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恋してる 2
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その日は本当に忙しかった。騎士団も国の中枢も巻き込んでリン国公使に賄賂を渡していた商家を取り締まった。名を聞くだけでわかる商家もあった。姉二人の婚家を心配したが、どうやら関わっていなかったらしくホッと胸を撫でおろす。
リン国の大使館もこれに併せて国から人を呼び寄せていたようで、シン公使は王国反逆罪に問われるということだった。
「しばらく大変そうだな」
何とか時間を工面して、食事にありつけた。外務のどの部署もみんな慌ただしく動いている。
「ここまで腐ってると思っていなかったが……」
リン国のことをよく知るクロードも唸る。
「食事の差し入れ助かりました」
「いや、今日はどこも忙しいのはわかっていたからな」
ブランカのお礼は外務全体の気持ちだ。クロードはホテルに頼んで摘まんで食べられるものを大量に注文していて、それを外務の各部署に差し入れたのだ。
もちろん俺が食べてるサンドウィッチもそうだ。
「俺、食べるのと寝るのは人間が頑張れる最低の条件だと思うんですよ」
「三大欲求の二つだからね」
「後一つなんだっけ……」
「性欲だよ」
「……別になくてもいい――」
それほど重要なことだろうか。それを三つ目に指定した人はどんな人だ?
「アンリは子爵家の跡継ぎでしょう? 大事なことじゃないの?」
そうか、子孫を残すっていう意味だったのかと気づいて少し恥ずかしい。俺も随分エッチな頭になったものだ。
「まぁ、うちには妹がいるので最悪婿をとればいいので……。姉の子供達に継がせてもいいですし」
結婚相手が見つからないなんて父親には言いにくいが、正直この部署にいるかぎり他の女性や男性に目がいくわけがない。好きとか好きじゃないとかいう以前の問題だ。いや、相手にされるされないか……。
「そうなのね。良かったわ」
「良かったんですか?」
「ええ」
満面の笑みが怖い。聞くのは止めて食事の続きをした。俺がもてないのが楽しいのか、クロードも嬉しそうに俺を見ている。
「……何とか帰れそうかな」
実際に取り調べているのも家を差し押さえているのも、商店を立ち入り禁止にしているのも違う部署だが、全ての書類が回ってくることでさすがのクロードも疲れが見えた。
俺は昼間でゆっくりしていたのでそれほどでもないが、さすがに目の限界だ。
「ああ、帰ろうぜ」
「アンリの部屋に泊まってもいい?」
「駄目、お前の部屋も城にあるだろう。侯爵の子息なんだから」
俺の官舎とは違って、侯爵家専用の部屋があるはずだ。そっちのほうが絶対いい。硬くて狭い寝台に男二人くっついて寝るのは明日の為によくない。
「アンリが一緒に寝てくれるならいいけど……」
「なんで俺が!」
「業務って聞いてない? こういうところもヤバいんだよ。部屋に戻って寝ようとしたら寝台に女が裸で……」
「ギャー! 幽霊の話かよ!」
こんな夜中に聞く話じゃない。
「アンリって本当に可愛いよね。違うよ、生身だから怖いんだよ」
「ビアンカさんが言ってたやつか……。それなら仕方ないな」
思い出して頷いた。
部屋は少し遠かったけれど、城の中にあった。いい部屋だということはわかる。内装は各家の持ち込みだから、センスよりも歴史とか財力とかをアピールするようだ。
「俺はソファで寝る」
部屋には寝台が一個しかなかった。夜も更けてから使うと言ったからしかたない。
「一緒に眠ればいいじゃないか。酔ってないんだからそんなに警戒しなくていいよ」
そうか、あれは双方が酔っていたから起こった間違いだったのか。それなら大丈夫だろう。
「お風呂は入る?」
「もう眠いから明日の朝入りたい」
「そうだね、私も――」
「おやすみなさい」
「おやすみ、アンリ」
そう言った。寝たはずだったのに!
「ン……ア……ッ!」
パンパン! って何かを打ち付ける音が聞こえた。後ろから。
「アッ! だめっ、や……どうして――」
グチュって水音が上がる。
「アンリ!」
「あ、ああっ!」
膝とおでこを寝台につけて、後背位で腕を後ろに引っ張られている。
「クロード! アゥ!」
「達くよ」
律儀な男はそう告げて俺の中を満たした。ガクガクと震えるのは後ろで達ったからだ。前も達きたいと言えば、俺の首を噛みながら扱いてくれた。何度か刺激を受ければ、待ってましたとばかりに精液が飛んだ。
訳がわからない。
「酒も飲んでないのに何で抱かれてるの?」
「……後遺症だと思う。何度もうなされてて、抱きしめてたら……『抱いて』って言われたんだ」
ヒュッと喉がなった。
「もう一緒に寝ない――」
「アンリ! すまない」
謝る必要なんてないんだ。
俺は夢を見てた。リオナを追いかけるクロードの前に立ち塞がって、『抱いて』って言ったんだ。駄目だ、そのうち好きだとか、愛してるなんて言ってしまうかもしれない。寝言で告白してしまうかもしれないと思うと恐ろしくてしかたなかった。
心配してくれるクロードには悪いけど、俺は自分の心が傷つくのが怖かった。
リン国の大使館もこれに併せて国から人を呼び寄せていたようで、シン公使は王国反逆罪に問われるということだった。
「しばらく大変そうだな」
何とか時間を工面して、食事にありつけた。外務のどの部署もみんな慌ただしく動いている。
「ここまで腐ってると思っていなかったが……」
リン国のことをよく知るクロードも唸る。
「食事の差し入れ助かりました」
「いや、今日はどこも忙しいのはわかっていたからな」
ブランカのお礼は外務全体の気持ちだ。クロードはホテルに頼んで摘まんで食べられるものを大量に注文していて、それを外務の各部署に差し入れたのだ。
もちろん俺が食べてるサンドウィッチもそうだ。
「俺、食べるのと寝るのは人間が頑張れる最低の条件だと思うんですよ」
「三大欲求の二つだからね」
「後一つなんだっけ……」
「性欲だよ」
「……別になくてもいい――」
それほど重要なことだろうか。それを三つ目に指定した人はどんな人だ?
「アンリは子爵家の跡継ぎでしょう? 大事なことじゃないの?」
そうか、子孫を残すっていう意味だったのかと気づいて少し恥ずかしい。俺も随分エッチな頭になったものだ。
「まぁ、うちには妹がいるので最悪婿をとればいいので……。姉の子供達に継がせてもいいですし」
結婚相手が見つからないなんて父親には言いにくいが、正直この部署にいるかぎり他の女性や男性に目がいくわけがない。好きとか好きじゃないとかいう以前の問題だ。いや、相手にされるされないか……。
「そうなのね。良かったわ」
「良かったんですか?」
「ええ」
満面の笑みが怖い。聞くのは止めて食事の続きをした。俺がもてないのが楽しいのか、クロードも嬉しそうに俺を見ている。
「……何とか帰れそうかな」
実際に取り調べているのも家を差し押さえているのも、商店を立ち入り禁止にしているのも違う部署だが、全ての書類が回ってくることでさすがのクロードも疲れが見えた。
俺は昼間でゆっくりしていたのでそれほどでもないが、さすがに目の限界だ。
「ああ、帰ろうぜ」
「アンリの部屋に泊まってもいい?」
「駄目、お前の部屋も城にあるだろう。侯爵の子息なんだから」
俺の官舎とは違って、侯爵家専用の部屋があるはずだ。そっちのほうが絶対いい。硬くて狭い寝台に男二人くっついて寝るのは明日の為によくない。
「アンリが一緒に寝てくれるならいいけど……」
「なんで俺が!」
「業務って聞いてない? こういうところもヤバいんだよ。部屋に戻って寝ようとしたら寝台に女が裸で……」
「ギャー! 幽霊の話かよ!」
こんな夜中に聞く話じゃない。
「アンリって本当に可愛いよね。違うよ、生身だから怖いんだよ」
「ビアンカさんが言ってたやつか……。それなら仕方ないな」
思い出して頷いた。
部屋は少し遠かったけれど、城の中にあった。いい部屋だということはわかる。内装は各家の持ち込みだから、センスよりも歴史とか財力とかをアピールするようだ。
「俺はソファで寝る」
部屋には寝台が一個しかなかった。夜も更けてから使うと言ったからしかたない。
「一緒に眠ればいいじゃないか。酔ってないんだからそんなに警戒しなくていいよ」
そうか、あれは双方が酔っていたから起こった間違いだったのか。それなら大丈夫だろう。
「お風呂は入る?」
「もう眠いから明日の朝入りたい」
「そうだね、私も――」
「おやすみなさい」
「おやすみ、アンリ」
そう言った。寝たはずだったのに!
「ン……ア……ッ!」
パンパン! って何かを打ち付ける音が聞こえた。後ろから。
「アッ! だめっ、や……どうして――」
グチュって水音が上がる。
「アンリ!」
「あ、ああっ!」
膝とおでこを寝台につけて、後背位で腕を後ろに引っ張られている。
「クロード! アゥ!」
「達くよ」
律儀な男はそう告げて俺の中を満たした。ガクガクと震えるのは後ろで達ったからだ。前も達きたいと言えば、俺の首を噛みながら扱いてくれた。何度か刺激を受ければ、待ってましたとばかりに精液が飛んだ。
訳がわからない。
「酒も飲んでないのに何で抱かれてるの?」
「……後遺症だと思う。何度もうなされてて、抱きしめてたら……『抱いて』って言われたんだ」
ヒュッと喉がなった。
「もう一緒に寝ない――」
「アンリ! すまない」
謝る必要なんてないんだ。
俺は夢を見てた。リオナを追いかけるクロードの前に立ち塞がって、『抱いて』って言ったんだ。駄目だ、そのうち好きだとか、愛してるなんて言ってしまうかもしれない。寝言で告白してしまうかもしれないと思うと恐ろしくてしかたなかった。
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