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9 身勝手な復縁について

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「それにしても君、随分と偉くなったものだな」

「はあ?」

「ついさっきメイスフィールド伯爵を名前で呼んだろ?」

「え、ええ」

「そういう傲慢さが妻としてどうか、考えた事はないのかい?」

「私は彼の妻じゃないわ」

「そんな事はわかってるさ。まあ、君のように自己中心的な人間にこんな事を言っても無駄だろうけどね」

「喧嘩売ってる?」

「いいや。落胆しているのだよ。君はどう転んでも、はやり私の妻には相応しくないなと思ってね」

「はあっ?」


 いけない。
 激情に流されてはいけない。


「それで? あなたは、わざわざ、妹の結婚式の帰りに、元婚約者を侮辱しに来たわけ?」

「そんなつもりはなかったがね。結果的にそうなったとしたら、君が相変わらずの甘やかされたお子様だったからだ」

「人のせいにするのが上手よね」

「実際、君が撒いた種だろう?」

「そうは思わないけど」

「そういうところだよ。只でさえ我儘だったのに、メイスフィールド伯爵という後ろ盾を得て、ますます自分を特別視するようになっているようだ。だから結婚できないんだよ、アデル」

「あ? 今なんつった?」


 ゾーン公爵夫人に施された教育が、バキバキ剥がれ落ちていく。
 私は拳を握りしめて、エグバート卿を睨んだ。


「まあ、そう怒るものじゃあないよ。君がどれほどどうしようもない令嬢だとしても、こうして迎えに来てあげたのだからね。感謝しなさい」

「……なにを言ってるかわからないわ」

「君は感情的で頭が悪いから、仕方ないか。でも、正直、女は結婚しないと生きていけない生き物だが、男からしてみれば妻はお飾りだ。妻がどんな人間であるかは、実のところあまり関係ないとわかった」

「わかった?」

「ああ。10人も妹を結婚させたからね。結婚のプロだよ」


 この男をどうにかしたい。
 

「それで君は君なりに自分を見つめ直して、反省して、こうして立派な後ろ盾に頼る事にしたのだろう? 君自身には欠点こそあれ、魅力はないからね。まあ多産の家系だし健康だから後継ぎは産めるだろうが。それでもこんな好条件な伯爵の家に住み込んでまでして、まだ結婚していない」

「相手を吟味しているの。もう破棄されたくないから」

「いいや」


 エグバート卿がにやりと笑う。


「君は、私を待っていたんだ。そうだろう?」

「……」


 え? 
 な、なんて?


「図星で言葉も出ないか。お見通しだよ、アデル。なんといっても君を14才から知っている。君は私を待っていた。こんな立派な後見人までつけてね。君にしてはよく努力したよ。見直したと言ってあげてもいい」

「……はい?」

「妹たちも片付いた。さあ、アデル・メリンダ・レイン。結婚しようか」
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