XLサイズの龍大くんはくっつきたがりなクーデレ男子

星詠みう菜

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1対3のWデート

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 市街地を抜け、山道に入って30分ほどしたところで、キャンプ場に到着した。龍大が安全運転してくれている中3人でクイズやおしゃべりとしてはしゃいでしまったが、龍大はなにも気にしていない様子だった。平日の朝だからか、鈴夏たち以外には全然人がいない。受付を済ませ、規定の区画で設営をしはじめると、唯翔が口を開く。
 
「ボクらで設営してるからさ、タツと遊んできなよ」
「いいの?」
「力仕事多いし、ジュイチとやってっから」
「オレも遊びたーい」
「設営終わったらな」

 その区画の近くには川幅3mほどの小さく浅い川が流れており、そこで遊んでおいでと唯翔に促された。自分が設営に参加しても邪魔になるだけだろうとサンダルに履き替えたら、スッと龍大の手が鈴夏の手首を掴んで引っ張った。大きな手に掴まれ、されるがままに連れて行かれる。そのちょっとした強引さに、心臓が強く脈打つのを感じた。
 透き通った水の色、さらさらと流れる音、澄んだ空気、暖かな陽の光……。川のそばは五感すべてが満たされるような心地よさだ。サンダルのまま水に入ってみると、キンとするほど冷たい。

「わっ! 水冷たいよたっちゃん!」
「やばい、結構冷たい」

 冷たい川の水が気持ちよくて、龍大は掴んでいた手を離して少し奥まで歩いていく。一番深くても、脛のところまでしか水深はない。龍大が「ここまでおいで」と手招きすると、鈴夏の心にはちょっとしたいたずら心が芽生えた。
 
「えい!」

 鈴夏が勢いよく水をパシャっとかけると、龍大は腕でその水を避けた。龍大がやり返してくるかと思ったが、ちょっと呆れたような笑みを浮かべて、鈴夏の方へ寄ってくる。
 ――あれ、もしかして水かけられるのがイヤだったのかな……。
 
「ごめん、水掛けちゃって――ひゃっ!」

 すると鈴夏の脇の下に龍大の手が差し込まれ、高く持ち上げられた。いきなり目線が高くなり、視界が広がる。体がふわっと浮き上がる感覚と落ちたらどうしようという恐怖感が湧いてきて、鈴夏は龍大の首にしがみついた。

「待って! こわい!」
「ごめん、鈴夏に水かけたくなかった」
「別にいいのに、水くらい」
「可愛い服着てたから、濡らしたくなかった」

 こんなにすぐそばで龍大の声を感じるのは、1ヶ月ぶりだ。その期間があったからなのか、服が可愛いと褒められたからなのか、抱きついて体温を感じたからなのか……。鈴夏の心臓はドキドキと胸を叩いていた。龍大の胸板は厚くて広くて、しがみついているだけで安心感がある。
 すると遠くからなにやらイヤな視線を感じる。なんとなくその視線の正体がわかっていたが、視線が向かってきているだろう方向を見ると、唯翔と寿一郎がこちらを見ていた。もちろんニヤっとした表情で。
 
「あっ、ちょっ、たっちゃん下ろして!」

 そう言うと、龍大は素直に鈴夏を下ろしてくれる。唯翔と寿一郎の後ろには、すでにタープと呼ばれる日除け用の布が取り付けられ、机や椅子、クーラーボックスも置かれていた。その横には焚き火台も用意してある。キャンプに慣れているとはいえ、これだけの設営をあっという間に済ませていた。
 龍大と鈴夏も戻っていくことにした。抱きついていた様子は、おそらく全部見られていただろう。
 
「もっとイチャついてて良かったのに~」

 寿一郎が残念そうにそうつぶやいた。案の定からかわれて、鈴夏は恥ずかしくなって上手く返事ができなかった。
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