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5 美しい世界
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「ああ、エレオノーラ……!」
「フェルモ様……!」
妹を伴い部屋に入ってくると、フェルモ様が私を抱きしめた。
「可哀相に。辛かっただろう? 遅くなってすまなかった」
「いいえ……いいえ……っ、こうして、来てくださいました……!」
「ああ。オクタヴィアが報せてくれた」
「え?」
彼の愛を信じるよう示唆されたけれど、それは聞いていない。
彼は少し上半身を離すと、自身が深く傷ついたような目をして私の顔を見つめた。包帯に包まれた頭部は、実際よりも重症に感じさせるかもしれない。
「痛むだろう? 私が一生涯、朝昼晩、しっかり看てあげるからね」
「……フェルモ様……」
優しい声に、ぬくもり。
それだけで世界はこんなにも愛で満たされる。
「私で、いいのですか……?」
つい、不安が口に出た。
「当然だ! 君でなくては意味がない。愛している、エレオノーラ」
「フェルモ様……ッ、フェルモ様ぁ……!」
きちんと、言葉を交わさなくてはいけないのに。
私は彼の胸に顔を埋め、咽び泣いていた。
それから、たった、3週間後。
予定より120日も結婚を前倒しにして、彼は私を世界一幸せな花嫁にした。
本当はもっと早めたかったけれど、火傷して日が浅かったため、耐えたらしい。
顔に疵のある花嫁なんて一生に一度の大恥だと言って、父は参列しなかった。
ちなみに、私はずっと表に真珠の飾りがついて裏地は肌色という特別なベールで顔を隠していたけれど、皆、心から祝福してくれた。とても親切で、たくさん労わりや励ましを受けた。
世界にはこんなにも優しい人であふれているのだと、涙があふれた。
「さあ、愛する私のレディ・リーヴァ。贈り物だよ」
結婚式の翌朝、彼は私に小箱を渡した。
開けると、それは眼鏡だった。
「好きな色を聞いたら、緑だと言った。オクタヴィアがいつも着ているドレスの色だ。どうか、これで、君自身の愛する色を見つけてほしい」
「……!」
感動して、言葉が出ない。
私は震える手で眼鏡をかけてみた。
彼の輪郭がはっきりして、世界が一変する。
「……凄い……素晴らしいわ……!!」
「当家掛かりつけの医者は優秀なんだ。医療記録の引継ぎの際、君の視力について協議した。そして数回の診察でそれとなく視力を測定し、こういうものが出来上がったわけだ」
「……なんとお礼を言ったらいいか……」
「君をこの手で幸せにする。それが私の幸せなんだ。お礼はキスでいい。笑顔ならもっといい。愛してるよ、エレオノーラ」
そう言って、彼が優しくて長いキスをしてくれる。
すると眼鏡が彼の顔に当たって、どちらともなく小さな笑い声が洩れた。
辛かった事も、悲しかった事も、火傷の痛みも。
すべて忘れてしまうくらい。
世界は美しく、私はとても幸せだった。
幸せに、なったのだ。
「フェルモ様……!」
妹を伴い部屋に入ってくると、フェルモ様が私を抱きしめた。
「可哀相に。辛かっただろう? 遅くなってすまなかった」
「いいえ……いいえ……っ、こうして、来てくださいました……!」
「ああ。オクタヴィアが報せてくれた」
「え?」
彼の愛を信じるよう示唆されたけれど、それは聞いていない。
彼は少し上半身を離すと、自身が深く傷ついたような目をして私の顔を見つめた。包帯に包まれた頭部は、実際よりも重症に感じさせるかもしれない。
「痛むだろう? 私が一生涯、朝昼晩、しっかり看てあげるからね」
「……フェルモ様……」
優しい声に、ぬくもり。
それだけで世界はこんなにも愛で満たされる。
「私で、いいのですか……?」
つい、不安が口に出た。
「当然だ! 君でなくては意味がない。愛している、エレオノーラ」
「フェルモ様……ッ、フェルモ様ぁ……!」
きちんと、言葉を交わさなくてはいけないのに。
私は彼の胸に顔を埋め、咽び泣いていた。
それから、たった、3週間後。
予定より120日も結婚を前倒しにして、彼は私を世界一幸せな花嫁にした。
本当はもっと早めたかったけれど、火傷して日が浅かったため、耐えたらしい。
顔に疵のある花嫁なんて一生に一度の大恥だと言って、父は参列しなかった。
ちなみに、私はずっと表に真珠の飾りがついて裏地は肌色という特別なベールで顔を隠していたけれど、皆、心から祝福してくれた。とても親切で、たくさん労わりや励ましを受けた。
世界にはこんなにも優しい人であふれているのだと、涙があふれた。
「さあ、愛する私のレディ・リーヴァ。贈り物だよ」
結婚式の翌朝、彼は私に小箱を渡した。
開けると、それは眼鏡だった。
「好きな色を聞いたら、緑だと言った。オクタヴィアがいつも着ているドレスの色だ。どうか、これで、君自身の愛する色を見つけてほしい」
「……!」
感動して、言葉が出ない。
私は震える手で眼鏡をかけてみた。
彼の輪郭がはっきりして、世界が一変する。
「……凄い……素晴らしいわ……!!」
「当家掛かりつけの医者は優秀なんだ。医療記録の引継ぎの際、君の視力について協議した。そして数回の診察でそれとなく視力を測定し、こういうものが出来上がったわけだ」
「……なんとお礼を言ったらいいか……」
「君をこの手で幸せにする。それが私の幸せなんだ。お礼はキスでいい。笑顔ならもっといい。愛してるよ、エレオノーラ」
そう言って、彼が優しくて長いキスをしてくれる。
すると眼鏡が彼の顔に当たって、どちらともなく小さな笑い声が洩れた。
辛かった事も、悲しかった事も、火傷の痛みも。
すべて忘れてしまうくらい。
世界は美しく、私はとても幸せだった。
幸せに、なったのだ。
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