言っていた通り、快活な印象のかわいらしい人だ。気取った様子もなくフランクで、とても話しやすい。
それと……すみません。頭の中では、すでに下の名前でお姉さんと区別していました。
と思ったら、真菜さんは猫のように目を光らせて、僕の顔をまじまじと見てきた。
「それにしても……へぇ、ふーん、なるほどね……」
「えっと……僕の顔に何かついていますか?」
美人に近くから見つめられ、思わず気後れする。
すると、真菜さんは愉快そうに笑いながら、「ううん、何でも」と言った。
「ただ、奈津美ちゃんに聞いていた通り、本当にかわいらしい顔だなって思って。その年で女の子に間違われたことがあるっていうのも、頷けるな~ってね」
「がはっ!」
真菜さんの言葉が胸に突き刺さり、思い切りむせてしまった。
なぜこの人が、僕の黒歴史を……って、そんなの理由はひとつしか考えられない。
僕は、抜き足差し足で逃げ出そうとしている犯人へと目を向けた。
「奈津美先輩、ちょっとお話があります」
「ゆ、悠里君? 顔が怖いわよ」
「気にしないでください。全部あなたのせいですから。先日の喫茶店でのこと、真菜さんに話しましたよね?」
「ええと、その~……。話したような……、話してないような……?」
目を逸らして、というか、目を泳がせながらの、しどろもどろの回答が返ってきた。
うん。これは確実に、間違いなく、純度100パーセント黒だ。
それでは、せーの――!
「なんてことしてくれたんですか! あれほど他言するなと釘を刺したのに!」
「ひゃう~! ご、ごめんなさ~い!」
奈津美先輩が頭を抱えて、「許して~。つい口が滑っちゃったの~」と謝ってくる。
まったくこの人は、人の思い出したくない記憶をペラペラと……。おかげで、頑張って頭から消そうとしていた記憶が鮮明に甦ってきてしまった。
途中のハプニングもありつつ、バス停から歩くこと十分ほど。
坂野修復会社に無事(?)辿り着いた僕たちを迎えたのは、ひとりの女性だった。
「いらっしゃい、奈津美ちゃん。待ってたよ」
「真菜さん! 今日はよろしくお願いします」
「うん。こちらこそ、よろしくね」
奈津美先輩が、はしゃいだ様子で勢いよく頭を下げる。
どうやらこの人が真菜先輩らしい。
「で、そっちが噂の〝書籍部のエース〟君かな?」
「エースかどうかはわかりませんが、書籍部副部長の一ノ瀬悠里です。本日はよろしくお願いいたします、先輩」
「ご丁寧にどうも。書籍部OGの清森真菜です。紙資料全般の修復家見習いで、今は主に本の修復やデジタル化を担当しています。今日はよろしくね。あと、私のことは〝先輩〟なんて呼ばなくていいよ。なんか、そう呼ばれるのはこそばゆくって苦手なんだよね。それと、お姉ちゃんと紛らわしいだろうから、下の名前で呼んでくれていいからね」
真菜先輩改め真菜さんが、ショートカットの髪を揺らして朗らかに笑う。
奈津美先輩が言っていた通り、快活な印象のかわいらしい人だ。気取った様子もなくフランクで、とても話しやすい。
それと……すみません。頭の中では、すでに下の名前でお姉さんと区別していました。
と思ったら、真菜さんは猫のように目を光らせて、僕の顔をまじまじと見てきた。
「それにしても……へぇ、ふーん、なるほどね……」
「えっと……僕の顔に何かついていますか?」
美人に近くから見つめられ、思わず気後れする。
すると、真菜さんは愉快そうに笑いながら、「ううん、何でも」と言った。
「ただ、奈津美ちゃんに聞いていた通り、本当にかわいらしい顔だなって思って。その年で女の子に間違われたことがあるっていうのも、頷けるな~ってね」
「がはっ!」
真菜さんの言葉が胸に突き刺さり、思い切りむせてしまった。
なぜこの人が、僕の黒歴史を……って、そんなの理由はひとつしか考えられない。
僕は、抜き足差し足で逃げ出そうとしている犯人へと目を向けた。
「奈津美先輩、ちょっとお話があります」
「ゆ、悠里君? 顔が怖いわよ」
「気にしないでください。全部あなたのせいですから。先日の喫茶店でのこと、真菜さんに話しましたよね?」
「ええと、その~……。話したような……、話してないような……?」
目を逸らして、というか、目を泳がせながらの、しどろもどろの回答が返ってきた。
うん。これは確実に、間違いなく、純度100パーセント黒だ。
それでは、せーの――!
「なんてことしてくれたんですか! あれほど他言するなと釘を刺したのに!」
「ひゃう~! ご、ごめんなさ~い!」
奈津美先輩が頭を抱えて、「許して~。つい口が滑っちゃったの~」と謝ってくる。
まったくこの人は、人の思い出したくない記憶をペラペラと……。おかげで、頑張って頭から消そうとしていた記憶が鮮明に甦ってきてしまった。
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