3 / 94
第1部 〈そして俺は、勇者と魔王を手に入れる〉編
3、最後の賭け。そして禁忌に触れ、俺は高笑いとともに最強に至る……!
しおりを挟む
薄暗い広間の中。
――絶叫し、そして俺は、言葉を失った。
残スキルポイントゼロ。新スキル習得不可能というあまりにも無慈悲な現実に。
そして、現在の保有スキルは、当然ながらかつてプレイヤーだった俺が攻略情報として知っていたとおりの、満遍なくとった各属性、各種類の中級魔法。
プレイヤーの頃の俺なら使い勝手が悪すぎて絶対にとらないバランス型。
まさに器用貧乏ここに極まれりという惨憺たる有様だった。
「ぐぅおおおぉぉっ! ああああぁぁっっ!」
慟哭し、目の前に突きつけられた現実を認められない俺は、逃避するようにガリガリと爪で引っ掻くようにスキルウインドウをスクロールする。
その後半には、驚くべきことに俺が敵方のためか、なんとプレイヤーの決して選択できない敵専用スキルさえもあった。
それも膨大なスキルポイントを必要とするものの、ストーリー上のボスである魔王デスニアより遥かに上の強さを持つ裏ステージのボスたちのみが使用する。
何度もプレイヤーだった頃の俺を全滅させた、理不尽一歩手前のチート級最強最悪スキルの一部さえも。
「おおおあああああぁぁぁっっ!」
決して選択できない、いまは灰色の文字となったそれらを未練がましくなぞりながら、俺は心の底から願い、呪い、そして祈った。
いま、スキルポイントさえあれば……! このチート級最強最悪スキルのうち、たった一つでいい……!
もし、手に入れられれば……! この状況を打開することが……! 勇者たちを蹂躙することが……!
いや、それどころではない……! この前世から愛してやまない〈ダンジョンブレイバー〉の世界に転生したと自覚したその瞬間から、この胸の奥に疼いてやまない、この俺の野望……! そう……! この世界の全てを手に入れ、そしてっ……!
「そうだ……! スキルポイントさえ――スキル、ポイント、さえ……? いや、いや待て……!? さっき、スキルウインドウは確かに開いた……! ゲームと同じように……! ならば――ま、まさかっ!?」
その唯一にして最大最後の可能性に気がついた俺は、バンっ! と一も二もなくいまいた広間から飛び出した。
勢いよく開いた扉の前。
勇者たちを思い思いの武器を持って待ち構えていた居並ぶ色とりどりの髪の目隠れ戦闘メイドたちが一斉に驚愕の声を上げる。
それに構わず、俺は全力で目的地へ向かって走り出した。
「えっ!? じゅ、ジュドさま? こんなときに広間から出て、いったい何を……?」
「ええぇっ!? いけませんっ! ジュドさまっ! ダンジョン内に魔王デスニア陛下の意思とは無関係に勝手に配置される忌々しきその像に触れることは、我ら魔族と魔物、最大の禁忌ぃっ!?」
「ま、魔王デスニア陛下はいまもそのダンジョンマスターとしての権能で視ておられるはずですっ! 必ずや激しいお怒りを買うことにっ!」
「どうか、どうかお考え直しをっ! あ、あ……だ、だめですぅっ!? ジュドさまぁっ!?」
「だまれえぇぇぇっっ! どけえぇぇぇっっ! 俺はっ! 俺は、これでっ! 力をっ! そしてっ! 全てをぉぉぉぉっっ!」
悲鳴に近い制止の声を上げ次々に手を伸ばす色とりどりの髪の戦闘メイドたちを叫びとともに全てふりきり、俺はついにその魔族と魔物最大の禁忌たる聖なる女神像。
――ゲーム中においてのセーブ、そしてスキルリセットポイントに触れる。
「……ふ、ふは、はははははははっ! ふははははっ! はーはっはっはっ!」
――数秒後、唯一無二の最大最後の賭けに勝った俺は思わずこの上ない歓喜の高笑いを上げていた。
目論見どおりに、理不尽一歩手前の絶対的な力。チート級最強最悪スキルの一つをその手にして。
――絶叫し、そして俺は、言葉を失った。
残スキルポイントゼロ。新スキル習得不可能というあまりにも無慈悲な現実に。
そして、現在の保有スキルは、当然ながらかつてプレイヤーだった俺が攻略情報として知っていたとおりの、満遍なくとった各属性、各種類の中級魔法。
プレイヤーの頃の俺なら使い勝手が悪すぎて絶対にとらないバランス型。
まさに器用貧乏ここに極まれりという惨憺たる有様だった。
「ぐぅおおおぉぉっ! ああああぁぁっっ!」
慟哭し、目の前に突きつけられた現実を認められない俺は、逃避するようにガリガリと爪で引っ掻くようにスキルウインドウをスクロールする。
その後半には、驚くべきことに俺が敵方のためか、なんとプレイヤーの決して選択できない敵専用スキルさえもあった。
それも膨大なスキルポイントを必要とするものの、ストーリー上のボスである魔王デスニアより遥かに上の強さを持つ裏ステージのボスたちのみが使用する。
何度もプレイヤーだった頃の俺を全滅させた、理不尽一歩手前のチート級最強最悪スキルの一部さえも。
「おおおあああああぁぁぁっっ!」
決して選択できない、いまは灰色の文字となったそれらを未練がましくなぞりながら、俺は心の底から願い、呪い、そして祈った。
いま、スキルポイントさえあれば……! このチート級最強最悪スキルのうち、たった一つでいい……!
もし、手に入れられれば……! この状況を打開することが……! 勇者たちを蹂躙することが……!
いや、それどころではない……! この前世から愛してやまない〈ダンジョンブレイバー〉の世界に転生したと自覚したその瞬間から、この胸の奥に疼いてやまない、この俺の野望……! そう……! この世界の全てを手に入れ、そしてっ……!
「そうだ……! スキルポイントさえ――スキル、ポイント、さえ……? いや、いや待て……!? さっき、スキルウインドウは確かに開いた……! ゲームと同じように……! ならば――ま、まさかっ!?」
その唯一にして最大最後の可能性に気がついた俺は、バンっ! と一も二もなくいまいた広間から飛び出した。
勢いよく開いた扉の前。
勇者たちを思い思いの武器を持って待ち構えていた居並ぶ色とりどりの髪の目隠れ戦闘メイドたちが一斉に驚愕の声を上げる。
それに構わず、俺は全力で目的地へ向かって走り出した。
「えっ!? じゅ、ジュドさま? こんなときに広間から出て、いったい何を……?」
「ええぇっ!? いけませんっ! ジュドさまっ! ダンジョン内に魔王デスニア陛下の意思とは無関係に勝手に配置される忌々しきその像に触れることは、我ら魔族と魔物、最大の禁忌ぃっ!?」
「ま、魔王デスニア陛下はいまもそのダンジョンマスターとしての権能で視ておられるはずですっ! 必ずや激しいお怒りを買うことにっ!」
「どうか、どうかお考え直しをっ! あ、あ……だ、だめですぅっ!? ジュドさまぁっ!?」
「だまれえぇぇぇっっ! どけえぇぇぇっっ! 俺はっ! 俺は、これでっ! 力をっ! そしてっ! 全てをぉぉぉぉっっ!」
悲鳴に近い制止の声を上げ次々に手を伸ばす色とりどりの髪の戦闘メイドたちを叫びとともに全てふりきり、俺はついにその魔族と魔物最大の禁忌たる聖なる女神像。
――ゲーム中においてのセーブ、そしてスキルリセットポイントに触れる。
「……ふ、ふは、はははははははっ! ふははははっ! はーはっはっはっ!」
――数秒後、唯一無二の最大最後の賭けに勝った俺は思わずこの上ない歓喜の高笑いを上げていた。
目論見どおりに、理不尽一歩手前の絶対的な力。チート級最強最悪スキルの一つをその手にして。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる