世界に忌み嫌われた俺が、幼馴染との再会をきっかけに"救世の英雄"になるまで

まっさん

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異端の翼

禁忌の祓魔師-3

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悪魔──それは人ならざる異形。

彼らの本来の居場所は魔界アビス

この世界とは異なる法則が支配する、終わりなき闇の世界。

悪魔たちは 基本的に現世に存在することはできない。
では、どうやって彼らはこの地に姿を現すのか?

方法は 2つ──。

1つ目は、人間の肉体を器として受肉すること。
しかし、この方法は難易度が高い。
悪魔の力を受け入れられる強靭な器でなければ、宿った瞬間に肉体が崩壊してしまう。

2つ目は、自らの魔力を用いて現世に顕現すること。
この方法は 魔界に本体を残したまま、幽体として現世に干渉する形となる。
しかし、顕現した幽体を滅ぼせば、本体も消滅する。

ただし、物理的な攻撃は幽体には通じない。
悪魔を殺すには、祓魔術セイントまたは神罰具カムイのような特別な武器が必要だ。

また、悪魔が無理やり現世に干渉している状態では本来の6割程度の力しか発揮できない。

つまり、戦うなら現世にいる間に仕留めるのが最善策ということだ。

しかし、目の前のヴァルドリオは──その制約を打ち破ろうとしている。


「──堕落楽園ルシフェリア・エデン!」

ヴァルドリオが唱えた瞬間、世界が揺れた。

床が、壁が、天井が……すべてが赤黒い血のような波動 に覆われていく。

……来たな。
俺は、心の中で静かに呟いた。

《堕落楽園》

3級悪魔以上が持つ、現世での弱体化を無効にする特殊権能。

この領域内では、悪魔は100%の力を発揮できる。

さらに、祓魔師が使う祓魔術の威力を大幅に低下させる効果まである。

俺がやつと互角以上にやり合えていたのは、悪魔が現世にいることで力が制限されていたからに過ぎない。

ヴァルドリオの傷が、一瞬で癒えていく。

空には 血のように赤黒い月 が浮かび、辺りの空間すべてが魔界と化していた。

「……ここでは俺が神だ」

ヴァルドリオは腕を広げ、高らかに宣言する。

「さあ、祓魔師よ。俺に跪き、その赤を捧げるがいい──」

だが──その言葉に、俺は思わず笑みを浮かべた。

「……貴様、何を笑っている?」

ヴァルドリオが訝しげに目を細める。

俺は無意識に笑っていた。
理由は簡単だ。

待ってたんだよ。お前の本気をな。

ここでは 俺のを使っても、協会の監視に引っかかることはない。

「いや、なんでもねぇよ。ただ……」

俺は刀を構えながら、挑発的に笑う。

「オレツェェェ!!ってなってるお前の顔が面白くてな」

「貴様……!」

ヴァルドリオの目が殺気に染まる。

──次の瞬間、戦場が動いた。



「《血界縛鎖》!!」

ヴァルドリオが腕を振るうと、無数の赤黒い鎖が宙を裂きながら伸びる。

「チッ……!」

今までの攻撃とはスピードが桁違いだった。
回避しても、血の鎖が絡みつくように迫ってくる。

「ぐっ……!」

回避が間に合わず、俺の腕と脚に血の鎖が巻きついた。

「ハハハッ、ようやく捕まえたぞ!」

ヴァルドリオが指を握りしめると、鎖が俺の体に食い込み、血を吸い取り始めた。

ズズズズ……

「ッ……!」

血液が抜き取られる感覚。
体が重くなり、力が奪われていく。

──このままじゃジリ貧だな。

「……っ!」

俺はヴァルドリオから逃れる為に鎖を夜喰で斬り一気に後方へと跳ぶ。

「逃がすかッ!」

だが、ヴァルドリオは即座に反応し、俺の背後に回り込む。

──完全に 読み切られていた。

「しまった……!」

「遅い!!」

ヴァルドリオの鋭い爪が、俺の背中を引き裂いた。

ズバァァァ!!

「ぐっ……!」

背中に走る灼熱の痛み。
俺は地面に転がるように回避しながら距離を取る。

「どうした、どうした?」

ヴァルドリオが にやりと嗤う。

「さっきまでの威勢はどうした?」

「……チッ」

俺は痛みを堪えながら立ち上がる。

「お前の血は、やけに不思議な匂いがする……」

ヴァルドリオが、床にこぼれた俺の血を指で掬い、舐める。

「──ッ!? な、なんだコレは……!?」

途端に、ヴァルドリオの顔色が変わる。

「お前……お前が……"あの悪魔と混じっている" 人間か……?」

「……」

俺は無言で夜喰を握り直す。

「人間も酷いことをする……こんな実験をするなんて、人間の方がよっぽど悪魔だろうに」

ヴァルドリオは、心底愉快そうな笑みを浮かべる。

「なるほどな……これは楽しくなってきた」

──俺もだよ。

「……やるしかねぇな」

俺はフラフラになりながらも立ち上がる。

「……俺の闇を喰らえ」

そして、右手に握る刀を ゆっくりと掲げる。

「──夜喰解放ナイトイーター・リリース

漆黒の焔が、刀身を包み込んだ。
俺の瞳が紅く染まり、血の世界に抗う異質な力が全身に満ちていく。

ヴァルドリオの余裕が、一瞬で消え去る。

「……それは、何だ?」

──ここからが、本当の戦いだ。

ヴァルドリオの顔に、初めて 怯えの色 が浮かんだ。

俺の刀──夜喰の刀身が、まるで夜の闇を凝縮したかのように深く、黒く染まっていく。

漆黒の焔がゆらめき、血の世界を侵食しながら燻るように燃え盛る。

「はっ、やっぱり分かるか。これがお前ら悪魔が恐れる禁忌の力だ」

夜喰の柄を握る手に、ズシリと重みがのしかかる。

刀を通じて 悪魔の力が全身に流れ込む感覚。

──時間がない。
長く使えば俺自身が呑まれる。

だから、決めるなら今しかない。

「黙れぇぇぇえええ!!!」

ヴァルドリオが 血の狂気 に満ちた咆哮を上げる。

「俺は上位悪魔だぞ!? たかが人間ごときが私に逆らうなぁぁぁあああ!!!」

激情のまま、無数の血の刃が空間を切り裂く。

「《血刃乱舞》!!」

赤黒い刃が暴風のように無数に飛び交う。

しかし──

「遅ぇよ」

俺は静かに踏み込んだ。

「──《焔閃》」

黒焔をまとった斬撃が空間を切り裂き、血刃の嵐を飲み込んでいく。

「な、に……ッ!? ぐぅあああ!!!」

ヴァルドリオの左腕が、灼熱の刃に焼かれながら吹き飛ぶ。

──燃える。

この黒焔は、ただの炎じゃない。
悪魔の力を喰らい、浄化する焔。

「……へぇ、咄嗟に回避したか」

俺は刀を横に振り、血が混じった黒焔の燃えカスを地に散らす。

ヴァルドリオは 怯えと憤怒が入り混じった顔 で睨みつけてくる。

「貴様ぁぁああ!!!」

奴の全身が血の霧に包まれる。

「まだだ!! 俺には《血界再臨》がある!!!」

ヴァルドリオの 肉体が膨張し、再生を加速させていく。
血液が宙を舞い、巨大な血の繭が形成される。

──つまり、時間を稼げば完全復活できるわけか。

「じゃあ──終わらせてやるよ」

俺は夜喰を深く構えた。
刀身がさらに黒焔を纏い、闇の塊と化していく。

「《焔喰牙斬》!」

一瞬の踏み込み。
──時間が止まったように感じる。

俺の視界には、ただ目の前の獲物だけが映る。

「貫け」

ズバァァァァアアアア!!!!

夜喰がヴァルドリオの胸元を貫いた。

「……が……ッ……?」

ヴァルドリオの目が驚愕に染まる。
次の瞬間、刀の中に秘められた黒焔が、奴の体内で爆発した。

「ぎゃぁぁああああああああ!!!」

ヴァルドリオの体内から炎が暴れ回る。

それはただの炎ではない。
悪魔の力を喰らい、魂ごと灼き尽くす禁忌の焔。

「ぐぁぁああああ!! や、やめ……やめろぉおお!!」

体をよじり、のたうち回るヴァルドリオ。

しかし 再生するはずの肉体が、黒く崩れていく。

「俺は……俺は、不死なんだぞぉぉぉぉ!!!」

「いや、お前はもう終わりだ」

刀を一気に引き抜く。

「──燃やし尽くせ、夜喰」

最後の呪詛のような断末魔を上げながら、ヴァルドリオは 闇の焔に包まれ、完全に消滅した。

その瞬間── 堕落楽園が崩壊する。

血の霧が晴れ、静寂が戻る。
魔界の領域が、完全に消え去った。

「……はぁ、はぁ……ッ」

刀を納めると同時に、全身の力が抜けた。

限界ギリギリだった。
膝をつき、地面に手をつく。

「……やっぱ、堕落楽園を展開された状態での夜喰解放は、キツいな」

体の中にまだ黒焔の残滓 が暴れている。

これ以上長く解放し続けていたら──俺自身が悪魔の力に呑まれていた。

「……まだまだだな」

俺は自分の未熟さを噛み締める。
ヴァルドリオは確かに強かった。

だが、俺が目指す相手はもっと強大な悪魔だ。
翠目の悪魔──俺が本当に倒さなければならない仇。

まだ、全然足りない。

「……でも、とりあえずは……」

俺は、ぼそりと呟いた。

「……腹、減ったなぁ」




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