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1対3のWデート
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「いっぱい頼るって……どうしたらいいかな」
「ちょっとしたお願いしたらいいんじゃない?」
「そ、ごはん作ってとか肩揉んでとか」
「そういうのでいいの?」
「いいのいいの。男って頼られたがりなんだよ」
人を頼る……。鈴夏にとっては、苦手にしていたことだった。人にお願いするより、自分でしたほうが面倒じゃない。そうやって仕事もやりくりしてきた。でも、龍大が喜ぶのなら……。その頑固な考えは捨てなきゃいけないとも思った。ちょっとお願いするくらいなら、自分にもできるはずだと意気込んだ。
「タツはオレとかジュイチみたいな社会の底辺じゃないから。鈴夏さんもタツのこと幸せにしてやって」
「そんな……底辺じゃないよ」
「ありがと。まぁそうは思わない人もいるから」
唯翔の顔が一瞬曇ったように見えた。唯翔は普段から優しいし、世話焼きで頼れる人だ。コミュニケーション能力も高くて、初対面から温かく接してくれる。でもその優しさは、おそらく鈴夏には理解しきれない苦悩で支えられているんだろう。唯翔や寿一郎のような性的指向は今では認められるようになってきたとはいえ、マイノリティだし、いろんな呪縛のようなものがある。
でも、龍大のことを幸せにして欲しいという願いは本物だと感じた。そしてそれ以上は唯翔のことに踏み込んじゃいけない気もした。だから後片付けに集中することにした。
しばらくして後片付けがほとんど終わる頃に、キャッチボールをしていた龍大と寿一郎が帰ってきた。
「やっべぇ! タッツーの豪速球肩やっべぇ!」
「ジュイチさん肩弱いっす」
「だって肩使わねぇから普段!」
キャンプ場にいた時間は長くなかった。朝10時に着いて14時頃には帰ることになった。本当はもっとこの4人でいたかったけど、天気には逆らえないから仕方ない。
帰りの車の中では、後部座席で寿一郎と唯翔がお互い重なって寝ていた。車内にはレトロな洋楽を流すラジオが響く中、すやすやとふたり揃って寝息を立てている。Madonnaの甘くて耳を刺すような高音ボイスが流れているのに、全く気にしていない。
「あのふたり、仲いいよね」
「うん、言い合いはするけど喧嘩は見たことない」
「そうなんだ。いいね、そういう関係」
車内に柔らかい空気が流れていく。後ろからは穏やかな寝息が聞こえ、運転中の車の振動が眠気を誘う。
でも、鈴夏は眠りたくなかった。なんとなく、この空気を味わわずに寝てしまうのが、もったいなかった。
信号で車が停車している途中、鈴夏は龍大の服の裾をちょんと引っ張った。すると、停車している間だけ、龍大は手を握ってくれた。ベンチシート仕様だから後部座席からは見えないはず。でも、別に見えても良かった。
「ココでいいから、ありがと!」
30分ほど車を運転して、市街地へと戻ってきた。駅前で唯翔と寿一郎がゴミ袋を持って車を降りる。
「じゃあね」
鈴夏はそう言ってふたりを見送った。なんとなくわかる。あのふたりは、きっと鈴夏と龍大をふたりっきりにしてくれたのだ。
「ちょっとしたお願いしたらいいんじゃない?」
「そ、ごはん作ってとか肩揉んでとか」
「そういうのでいいの?」
「いいのいいの。男って頼られたがりなんだよ」
人を頼る……。鈴夏にとっては、苦手にしていたことだった。人にお願いするより、自分でしたほうが面倒じゃない。そうやって仕事もやりくりしてきた。でも、龍大が喜ぶのなら……。その頑固な考えは捨てなきゃいけないとも思った。ちょっとお願いするくらいなら、自分にもできるはずだと意気込んだ。
「タツはオレとかジュイチみたいな社会の底辺じゃないから。鈴夏さんもタツのこと幸せにしてやって」
「そんな……底辺じゃないよ」
「ありがと。まぁそうは思わない人もいるから」
唯翔の顔が一瞬曇ったように見えた。唯翔は普段から優しいし、世話焼きで頼れる人だ。コミュニケーション能力も高くて、初対面から温かく接してくれる。でもその優しさは、おそらく鈴夏には理解しきれない苦悩で支えられているんだろう。唯翔や寿一郎のような性的指向は今では認められるようになってきたとはいえ、マイノリティだし、いろんな呪縛のようなものがある。
でも、龍大のことを幸せにして欲しいという願いは本物だと感じた。そしてそれ以上は唯翔のことに踏み込んじゃいけない気もした。だから後片付けに集中することにした。
しばらくして後片付けがほとんど終わる頃に、キャッチボールをしていた龍大と寿一郎が帰ってきた。
「やっべぇ! タッツーの豪速球肩やっべぇ!」
「ジュイチさん肩弱いっす」
「だって肩使わねぇから普段!」
キャンプ場にいた時間は長くなかった。朝10時に着いて14時頃には帰ることになった。本当はもっとこの4人でいたかったけど、天気には逆らえないから仕方ない。
帰りの車の中では、後部座席で寿一郎と唯翔がお互い重なって寝ていた。車内にはレトロな洋楽を流すラジオが響く中、すやすやとふたり揃って寝息を立てている。Madonnaの甘くて耳を刺すような高音ボイスが流れているのに、全く気にしていない。
「あのふたり、仲いいよね」
「うん、言い合いはするけど喧嘩は見たことない」
「そうなんだ。いいね、そういう関係」
車内に柔らかい空気が流れていく。後ろからは穏やかな寝息が聞こえ、運転中の車の振動が眠気を誘う。
でも、鈴夏は眠りたくなかった。なんとなく、この空気を味わわずに寝てしまうのが、もったいなかった。
信号で車が停車している途中、鈴夏は龍大の服の裾をちょんと引っ張った。すると、停車している間だけ、龍大は手を握ってくれた。ベンチシート仕様だから後部座席からは見えないはず。でも、別に見えても良かった。
「ココでいいから、ありがと!」
30分ほど車を運転して、市街地へと戻ってきた。駅前で唯翔と寿一郎がゴミ袋を持って車を降りる。
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