世界に忌み嫌われた俺が、幼馴染との再会をきっかけに"救世の英雄"になるまで

まっさん

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異端の翼

祓魔師とは-2

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講堂の空気が一気に重くなった。雷蔵がゆっくりと腕を組み、鋭い視線を合格者たちに向ける。

その目には、まるで狩る者が狩られる者を選別するかのような、厳しい光が宿っていた。

「さて……次に、祓魔術セイントについてだ」

雷蔵が再び指を弾くと、魔導スクリーンに祓魔術の概要が表示される。

▉ 祓魔術

人類が悪魔に対抗するために編み出した術式。

聖なる法則を用いて悪魔を消滅させる力を持つ。
ただし、祓魔師個人の魔力と適性に依存し、得意不得意がある。

祓魔術には以下の階級が存在する

初級祓魔術(基本的な浄化・防御術)
中級祓魔術(攻撃や結界術などの実戦向け)
上級祓魔術(特殊な術式や強力な儀式級魔法)
極祓魔術(特級クラスの祓魔術)

「極祓魔術──これは、六芒星クラスの祓魔師しか使えねぇ代物だ」

雷蔵の言葉に、合格者たちは息を飲む。彼の口から放たれる言葉には、戦場を生き抜いた者の圧倒的な説得力があった。

「だがな……祓魔術が使えりゃ悪魔に勝てるわけじゃねぇ。相手が法則そのものを操る存在なら、それを上回る力が必要だ」

雷蔵の指が再びスクリーンを示す。

「それが、神罰具ってわけだ」

神罰具カムイ

スクリーンには様々な神罰具の画像が映し出される。剣、槍、弓、盾、鎖──それぞれが神秘的な輝きを放っていた。

▉ 神罰具

人類が悪魔に対抗するために生み出された、神聖なる武具。

悪魔は通常の物理攻撃では傷つかないが、神罰具は悪魔の霊核を破壊できる。

いくつかの神罰具は、古代の祓魔師たちによって鍛えられ、聖遺物レリックとして残っている。

祓魔師の装備は神具師と呼ばれる職人たちによってカスタマイズされ、適性に合わせた武具が作られる。

「お前らの中にはすでに神罰具を所持してるやつもいるだろうが──本物の神話級ってのは別格だぜ?」

雷蔵の言葉に、講堂の空気が一変する。

彼がゆっくりと腕を組むと、その左手首の腕輪が淡い雷光を帯び始めた。

「……さて、せっかくだ。お前らに本物の神罰具ってやつを見せてやる」

雷蔵が腕輪に指をかけると──

──ゴロゴロゴロ……!!

突如、空気が震えた。

天井のシャンデリアが微かに揺れ、講堂内に静電気が走る。合格者たちの髪が逆立ち、肌がチリチリと焼けるような感覚に襲われる。

「な、なんだ……!?」
「空気が……重い……!」

雷鳴の音が次第に大きくなり、ついに──

──ドォォォン!!

雷光と共に、巨大な戦槌が雷蔵の手に具現化した。

神罰具《雷槌》──それは、天地を砕くほどの威圧感を放つ戦槌だった。

槌の柄には古代文字が刻まれ、槌頭には雷を封じ込めたかのような蒼白い光が渦巻いている。

雷蔵は無造作に戦槌を肩に担ぎ、軽く振るった。

──ゴゴゴゴゴ……

その瞬間、講堂内の空間が歪む。

「……これが俺の神罰具《雷槌》だ」

雷蔵の言葉に、合格者たちは圧倒された。

……これが、六芒星の実力……!

朔夜もまた、雷槌の圧倒的な存在感に息を呑む。

雷蔵がゆっくりと槌を構え、講堂の中央に設置された模擬戦用の標的──魔法強化された鋼鉄の壁を指さした。

「……試しに、こいつで遊んでみるか」

──バチバチバチバチッ!!!

雷槌に帯電した雷が活性化し、辺りに雷光が散る。
合格者たちは反射的に顔を背けた。

「《雷神審判》」

雷蔵が静かに呟いた瞬間──

──ドォォォォォォン!!!!!

雷槌が振り下ろされると同時に、天井の魔法陣が輝き、雷鳴と共に巨大な雷柱が標的を貫いた。

標的の鋼鉄の壁は、一瞬のうちに黒焦げになり、粉砕される。

だが、それだけではない。

周囲の床や壁には一切の被害がない。標的だけが、まるでそこに存在しなかったかのように消滅していた。

雷蔵は軽く戦槌を回し、それを再び腕輪へと収納する。

「──ま、こんなもんだ」

煙管を口にくわえ、ふっと笑う。

「いいか、祓魔師の道に足を踏み入れた以上──お前らはもう、ただの人間じゃねぇ」

「悪魔を狩るってことは、悪魔に狩られる覚悟が必要だ」

その言葉が、まるで呪いのように講堂に響き渡った。

──合格者たちは、ただただ沈黙していた。

雷蔵は壇上に立ち、煙管を軽く叩くと、ゆっくりと口を開いた。その一挙手一投足が、まるで空間そのものを支配するかのように場を引き締める。

「──さて、ここまでで祓魔師の基本を学んだわけだが……」

低く響く声が、講堂内の空気を一瞬にして張り詰めさせる。合格者たちは息をのんでその言葉を待った。

「お前らがこれから所属する祓魔師協会ってのは、単なる組織じゃねぇ。これは、人類そのものを悪魔から守るための最後の砦だ」

静寂が広がる。
誰もがこの場の重みを理解し、目の前の男が決してただの教師ではないことを改めて認識する。

「祓魔師協会は世界中に支部を持ち、各国で活動している。祓魔師たちは、それぞれの支部に所属し、任務を遂行する。つまり、どこに配属されるかによって、お前らの戦い方も大きく変わるってことだ」

壁に掛けられた世界地図を指し示しながら、雷蔵は続ける。

「この日本支部は、世界の中でも特に悪魔の活動が活発な地域だ。理由は簡単、ここは境界が薄い」

「……境界が薄い?」

誰かが呟く。
雷蔵は無言で頷いた。

「悪魔は本来、魔界にいる。しかし、現世と魔界の境界が薄い場所ほど、悪魔は顕現しやすい。この日本列島は、その薄い境界線が集中している特異点の一つだ」

「つまり、悪魔との戦いの最前線……」

合格者の一人が震えるように呟くと、雷蔵はニヤリと笑った。

「その通り。お前らはこれから、そんな戦場に立つことになる」

雷蔵は煙管を軽く弾き、机の上に置かれた名簿を手に取る。

「さて、お前らは今まで個人の実力を試されたが……これからは違う。今後はチームで任務を遂行することになる」

「チーム制……」

その言葉に、合格者たちは互いに顔を見合わせた。

「ソロで動くのは、基本的に上級祓魔師だけだ。3級以下のガキどもが一人で突っ込んでどうにかなるほど、悪魔ってのは甘い相手じゃねぇ」

雷蔵の視線が鋭くなる。

「チームは信頼がすべてだ。命を預け合う覚悟を持て」

鋭く、重く、そして冷酷な言葉だった。

「祓魔師にとって、仲間ってのはただの同僚なんてもんじゃねぇ。任務中、お前らは互いに命を預け合う。一人が死ねば、それはチームの責任だ。」

「だからこそ、何よりも大事なのは信頼だ。お前らは、これから共に死線を潜る仲間になる。その覚悟がねぇ奴は、今すぐ帰れ」

誰も動かない。
いや、動けなかった。
雷蔵の言葉の重みが、全員の心を圧倒していた。

そして──

「最後に──祓魔師である以上、お前たちはいつ死んでもおかしくない」

雷鳴のような声が響く。

「生き延びるという意識を持て。それがない奴は、悪魔に喰われるか、仲間を死なせることになる」

雷蔵の視線が、全員を鋭く射抜く。

「お前らに問うぞ──自分は絶対に生き延びると、言い切れる奴はいるか?」

誰も手を挙げない。

「……それでいい」

雷蔵は頷く。

「絶対なんてねぇんだよ、この世界には。お前らが明日死ぬ可能性だってある。その覚悟を持て」

雷蔵は最後に煙管をくゆらせ、短く言い放った。

「ようこそ、戦場へ」

その言葉を最後に、講堂は静まり返った。

──こうして、祓魔師たちの本当の戦いが始まった。





─────────





研修が終わり、合格者たちはそれぞれ帰っていった。
静寂が祓魔師協会の本部を包み込む中、一人だけ違う道を選んだ者がいた。

四宮夕璃。

彼女は本部の裏庭に足を踏み入れ、夕日が沈み掛けている中、静かに佇んでいた。
風が優しく髪を撫で、長い黒髪がそよぐ。

──どこか遠くを見つめるような、静かな眼差し。

彼女の表情には、今日一日を終えた安堵ではなく、何か別の思惑が滲んでいた。

そして、その静寂を破るように、低く威圧的な声が響く。

「さて──そろそろ聞かせてもらおうか」

まるで雷鳴のように響く低い声。

夕璃が振り返る前に、足音すら感じさせずに近づいてきた男がいた。

東雲雷蔵。

六芒星の一人。
雷を操る最強の祓魔師。

彼はいつものように煙管を片手にしながらも、その視線は鋭く夕璃を射抜いていた。

まるで、すべてを見透かしているかのような眼差し。

「お前が朔夜の前に現れた本当の理由を」

雷蔵は煙を吐きながら、核心を突いた。

その目には、一切の甘さも躊躇もない。

そして、次の瞬間──

彼は静かに、しかしはっきりとした声で名を告げた。

「──大天使リアナ」

その名が紡がれた瞬間、夕璃の琥珀色の瞳に金色に輝く。
だが、それはほんの一瞬のことだった。

夕璃はすぐに穏やかな微笑みを浮かべる。

「……さすがですね、雷蔵さん」

先ほどまでの柔らかな雰囲気が一瞬で消え去る。
代わりに現れたのは、荘厳な気配を纏う者の姿。

言葉の重みが増し、空気が変わる。

「私をそこまで見抜くとは、やはり雷の審判者……伊達ではないようですね」

雷蔵は目を細め、煙管の灰を指先で払う。

「お前が人間の姿でここにいる理由……興味はあったが、どうやら悪趣味な遊びってわけじゃなさそうだな」

雷蔵の声は、ただの探りではなかった。
確信を持っている。

夕璃はその圧力をものともせず、涼やかに微笑む。

「……ええ、確かに遊びではありません」

「なら、目的を話してもらおうか」

雷蔵の言葉は短い。
だが、その背後には雷鳴のような重圧があった。

夕璃は少しだけ視線を月に向け、静かに呟く。

「私は……この争いを終わらせたいだけ」

「ほう?」

雷蔵は鼻で笑う。

「そのために朔夜に近づいたってか?」

「……彼は、終わらせる鍵を握る存在だから」

その言葉に、雷蔵の表情が僅かに変わる。

そして、彼は言い放った。

「……俺は、過去にあの研究の後始末をした。そして、朔夜を保護した人間でもある」

夕璃はその言葉にわずかに瞳を細める。

雷蔵は続けた。

「お前が何を考えているかは知らん。だが、もし朔夜を間違った道へ導くつもりなら、俺は容赦しない」

次の瞬間──

バチバチバチバチッ……!!

空気が帯電し、雷撃が弾ける。

雷蔵の足元から広がる電流が、まるで生き物のように大地を這う。

彼が《雷槌》を解放しかけた瞬間だった。
その重圧に、大気が震え、周囲の温度が一気に上昇する。

まるで天地そのものが雷の審判を受けるかのような絶対的な圧力。

だが──

夕璃は一歩も引かなかった。
むしろ、彼女はさらに優雅に微笑む。

「脅しかと思いましたが……本気でやるつもりでしたか?」

「……試しただけだ」

雷蔵は雷を収めながら、夕璃をじっと見つめる。
夕璃は静かに空を見上げ、囁くように言った。

「私はただ……この争いを終わらせたい」

「……なら、真意を話せ」

雷蔵はなおも探る。
夕璃は、静かに雷蔵を見つめ返した。

そして、淡く微笑む。

「それは──まだ言えません」

雷蔵の目が鋭くなる。

「……ふん、やはり胡散臭ぇな」

煙管をくゆらせながら、彼は短く息を吐いた。

「まぁいい……この話はここまでだ」

雷蔵は背を向け、歩き出す。

その背中を見送る夕璃の瞳には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
だが、その奥には何か別の感情が宿っていた。

「……さて、どうなるでしょうね」

祓魔師と天使。
交わるはずのない二人が出会い、何かが動き出す。




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