4 / 31
4 いじらしい年下の義姉
私が乳母車を押して部屋を出ると、すぐ赤ん坊を抱いたスージーがついてきた。
兄とどう連絡を取り合う気か知らないけれど、できるだけ引き離し、統率を乱してやるわよ。
「それで、産まれは?」
「ひぎゃあああっ!」
「……え?」
「だから、スージー。あなたの故郷は?」
「んぎゃああああっ!」
しかし泣くわね。
融通の利く口の堅いメイドに、耳栓を頼もう。
「ああっ、大変! おしめです! おしめを変えないと!」
突如、それまでの冷静さというか太々しさが嘘のように、スージーが叫んだ。
それではぐらかしたつもり?
逃げようったって、無駄よ。
お手並み拝見といこうじゃないの!
「ぜひ教えてちょうだい! おしめってどう変えるの!?」
「ひぎゃあっ!」
「いいえ! ソニア様! おしめなんてそんなッ!」
「おんぎゃああっ!」
「ダメよ! あなたの代わりに私がやる日は絶対に来るもの!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
「ソニア様っ!」
「カルミネは限界よっ! おしめを変えて! 今ここでッ!!」
その時、スッと古いメイドが寄ってきて言った。
「臭いません。お嬢様、お腹が空いているのです」
「…………」
「ガッガッガッガッ!!」
もはや、壊れた獣よ。
可愛い顔して、あんよとおててを縦横無尽に打ち出す獣。
「スージー? お乳ですって」
「……年の功ですね。恐れ入りました」
メイドの冷たい視線がスージーに注がれる。
その色は、侮蔑一色。
そうよね。
私じゃなくたって、スージーの正体はわかるのよ。
なんて女。
そして、兄がクソ野郎すぎるわ。
なぜ死んだのよ、お父様。
と、お母様。
「ありがとう」
もう大丈夫だと目配せで報せつつ、礼を告げてメイドを持ち場に返す。
手近な扉を開けて、乳母車を廊下に残してスージーを呼んだ。
実際、母乳を与えるとカルミネは静かになった。そしてゲップをして、スージーの胸元に吐いた。
「着替えてらっしゃい」
スージーは不服そうだったけれど、引き下がった。
ついさっきまでいた事すら知らなかった存在のスージー。
どこで着替えて戻って来るか、考えるだけ無駄というものよね。
「さぁ、お坊ちゃん。お口をふきふきしましょうね」
「だぁ」
乳母車に寝かせる。
口周りを拭き終わると、なんとなく笑ったように見える顔をしてから、カルミネは眠った。
乳母車の前にしゃがみ、改めて眠る甥を見てみる。
「……可愛い」
どんな親から生まれようと関係ない。
可愛くて、美しい命。
本当に兄の子なら、おばちゃんが守ってあげるわ。
「?」
私、今……なんて。
なんて思った?
「……」
どこともなく、数分前にスージーが歩いて行った廊下の先を、じっと見つめた。
スージーが、兄の愛人だったのは、確かだろう。
死を偽装してまで隠した愛人、スージーという女の正体はなんなのか。
「……関係ないわ」
もう、私の息子になったんだもの。
気を取り直し、私は私室に向かって乳母車を押し始めた。
そして、私の部屋の中でぽつんと立ち尽くす義姉と鉢合わせたのだった。
「!」
そうよ。
忘れてはいなかったけれど、赤ん坊の世話が初めてで気を取られて。
なにより深刻な問題は、彼女よ。
私の一才年下で、兄の妻のリヴィエラ。
彼女への非礼は、許されざる罪。
「……ソニア」
か細い声で私を呼び、リヴィエラがふり向いた。
まだあどけなさの残る、可愛らしい、完璧な伯爵夫人。
「あの人から聞きました……」
え、早い。
それとも、もうだいぶ経つ?
赤ん坊の世話って、時が一瞬で過ぎ去るの?
「あなたが、よくない事をなさって、身篭って、婚約を破棄されたって」
「ええ」
どうするの。
リヴィエラは馬鹿じゃないのよ。
「その子が、そうなの……?」
ふらふらっと。
リヴィエラが乳母車の中の赤ん坊に目を据えて、寄って来る。
「ええ、そう……」
とてつもない緊張に耐えていると、リヴィエラはふと笑顔を見せた。
「抱いてもいい?」
それは、赤ん坊へ対する、只の愛情だった。
絶望の中、瞳を輝かせた、たった一つの愛。
私も乳母車を覗き込むと、起きていたので、リヴィエラに抱かせた。下に4人の弟妹がいるリヴィエラは、赤ん坊の抱き方が上手かった。
「可愛い……」
優しい笑顔で言いながら、リヴィエラは大粒の涙を零した。
「リヴィエラ……」
「あの人の子なのね……」
「リヴィエラ、それは」
「いいのよ。だって、あなたは妊娠なんてしていなかったし、赤ちゃんはこんなにすぐ毛が生えないもの」
滂沱の涙を流しながら、微笑みを浮かべたまま、優しくカルミネを抱いたまま、リヴィエラは現実を受け入れていく。
「ごめんなさい」
それしか言えない。
リヴィエラは激しく首を振った。
「いいの! あなたは悪くない。この子も悪くない。わかってる。そうよ、だってこんなに可愛いもの……っ」
ついにリヴィエラの微笑みを悲しみが塗りつぶした。
そして赤ん坊を私に突き出す。
私が抱いた瞬間、カルミネはぐずり出した。
「うぎゅぁ」
「だけど、私、この子になにをしてしまうかわからない……っ!」
「あっ、んぎゃっ、ぶぁ」
「ごめんなさい……っ、あなたを責めたりしない。だけど私、この子には近づけない……私は私がどうなってしまうかわからないの……ソニア、あなたも大変なのに私なんの支えにもなってあげられない……ごめんなさい……っ」
リヴィエラはもう充分すぎるほど混乱していた。
それでも、愛情と善意で私の部屋を訪ねてくれたのだ。
そんな事は、わかっている。
私はぐずるカルミネを乳母車に寝かせ、リヴィエラを抱きしめた。壊れてしまいそうなほど震えている。泣き叫ぶわけでもないのに、とめどない涙を溢れさせて。
「あなたは何も悪くない」
「ごめんなさいっ、私っ、私……ッ!!」
「謝らないで。あなたは、あなただけは、我慢しないで」
次の瞬間。
リヴィエラは私にしがみつき号泣した。
咽び泣き、絶望した。
当然だ。
「リヴィエラ。本当にごめんなさい」
謝る事しかできない。
いくら彼女だけは守ると心に誓っても、それは今、口にしてはいけない。
兄とどう連絡を取り合う気か知らないけれど、できるだけ引き離し、統率を乱してやるわよ。
「それで、産まれは?」
「ひぎゃあああっ!」
「……え?」
「だから、スージー。あなたの故郷は?」
「んぎゃああああっ!」
しかし泣くわね。
融通の利く口の堅いメイドに、耳栓を頼もう。
「ああっ、大変! おしめです! おしめを変えないと!」
突如、それまでの冷静さというか太々しさが嘘のように、スージーが叫んだ。
それではぐらかしたつもり?
逃げようったって、無駄よ。
お手並み拝見といこうじゃないの!
「ぜひ教えてちょうだい! おしめってどう変えるの!?」
「ひぎゃあっ!」
「いいえ! ソニア様! おしめなんてそんなッ!」
「おんぎゃああっ!」
「ダメよ! あなたの代わりに私がやる日は絶対に来るもの!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
「ソニア様っ!」
「カルミネは限界よっ! おしめを変えて! 今ここでッ!!」
その時、スッと古いメイドが寄ってきて言った。
「臭いません。お嬢様、お腹が空いているのです」
「…………」
「ガッガッガッガッ!!」
もはや、壊れた獣よ。
可愛い顔して、あんよとおててを縦横無尽に打ち出す獣。
「スージー? お乳ですって」
「……年の功ですね。恐れ入りました」
メイドの冷たい視線がスージーに注がれる。
その色は、侮蔑一色。
そうよね。
私じゃなくたって、スージーの正体はわかるのよ。
なんて女。
そして、兄がクソ野郎すぎるわ。
なぜ死んだのよ、お父様。
と、お母様。
「ありがとう」
もう大丈夫だと目配せで報せつつ、礼を告げてメイドを持ち場に返す。
手近な扉を開けて、乳母車を廊下に残してスージーを呼んだ。
実際、母乳を与えるとカルミネは静かになった。そしてゲップをして、スージーの胸元に吐いた。
「着替えてらっしゃい」
スージーは不服そうだったけれど、引き下がった。
ついさっきまでいた事すら知らなかった存在のスージー。
どこで着替えて戻って来るか、考えるだけ無駄というものよね。
「さぁ、お坊ちゃん。お口をふきふきしましょうね」
「だぁ」
乳母車に寝かせる。
口周りを拭き終わると、なんとなく笑ったように見える顔をしてから、カルミネは眠った。
乳母車の前にしゃがみ、改めて眠る甥を見てみる。
「……可愛い」
どんな親から生まれようと関係ない。
可愛くて、美しい命。
本当に兄の子なら、おばちゃんが守ってあげるわ。
「?」
私、今……なんて。
なんて思った?
「……」
どこともなく、数分前にスージーが歩いて行った廊下の先を、じっと見つめた。
スージーが、兄の愛人だったのは、確かだろう。
死を偽装してまで隠した愛人、スージーという女の正体はなんなのか。
「……関係ないわ」
もう、私の息子になったんだもの。
気を取り直し、私は私室に向かって乳母車を押し始めた。
そして、私の部屋の中でぽつんと立ち尽くす義姉と鉢合わせたのだった。
「!」
そうよ。
忘れてはいなかったけれど、赤ん坊の世話が初めてで気を取られて。
なにより深刻な問題は、彼女よ。
私の一才年下で、兄の妻のリヴィエラ。
彼女への非礼は、許されざる罪。
「……ソニア」
か細い声で私を呼び、リヴィエラがふり向いた。
まだあどけなさの残る、可愛らしい、完璧な伯爵夫人。
「あの人から聞きました……」
え、早い。
それとも、もうだいぶ経つ?
赤ん坊の世話って、時が一瞬で過ぎ去るの?
「あなたが、よくない事をなさって、身篭って、婚約を破棄されたって」
「ええ」
どうするの。
リヴィエラは馬鹿じゃないのよ。
「その子が、そうなの……?」
ふらふらっと。
リヴィエラが乳母車の中の赤ん坊に目を据えて、寄って来る。
「ええ、そう……」
とてつもない緊張に耐えていると、リヴィエラはふと笑顔を見せた。
「抱いてもいい?」
それは、赤ん坊へ対する、只の愛情だった。
絶望の中、瞳を輝かせた、たった一つの愛。
私も乳母車を覗き込むと、起きていたので、リヴィエラに抱かせた。下に4人の弟妹がいるリヴィエラは、赤ん坊の抱き方が上手かった。
「可愛い……」
優しい笑顔で言いながら、リヴィエラは大粒の涙を零した。
「リヴィエラ……」
「あの人の子なのね……」
「リヴィエラ、それは」
「いいのよ。だって、あなたは妊娠なんてしていなかったし、赤ちゃんはこんなにすぐ毛が生えないもの」
滂沱の涙を流しながら、微笑みを浮かべたまま、優しくカルミネを抱いたまま、リヴィエラは現実を受け入れていく。
「ごめんなさい」
それしか言えない。
リヴィエラは激しく首を振った。
「いいの! あなたは悪くない。この子も悪くない。わかってる。そうよ、だってこんなに可愛いもの……っ」
ついにリヴィエラの微笑みを悲しみが塗りつぶした。
そして赤ん坊を私に突き出す。
私が抱いた瞬間、カルミネはぐずり出した。
「うぎゅぁ」
「だけど、私、この子になにをしてしまうかわからない……っ!」
「あっ、んぎゃっ、ぶぁ」
「ごめんなさい……っ、あなたを責めたりしない。だけど私、この子には近づけない……私は私がどうなってしまうかわからないの……ソニア、あなたも大変なのに私なんの支えにもなってあげられない……ごめんなさい……っ」
リヴィエラはもう充分すぎるほど混乱していた。
それでも、愛情と善意で私の部屋を訪ねてくれたのだ。
そんな事は、わかっている。
私はぐずるカルミネを乳母車に寝かせ、リヴィエラを抱きしめた。壊れてしまいそうなほど震えている。泣き叫ぶわけでもないのに、とめどない涙を溢れさせて。
「あなたは何も悪くない」
「ごめんなさいっ、私っ、私……ッ!!」
「謝らないで。あなたは、あなただけは、我慢しないで」
次の瞬間。
リヴィエラは私にしがみつき号泣した。
咽び泣き、絶望した。
当然だ。
「リヴィエラ。本当にごめんなさい」
謝る事しかできない。
いくら彼女だけは守ると心に誓っても、それは今、口にしてはいけない。
あなたにおすすめの小説
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。
佐藤 美奈
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」
弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。
結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。
それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。
非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
幼馴染と夫の衝撃告白に号泣「僕たちは愛し合っている」王子兄弟の関係に私の入る隙間がない!
佐藤 美奈
恋愛
「僕たちは愛し合っているんだ!」
突然、夫に言われた。アメリアは第一子を出産したばかりなのに……。
アメリア公爵令嬢はレオナルド王太子と結婚して、アメリアは王太子妃になった。
アメリアの幼馴染のウィリアム。アメリアの夫はレオナルド。二人は兄弟王子。
二人は、仲が良い兄弟だと思っていたけど予想以上だった。二人の親密さに、私は入る隙間がなさそうだと思っていたら本当になかったなんて……。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。
婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。
佐藤 美奈
恋愛
クロエ子爵令嬢は婚約者のジャック伯爵令息の実家に食事に招かれお泊りすることになる。
彼とその妹と両親に穏やかな笑顔で迎え入れられて心の中で純粋に喜ぶクロエ。
しかし彼の妹だと思っていたエリザベスが実は家族ではなく幼馴染だった。彼の家族とエリザベスの家族は家も近所で昔から気を許した間柄だと言う。
クロエは彼とエリザベスの恋人のようなあまりの親密な態度に不安な気持ちになり婚約を思いとどまる。
実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。