憧れの先輩の結婚式からお持ち帰りされました

東院さち

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まさか 2

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 期待して――る、身体が。あんな酷い抱かれ方したのに。

「セックスフレンド、だろ。俺たち。それとも振られ友達か……?」

 振られた者同士、傷をなめ合っただけ。俺は先輩に。クロードはレオナに。誤算は、俺がクロードを好きになってしまったこと。

「アンリ……っ」

 ギュッと抱きしめられて、苦しい。でもクロードの方が苦しそうな声だった。

「聞かなかったことにしてくれよ、俺の言葉。いいんだ、セフレでさ」
「どうして――?」
「どうしてって――、お前はレオナに惚れてるんだろ! 侯爵家の跡継ぎのお前が本気を見せたら……きっとレオナだって……」
「アンリ……、愛してる」

 頬を撫でられて、泣いてたことに気づいた。

「いいんだ、嘘、吐かなくて……」

 なだめるような、労わるようなキスをされた。

「信じてもらえないのは罰、だな……」

 苦笑を漏らし、クロードは俺の涙を拭いた。

「仕事、いかなきゃ。だろ?」
「ああ、そうだな。……週末、家に招待したい。その時、もう一度話そう」

 家ってことはいつものホテルだろう。俺の提案を受け入れてもらえたようでホッとした。

「でも週末は……」
「私から言っておくよ」

 あんな恥ずかしい練習をしたけれど、先輩の相手をしなくていいんだと思ったら力が抜けた。やっぱり俺には無理だった。

「うん……」
「ご飯食べに行こう」

 クロードは俺の手を握り、行こうと誘う。

「ん、うん……」

 離してくれない手のぬくもりに戸惑いながら、頷いた。
 朝は寮の食事ではなく、城にあるカフェのオシャレなやつだった。

「ここの珈琲は私の好物なんだ。どう?」
「あ~何かちょっと酸味がある?」

 俺に珈琲の違いはわからない。でも美味しいとは思う。ミルクと砂糖を沢山入れたときの、店員の残念なものをみる視線だけが痛かったけど。

「アンリの舌はお子様だけど敏感だよね」
「何? 朝からやめろよ」

 ククッとクロードが腹を押さえて俯いた。

「そうじゃない。味がわかるって言いたいんだよ」
「そうならそう言え。また朝から盛ってんのかと思った。というか、その味がわかるって台詞ここの店員に言ったら爆笑されるぞ」

 クロードは隙を見せたら駄目なんだ。

「そうかな。舌が敏感過ぎるから苦いものが苦手なんじゃないの?」
「辛いのも苦手なんだ」
「覚えておくよ」

 何も足さないで飲めるクロードを店員達も憧れの目で見てる。うんうん、うちのクロは凄いんだぞ、ナニが。しまった、俺が盛っててどうするんだ。

「このパンも美味しい」
「そうだね。朝は一人で食べることが多かったけれど、好きな人と一緒に食べるとこんなに美味しく感じるものなんだね」
「大丈夫か? 疲れてるんじゃないか?」

 思わず心配してしまった。さっきセフレ宣言したばかりだというのに、好きな人とか言うなんて――。あ、そっか。クロードが人を褒めるのは通常モードなんだろう。今までは、期待させてはいけないから控えていたんだ。
 そう思ったら気にならなくなった。
 パンはもっちりしてて表面の焼いたところだけサクサクしてる。載ってる玉子がトロトロでたまらない。

「心配してくれてありがとう。アンリは優しいね」

 ブッ! と思わず吹いてしまった。カフェのバルコニーは人が少なめだとは言え、いないわけじゃないのだ。

「静かに食べてもらっていいですか?」

 それだけお願いした。モグモグ、美味しい。

 

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