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家庭の事情がありまして3
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「アンリ、ごめんなさいね。私てっきりクロード様と昼休みにイチャイチャする場所を探していると思って……そうよね。昼休みに鍵を閉めればここでイチャイチャできるのに……私ったら――」
部屋に戻ったらビアンカに謝られた。いや、そうじゃない。誤解している。
「ビアンカさん、俺本当に違うから。悪いけど職場でそういうの困るんだ。問題起こして辞職とか絶対に無理」
「辞職になんてならないわよ。皆職場結婚とかしてるでしょ。とくにあなたがいた財務は部署は違っても城婚が多いって有名だし」
城婚ていうのか……。そりゃあの上司だ。先輩が結婚したから次は俺の世代だと張り切ってたし、あそこにいたら年内に結婚てこともあっただろう。エドウィン長官はマッチングが天才的だと有名だった。どんなやつにもぴったりの相手を見つけてくるのだ。エドウィン長官が仲人をして別れた人ってほとんどいないというし。そうか、財務ではなくなったとはいえ、俺は一応貸しがある。
「エドウィン長官に頼んだら結婚相手も見つかるかも!」
妹の結婚相手、エドウィン長官なら見つけられるかも知れない!
「結婚相手? アンリ?」
「ありがとう! ビアンカさん、感謝します。……なんで今まで気づかなかったんだろう。ちょっと変わってても……。あ、仕事始めましょう。お昼からもよろしくお願いします」
「あ……そうね。なんだかとてつもなく失敗したような気がするけれど、仕事の時間ですものね。今日は残業があるって聞いてるかしら?」
「いえ、聞いてません」
「とりあえず来週にあるリン国の大使との会談に向けて勉強しましょう。会談ではあなたは記録係になると思うわ」
「はい、よろしくお願いします」
記録係は財務でもやったことがあるけれど、俺が知るものと確実に雰囲気が違うだろう。ミスしないようにしないと。
「そんな肩肘はらなくていいわ。クロード様がいれば大丈夫」
「そうなんですか?」
「そうなのよ。でも大使以外は私達が相手をしないとね」
相手といっても仕事だから何があるかわからない。もう一度人物の確認をして……。そうだ、前回の会議の記録を見せてもらおう。
「ビアンカさん、前回の会議の記録みてもいいですよね?」
「……いいけど、多分あてにならないわよ」
「でも雰囲気だけでも知っておきたいので……」
「止めないけど、無駄だとだけ言っておくわよ」
ビアンカさんはそう不思議な忠告をしてくれた。
「無駄ですか……?」
フフッと笑ってビアンカさんは仕事を始めた。朝、俺が仕分けてクロードが目を通した分を向こうの部屋の外務の事務官達に届けていく。更に上のサインがいるものはビアンカさんが外務長官に届けるのだ。
「クロード様が戻ってきたら仕事しろって言い聞かせてね。本当にアンリがいてくれて助かるわ」
クロードは部屋にいないことも多い。外務の仕事だけでなく、王族からお茶に誘われたり、何をしているのかわらかないがうろうろしていることも多い。
「なるほど。リン国の大使は厳しい方のようだな。要求に対してうちの外交政務局は大変だったみたいだな。結局長官が出てきたのか。長官てクロードの……」
「うん、私の父だよ」
「クロード! 様」
「ふふっ、記録で勉強してえらいね」
「俺、外務は本当に門外漢なんだ。だから迷惑掛けたくないし……じゃなくて……。仕事ですから」
思わず本音を漏らしてしまった。どうしてもクロードと話していると余計なことを言ってしまう。
「大丈夫。アンリみたいに可愛い子は笑ってるだけで問題ないよ」
「そんな馬鹿な。可愛いとか目がおかしいし、頭悪いだろうそれ」
「所詮人と人ってことだよ。嫌いな顔があるとつい邪険にしてしまったりするでしょ」
大人になれ。そんなの外交官じゃない。
「ビアンカさんから伝言です。『仕事しろ』以上です」
「ハハッ、さすがビアンカ、アンリの使い方をよくわかってるね」
「そこはしみじみするところじゃない!」
ガサゴソとクロードは抱えてきた書類を俺の机に置いた。
「面倒だけど、中身を確認して仕分けてくれる?」
パラッとめくると、数字が並んでいる。どうやら帳簿の写しらしい。
「はい。承りました」
「そっちの机でやって、取り扱いは厳重で」
数字や店の名前、名前の略らしきもの。面白そうだ。
「これか残業って言ってたのは」
「ビアンカから聞いたの?」
「残業って聞いてるかって聞かれました」
「ごめんね、遅くなると思う」
申し訳なさそうな顔には悪いが、残業代もありがたい。
「問題ありません」
「問題大ありだよ。はぁ、我慢できないよ」
書類をめくりながら相づちを打つ。どうせつまらないことに違いない。
「何がですか?」
「アンリと二人っきりで暗闇の中帰るんだよ。フフッ、楽しみだね」
「俺は寮なので――」
やっぱりだ。仕事中はやめろって言ってるのに。
「寮に招待してくれるの?」
「するわけないだろ、馬鹿。仕事しろ!」
ドアを閉めてて良かった。思わず叫んでしまってから、後悔する。
こんな風に相手をするから遊ばれるのだ。俺はクロードのことを犬と思っているが、俺の方こそ小型のキャンキャン吠える犬みたいなものなのだろう。
そう思うと悲しいという感情が湧くよりも先に納得できてしまった。
ちゃんとケジメをつけないといけない、いつまでも気がついたら抱かれてたなんて状況に甘んじていてはいけないのだ。
俺が集中してすぐに、クロードは静かに仕事を始めた。ペンの音と書類をめくる音だけが部屋に響いていた。
部屋に戻ったらビアンカに謝られた。いや、そうじゃない。誤解している。
「ビアンカさん、俺本当に違うから。悪いけど職場でそういうの困るんだ。問題起こして辞職とか絶対に無理」
「辞職になんてならないわよ。皆職場結婚とかしてるでしょ。とくにあなたがいた財務は部署は違っても城婚が多いって有名だし」
城婚ていうのか……。そりゃあの上司だ。先輩が結婚したから次は俺の世代だと張り切ってたし、あそこにいたら年内に結婚てこともあっただろう。エドウィン長官はマッチングが天才的だと有名だった。どんなやつにもぴったりの相手を見つけてくるのだ。エドウィン長官が仲人をして別れた人ってほとんどいないというし。そうか、財務ではなくなったとはいえ、俺は一応貸しがある。
「エドウィン長官に頼んだら結婚相手も見つかるかも!」
妹の結婚相手、エドウィン長官なら見つけられるかも知れない!
「結婚相手? アンリ?」
「ありがとう! ビアンカさん、感謝します。……なんで今まで気づかなかったんだろう。ちょっと変わってても……。あ、仕事始めましょう。お昼からもよろしくお願いします」
「あ……そうね。なんだかとてつもなく失敗したような気がするけれど、仕事の時間ですものね。今日は残業があるって聞いてるかしら?」
「いえ、聞いてません」
「とりあえず来週にあるリン国の大使との会談に向けて勉強しましょう。会談ではあなたは記録係になると思うわ」
「はい、よろしくお願いします」
記録係は財務でもやったことがあるけれど、俺が知るものと確実に雰囲気が違うだろう。ミスしないようにしないと。
「そんな肩肘はらなくていいわ。クロード様がいれば大丈夫」
「そうなんですか?」
「そうなのよ。でも大使以外は私達が相手をしないとね」
相手といっても仕事だから何があるかわからない。もう一度人物の確認をして……。そうだ、前回の会議の記録を見せてもらおう。
「ビアンカさん、前回の会議の記録みてもいいですよね?」
「……いいけど、多分あてにならないわよ」
「でも雰囲気だけでも知っておきたいので……」
「止めないけど、無駄だとだけ言っておくわよ」
ビアンカさんはそう不思議な忠告をしてくれた。
「無駄ですか……?」
フフッと笑ってビアンカさんは仕事を始めた。朝、俺が仕分けてクロードが目を通した分を向こうの部屋の外務の事務官達に届けていく。更に上のサインがいるものはビアンカさんが外務長官に届けるのだ。
「クロード様が戻ってきたら仕事しろって言い聞かせてね。本当にアンリがいてくれて助かるわ」
クロードは部屋にいないことも多い。外務の仕事だけでなく、王族からお茶に誘われたり、何をしているのかわらかないがうろうろしていることも多い。
「なるほど。リン国の大使は厳しい方のようだな。要求に対してうちの外交政務局は大変だったみたいだな。結局長官が出てきたのか。長官てクロードの……」
「うん、私の父だよ」
「クロード! 様」
「ふふっ、記録で勉強してえらいね」
「俺、外務は本当に門外漢なんだ。だから迷惑掛けたくないし……じゃなくて……。仕事ですから」
思わず本音を漏らしてしまった。どうしてもクロードと話していると余計なことを言ってしまう。
「大丈夫。アンリみたいに可愛い子は笑ってるだけで問題ないよ」
「そんな馬鹿な。可愛いとか目がおかしいし、頭悪いだろうそれ」
「所詮人と人ってことだよ。嫌いな顔があるとつい邪険にしてしまったりするでしょ」
大人になれ。そんなの外交官じゃない。
「ビアンカさんから伝言です。『仕事しろ』以上です」
「ハハッ、さすがビアンカ、アンリの使い方をよくわかってるね」
「そこはしみじみするところじゃない!」
ガサゴソとクロードは抱えてきた書類を俺の机に置いた。
「面倒だけど、中身を確認して仕分けてくれる?」
パラッとめくると、数字が並んでいる。どうやら帳簿の写しらしい。
「はい。承りました」
「そっちの机でやって、取り扱いは厳重で」
数字や店の名前、名前の略らしきもの。面白そうだ。
「これか残業って言ってたのは」
「ビアンカから聞いたの?」
「残業って聞いてるかって聞かれました」
「ごめんね、遅くなると思う」
申し訳なさそうな顔には悪いが、残業代もありがたい。
「問題ありません」
「問題大ありだよ。はぁ、我慢できないよ」
書類をめくりながら相づちを打つ。どうせつまらないことに違いない。
「何がですか?」
「アンリと二人っきりで暗闇の中帰るんだよ。フフッ、楽しみだね」
「俺は寮なので――」
やっぱりだ。仕事中はやめろって言ってるのに。
「寮に招待してくれるの?」
「するわけないだろ、馬鹿。仕事しろ!」
ドアを閉めてて良かった。思わず叫んでしまってから、後悔する。
こんな風に相手をするから遊ばれるのだ。俺はクロードのことを犬と思っているが、俺の方こそ小型のキャンキャン吠える犬みたいなものなのだろう。
そう思うと悲しいという感情が湧くよりも先に納得できてしまった。
ちゃんとケジメをつけないといけない、いつまでも気がついたら抱かれてたなんて状況に甘んじていてはいけないのだ。
俺が集中してすぐに、クロードは静かに仕事を始めた。ペンの音と書類をめくる音だけが部屋に響いていた。
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