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16 どんより憂鬱な曇り空でも素敵な午後を過ごしたい

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「雨が来るな」


 アーロンが窓から空を見あげて呟いた。


「まぁ」

「まったく、この季節は嫌になりますね。暑いくせに蒸れるし、虫は湧くし、剣は滑るし、鎧の中はかぶれるし」

「アーロンったら、乙女みたいな事を言うのね」

「王女様はいいですよ。雨が降ろうと槍が降ろうと部屋に篭っていればいいんですから」

「拗ねないで。もう王女じゃないのよ」


 お茶を飲みながら頬杖をついてアーロンを眺める。ご機嫌斜めな彼って可愛い。


「王女ですよ、今でもね。勘当なんて口だけじゃないですか。こんな贅沢な暮らしして、乳で差別されるくらいどうってことないですよ。恵まれてるなぁ~」

「そんな私に愛されて貴方も贅沢してるのよ」

「そうですね。ありがとうございます~」

「お茶をどうぞ。アナタ・・・


 むっつりしたアーロンが向かいに座る。
 私たちは夫婦だ。
 うふふっ♪


「私ね、雨の日も槍の日も、ひどい天気ねぇ~って言って部屋の窓から外を見ていたわ。でも、誰も答えなかった。ひとりぼっちだったの。今は貴方が、私を辛辣に詰ってくれる。しかも私を好きなのよ。幸せだわ」

「そうやって口説いてるつもりですか?」

「どうかしら? 雨は嫌い?」

「ええ」

「じゃあ、ふたりの思い出にしましょう」


 アーロンの手を取って外へ誘った。

 私が上機嫌で歩いていると、アーロンもだんだんと乗ってきて、私の手を握り返し、私を追い越して歩きだす。雨がぽつりと額を打った。


「雨が降る日の散歩の仕方なんて知らないでしょ」

「知らないわ」

「教えてあげますよ」


 あははははっ♪
 うふふふふっ♪

 裸足で草原の土を踏んで、全身で雨を受けながら駆け回る。


「アーロォーーーン♪」

「セーシリアァー♪ ほらこっち来い!」

「きゃっ」


 生い茂る木々の間に引きずり込まれ、逞しい幹に力強く押し付けられた。


「あんっ」

「おい、そんな事で感じるのか? これだから甘やかされた王女様は。なんでも刺激になって結構ですねぇ」

「そうよっ! 雨に打たれても感じちゃうの……ッ」

「淫乱爆乳ビッチ元王女セシリアめっ!」


 アーロンの大きな掌がぐわしと胸を掴む。


「あっ!」

「いやらしい乳だなぁっ! ぐしょぐしょに濡れて透けてる上に、雨に濡れて光ってるぞセシリア!」

「あっ、あふんっ、ひいっ」

「どうだ濡れた布の感触はッ。うん? いいか? いいのか……ッ?」

「いいっ、すごくいいのおぉっ」

「こうかッ!?」

「ああんっ」

「こうか、そうか。じゃあ、これは、どうかなッ?」


 濡れた布がいつものようには滑らないのを利用して、私の胸をしっかりと掴んだアーロンがぎゅうっと上に持ち上げてくる。


「くふうぅっ……んっ、く、苦し……ッ」

「どうですかぁ? 自分の乳が気道を潰すなんて、なかなかありませんよ……?」

「……くはっ、あふっ、ん……」

「頬がいやらしい薔薇色ですなぁ、元王女様ぁ?」

「……揉んで……その、まま……ッ」

「好きものめッ!」


 私自身を持ち上げるほどの強さで胸を揉みしだかれて、私は雨の中で叫んだ。


「ああっ、あっ、かはっ、いあっ、ひっ、いやんっ、ア……アーロ……だっ、ダメえぇぇぇぇっ!!」


 雨は甘い味がした。
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