四天王最弱の闇の貴公子に転生した俺は器用貧乏を返上し、無限の手札と敵専用チート級最強最悪スキルで高笑いと共に全てを蹂躙し屈服させ覇道を征く!

ミオニチ

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第2部 〈世界制覇〉編

45、甘い毒の果実と真なる恭順。――我らが命運は偉大なる魔王陛下と共に。

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「「だ、ダンジョン……!? ま、魔王殿……! そ、それは一体どのような意図を持って……!? わ、悪いようにしないとは、一体……!?」」

 玉座に座る俺の目の前に並ぶ、白いひげを貯えた老人と無骨な壮年。

 跪くトーリラ王国とフレト王国の王たちは、そっくりなタイミング、そっくりな表情で等しく身を強張らせた。

 ――くく。先ほどから思っていたが、居並ぶ二人がこれほどそっくりな反応をとってくれるのは、やはり面白いな。

 よほどこの二人、思考やその早さが似通っていると見える。

 なるほど。両国間の争いが長年決着がつかなかったわけだ。

 ――俺は小さく頷き、得心する。

 兵士の質や練度、一度に動員する数に加え、その決定権を握る王同士の資質や能力まで似通っているのだから。

 くく……! ならばきっと、いまから話すこの俺の提案の意味と価値にも等しく気がつき、そして二人ともいち早く飛びついてくれることだろう。

 なぜなら、それはこの二人の王が望んでやまない、両国を救う手段なのだから。

「ふ。まあ待て。その説明の前に、まず情報の擦り合わせから始めよう。まさかとは思うが、俺の現状認識が誤っていては困るからな」

 玉座に座り頬杖をつくその俺の言葉に、両国の王は揃って恭しく頷いた。

 俺は「結構」と前置きしてから、あらためて両国について知っていることを語り出す。

「トーリラ王国とフレト王国。遠く遡れば元は同じ一国から分かたれただけあって、両国はあらゆる面で非常に似通っている。例えば、国土。食糧生産の大半はこの両国の境にある雄大な湖の周囲の肥沃な土地に集中。ゆえに、両国は少しでもその支配地域を増やそうと土地の取り合いを続けてきた。そして、両国とも国土の三分の一程度を占める北の山岳地帯は容易く開発もできない硬い岩盤に覆われている。……そう。個々が脆弱なではな」

「「なっ……!? ま、まさかっ……!?」

「くく。そうだ。この俺の魔王の権能をもって両国の北部にダンジョン、つまり我が魔王国エンデの直轄地を創った暁には、俺はそこから両国に労働力として魔物を貸与しよう。そうだな。ゴーレムあたりが適任だろう。硬い石材はそれだけでもそれなりに建材などに価値があるし、あれほどの広さだ。ふ。掘り進めれば、中には貴重な鉱物、あるいは魔石を算出する鉱山があってもおかしくないのではないか?」

 俺の想像どおりに、並ぶ二人の王は揃って俺のその提案を吟味し、その意味と価値の高さに揃って気がつき嘆息する。

「そしてその代わりに、両国には協力してもらいたい。我が大願にして、野望。魔族と魔物、そして人間。この世界に生きる全てのものたちが共存共栄する真に平和な理想世界実現のために! この俺が征く覇道に!」

 居並ぶ両国の王が揃って硬直する。

 その胸中に渦巻くは、「「もしかしたら自分たちは想像していた以上の事態、その渦中に巻きこまれたのかもしれない」」というある種の後悔にも似た思いだろうか。

 だから俺は、殊更に口の端をつり上げ弧を描く――前世にて、甘い毒を含んだ囁きで人の心を惑わすと言い伝えられる悪魔のように。

「くく。何やら迷っているようだが、いまさらだろう? 理由はどうあれ、貴君らはすでにこの魔王ジュドの手をとったのだ。もうその道を逆には戻れはしない。ならば、どうせなら甘い毒の果実を存分に、それこそその果汁の付いた皿に至るまで貪欲に喰らったほうが得だとは思わないか?」

「…………ほっほ。そうですな」

「…………そうであるな」

「「我らが宗主国、魔王国エンデの魔王ジュドのご提案、謹んで受けさせていただく。そして、その御身が征く覇道を支持し、最大限の支援をさせていただくことを。我らトーリラ王国とフレト王国の命運は、魔王国エンデと、魔王ジュド陛下と共に!」」

 そして、両国の王はもう一度恭しく、今度は上辺ではなく、心からの忠誠を俺に誓い、頭を下げる。

 こうして、この俺が設立した魔王国エンデによる相争いあっていた二つの小国、トーリラ王国とフレト王国を属国とする恭順条約は真に成立した。

 ――そしてそれは、その隣国。世界に名だたる三大国の一つ、勇者輩出国クインブレン王国に手を伸ばすための布石でもあった。
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