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13 一度切りの人生ならば愛する人と結ばれたい
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昼間、国王が私の部屋にやってきた。
つまり父だ。
「アーロンよ。セシリアを貰ってくれんか」
「……」
「……」
チェスに熱中していた私たちは、きょとんと国王を見つめた。
先に我に返ったのはアーロンだった。
「国王様。いま、なんて?」
「だから、セシリアと結婚してくれアーロン」
「はい?」
明確な言葉が出て、私の胸は高鳴った。
結婚……。
この淫らな胸のせいで、永遠に手が届かないと思っていた、妹にさえ先をこされた、あの結婚……!
「父上!」
「お前は黙っていなさい。今この騎士と話をしている」
「はぃ」
すげない国王の制止にしょんぼりと下を向く。
でも、そんなに悲観する事はない。だって今、国王が騎士に娘と結婚しろと言っているのだ。断るはずがない。いくら勇敢な騎士とはいっても命は惜しいはずだ。せめて戦場で散りたいと願うもの!
「いや……ですが、俺はたいした家柄じゃないし」
「いいんだ、いいんだ。気にするな」
「あの、適齢期は過ぎたと言っても王女なわけですし、俺なんか釣り合わないんじゃ」
「恥ずかしくて外へ出せん。四の五の言わずに貰ってくれ」
たとえ物みたいに言われようと構わない!
目の前で自分の縁談がまとまっていく光景は、とてもとても素晴らしかった。ときめく胸を押さえ、うっとりと国王とアーロンを見つめる。
「わ、わかりました」
「よかった。近くに新居を建ててやろう。婚礼の儀は内々に済ませるからそのつもりで。親族は呼んでいい。友人は無しだ」
「はい、国王様」
アーロンは複雑な表情でひれ伏した。
私はそんなアーロンの傍らに跪き、逞しい背に手を置いて慰める。いつもと逆だ。
興奮しちゃう……!
「父上、ありがたき幸せにございます。アーロンはきっと善き夫、善き王となってくれるはずです」
「いや王族に加えるとは言っていない。セシリア、お前を勘当する」
「──!?」
ガバッ!
アーロンが起き上がり、見た事もないような驚愕の表情で手を戦慄かせた。
「こっ、国王様ッ!?」
「火遊びが過ぎたなセシリア。お前を王族から外して騎士に嫁がせるのはせめてもの情けだ」
「はい、ありがたき幸せにございます父上」
「えええっ!?」
アーロンはまだ驚愕している。
私は国王の言葉に、実のところ安堵しか感じなかった。宮殿は窮屈だし、みんな私には冷たい。いてもいなくても同じ、というか、むしろいない人のように扱われる暮らしにはもううんざりだった。
大好きなアーロンと暮らせるなら、どんなに幸せか。
「あなた。ずっと大切にしてね♪」
「セ、セシリア……っ」
「そういうわけだ。ただし、健康な男児が生まれたら次期国王としてこちらで育てる」
「えええっ!?」
アーロンは一本調子だ。
「では、そういう事で」
国王が退室すると、アーロンはまだ信じられないといった顔で私を見た。
私はそんな彼の顔を見て、いつのまにか深い愛情を抱いていた自分の心に気づいた。
「アーロン。あなたは私を幸せにしてくれたわ。本当にありがとう」
「い、いやでも……セシリア、俺たちまだキスもしていないんだぞ?」
「え?」
そうだった。
忘れていた。
いつも熱く激しく胸を揉んでくれているから、すっかり愛し合っているつもりになっていた。けれどアーロンの言う通り、私たちはキスはおろかあたたかな抱擁さえ交わした事がない。いつも羽交い絞めか壁ドンだ。
「これからすればいいわ」
私はアーロンを抱きしめた。
「愛しているわ、アーロン。どうか私と結婚して」
「セシリア……」
アーロンの腕が、優しく私を抱き返してくれる。
ああ、やっと手に入れた。
真実の愛を……!
「キスして」
愛しい人にそう強請る。
「ああ」
熱い眼差しが私を貫いた。そして、アーロンは勢いよく私の胸に顔を埋め、激しいキスを連発した。
「あっ! あっ、あんっ! ダメっ、そこ……ッ、はあんっ!」
「セシリア……セシリア愛してる……ッ!!」
「ああっ、私もッ、私も愛……ッ、あっ、いやっ、もうだめぇぇぇっ!!」
こうして私たちは一線を越えた。
素晴らしい時間だった。
つまり父だ。
「アーロンよ。セシリアを貰ってくれんか」
「……」
「……」
チェスに熱中していた私たちは、きょとんと国王を見つめた。
先に我に返ったのはアーロンだった。
「国王様。いま、なんて?」
「だから、セシリアと結婚してくれアーロン」
「はい?」
明確な言葉が出て、私の胸は高鳴った。
結婚……。
この淫らな胸のせいで、永遠に手が届かないと思っていた、妹にさえ先をこされた、あの結婚……!
「父上!」
「お前は黙っていなさい。今この騎士と話をしている」
「はぃ」
すげない国王の制止にしょんぼりと下を向く。
でも、そんなに悲観する事はない。だって今、国王が騎士に娘と結婚しろと言っているのだ。断るはずがない。いくら勇敢な騎士とはいっても命は惜しいはずだ。せめて戦場で散りたいと願うもの!
「いや……ですが、俺はたいした家柄じゃないし」
「いいんだ、いいんだ。気にするな」
「あの、適齢期は過ぎたと言っても王女なわけですし、俺なんか釣り合わないんじゃ」
「恥ずかしくて外へ出せん。四の五の言わずに貰ってくれ」
たとえ物みたいに言われようと構わない!
目の前で自分の縁談がまとまっていく光景は、とてもとても素晴らしかった。ときめく胸を押さえ、うっとりと国王とアーロンを見つめる。
「わ、わかりました」
「よかった。近くに新居を建ててやろう。婚礼の儀は内々に済ませるからそのつもりで。親族は呼んでいい。友人は無しだ」
「はい、国王様」
アーロンは複雑な表情でひれ伏した。
私はそんなアーロンの傍らに跪き、逞しい背に手を置いて慰める。いつもと逆だ。
興奮しちゃう……!
「父上、ありがたき幸せにございます。アーロンはきっと善き夫、善き王となってくれるはずです」
「いや王族に加えるとは言っていない。セシリア、お前を勘当する」
「──!?」
ガバッ!
アーロンが起き上がり、見た事もないような驚愕の表情で手を戦慄かせた。
「こっ、国王様ッ!?」
「火遊びが過ぎたなセシリア。お前を王族から外して騎士に嫁がせるのはせめてもの情けだ」
「はい、ありがたき幸せにございます父上」
「えええっ!?」
アーロンはまだ驚愕している。
私は国王の言葉に、実のところ安堵しか感じなかった。宮殿は窮屈だし、みんな私には冷たい。いてもいなくても同じ、というか、むしろいない人のように扱われる暮らしにはもううんざりだった。
大好きなアーロンと暮らせるなら、どんなに幸せか。
「あなた。ずっと大切にしてね♪」
「セ、セシリア……っ」
「そういうわけだ。ただし、健康な男児が生まれたら次期国王としてこちらで育てる」
「えええっ!?」
アーロンは一本調子だ。
「では、そういう事で」
国王が退室すると、アーロンはまだ信じられないといった顔で私を見た。
私はそんな彼の顔を見て、いつのまにか深い愛情を抱いていた自分の心に気づいた。
「アーロン。あなたは私を幸せにしてくれたわ。本当にありがとう」
「い、いやでも……セシリア、俺たちまだキスもしていないんだぞ?」
「え?」
そうだった。
忘れていた。
いつも熱く激しく胸を揉んでくれているから、すっかり愛し合っているつもりになっていた。けれどアーロンの言う通り、私たちはキスはおろかあたたかな抱擁さえ交わした事がない。いつも羽交い絞めか壁ドンだ。
「これからすればいいわ」
私はアーロンを抱きしめた。
「愛しているわ、アーロン。どうか私と結婚して」
「セシリア……」
アーロンの腕が、優しく私を抱き返してくれる。
ああ、やっと手に入れた。
真実の愛を……!
「キスして」
愛しい人にそう強請る。
「ああ」
熱い眼差しが私を貫いた。そして、アーロンは勢いよく私の胸に顔を埋め、激しいキスを連発した。
「あっ! あっ、あんっ! ダメっ、そこ……ッ、はあんっ!」
「セシリア……セシリア愛してる……ッ!!」
「ああっ、私もッ、私も愛……ッ、あっ、いやっ、もうだめぇぇぇっ!!」
こうして私たちは一線を越えた。
素晴らしい時間だった。
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