攻略対象に転生した俺が何故か溺愛されています

東院さち

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45 再会

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 卒業式の次の日には国を飛び出していた。
 アルフォンスに誤解させるように噂を蒔いてすぐに、姿や魔力を感知させない魔法をケヴィンに教えてもらった。ミリアも同じことができるが、ミリアの力は女神様に特別もらったものなので、俺には理解できなかった。ケヴィンの方は元々攻略対象として持っていた魔力なので魔石さえあれば使えるようだ。もっとも、魔石というものは簡単に他人に渡せるものじゃない。それを使って犯罪でも起こされれば完全にアウトだ。それこそ結婚相手に渡すくらいじゃないと譲れない。
 ケヴィンに借りができたが、それも縁だなと思う。

「全く見えないな……。簡単に暗殺されそうで護衛騎士としては看過できないんだが」
「……黙ってろ」

 ディアハルトは、天井を仰いでため息を吐いた。

「この先がアルフォンス様の部屋だ。今の時間、他の者はいないと思うが」

 アルフォンスの通っているレジェンド魔法学園は二十歳が卒業で、あと一年残っている。アルフォンスはあと一年ここにいるつもりなのだろう。それはわかっていても、聖女とイベントが進むのを黙ってみていられなかった。
 俺は後続作についてはほとんど知らないが、澪が数々の乙女ゲームをやりこんできただけあって、仕組みはわかっている。本人にその気はなくても、好感度は上がっていくものなのだ。
 廊下から玄関にあたる部屋に入る瞬間、魔力感知の魔法に気づいた。
 
「気づかれないのか……」

 ディアハルトは俺が魔力感知にひっかかればいいと思っていたらしい。気持ちはわからないでもないが。

「行くぞ」

 コンコンと扉を叩き、アルフォンスの私室に入ると寝台にこんもりとした人型があった。寝るにしては早い時間だ。まだ夕方なのにずいぶん気楽な生活を送っているんだなとムカついた。

「帰ってきたのか。どうだった?」
「アルフォンス様、ただいまもどりました。噂は本当のようです。ライファーでした」

 あらかじめ決めていたセリフをディアハルトがしれっとした顔で告げる。

「ディアハルト……、私はどうすればいい」

 起き上がったアルフォンスは以前のアルフォンスとは少し違っていた。
 背中まで伸びた赤い髪もそうだが、鍛えられた身体は以前より一回りほど大きい。それなのに泣いていたのか目の周りが真っ赤だった。
 そりゃあ、寝台から出られないわけだ。そう思ったら、わずかに残っていた疑心暗鬼がスッと煙のように消え失せた。

「帰国して、待った! と言えばいいでしょう」
「帰れるわけがないだろう! こんな……こんな私ではサイラスに呆れられる——。心を鍛えるには身体を鍛えるのが一番だというから鍛えたというのに——」

 脳筋! 魔法王国は研究者タイプが多いイメージだったのに違ったようだ。

「サイラスに何も言わないまま、ここでグジグジしているつもりですか?」
「サイラスに、会いたい……。でも会ったら、さようならって言われる。会えない……」

 前世で見た少女漫画のヒロインかと思った。しかも古いタイプのやつだ。

「サイラスに花を渡そうとしましたが、断られました」
「……ライファーに義理立てか」

 責めるような声音に、俺はギュッと拳を握った。

「誰が……誰に義理を立てるだと——」

 いないはずの俺の声にビクッとアルフォンスの身体が震え、いつでも応戦できるように魔法が展開される。その魔力の濃度に、アルフォンスが帰ってこれなかった理由がなんとなくわかった。
 アルフォンスの魔力は離れたとき、これほど濃くはなかった。ずっと付けていた髪留めの魔石のせいか、アルフォンスのレベルが高くなっていることに容易に気づけた。

「ディアハルト、外へ」
「ああ、手加減してやってくれ」

 俺が頼むと、ディアハルトは手を振って出て行った。
 護衛騎士にあるまじきセリフだが、俺の声だと気づいたのかアルフォンスが俺に向かって手を伸ばす。その手に手を絡めると、俺の身体も気配も戻ってきたのがわかる。適正がなかったので初歩しか使えなかったから触れると解けるのだ。いや、加護もない人間が成功すること自体、これも女神様の祝福(ミリアへのだが)だろうなと思う。

「サイラス……」

 驚きと、なつかしさの混じったアルフォンスの声。俺は絡めた手ごと倒れこみ、寝台へとアルフォンスを押し倒した。

「……アル、どういうことですか? ずいぶん魔力が凝縮されていますね」

 ライファーに講義してもらった時。あまりレベルを上げると俺の魔力核が壊れるとか、気が触れるとか説明を受けたはずなのに。だからこそ、知らない間に上がってしまったアルフォンスは俺の前に姿をあらわせなかったのだとわかる。
 にっこりと微笑みながら、俺は倒したアルフォンスの腹に座りこみ、アルフォンスの顔の横に手をついた。最近癖になっているアルカイックスマイルを浮かべるとアルフォンスはチラチラと目線を外しては見つめて、俺の様子を伺う。
 覆いかぶさるようにして、俺はアルフォンスの唇に自分の唇を押し付けて魔力を流した。

「んぅ!」

 アルフォンスは身じろぎしながらも逃げることはなかった。何度か角度を変えて、キスをして確かめる。アルフォンスの魔力は心地いい。髪飾りの魔石と同じで、優しく暖かい。

「……すまない! この国に来て、魔力を抑える術を習っていたんだ。ずっと最小の魔力を展開しそれを維持するというもので……。一年経った頃、その魔法を解いたら……」
「レベルがカンストしていたんですか……」
「カンスト?」
「最高レベルまで上げたってことです。ハハッ、良かったですね。俺もカンストしたのであなたを孕ませてやるつもりでここへ来たんですよ。でも、初期値はあなたの方が高かったようだ」

 魔力を使って子どもを作るために、魔力を少ない方に合わせて流す必要がある。一番簡単に合わせて流す方法としては性交があげられるが、キスだけでも子供を作ることもできるらしい。魔力は少ない方へ流れるという性質があるので、子供は魔力が少ない方に宿るのだ。
 レベルがともにカンストしているけれど、さすが王道ヒーローといったところか。補正された値がアルフォンスの方が高かった。

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