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凛の話12

凛君と過ごす

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「凛さん」

私は、凛君に引き寄せられて抱き締められる。

「今日一日だけ、彼女になってよ」

「それは…」

「凛さんと最後まではしないから、お願い」

凛君のすがるような声に嫌だとは言えなかった。

「わかった」

「じゃあ、お酒飲んでいいよ」

凛君は、そう言って私から離れてニコニコ笑う。凛君みたいな子供がいたら、私は凄く幸せだったと思う。

「わかった」

「じゃあ、取るよ」

凛君は、そう言ってレモンチューハイを持ってきてくれる。

「はい」

「ありがとう」

ソファーに並んで座る。

「僕は、サイダー飲むよ」

凛君は、プシュとペットボトルを開けて紙コップに注ぐ。私にも紙コップをくれる。

「乾杯」

「乾杯」

そう言って、私はお酒をゴクゴクと飲む。何を話せばいいのかわからない私に、凛君が話しだす。

「凛さんは、犬派?猫派?」

「猫派かなー」

「へー!僕もどっちかって言うとそうかな!あのへそ天してる仕草が好きだなー。可愛くて」

「確かに、可愛いよね」

えっ……。笑いながら、凛君を見つめた瞬間。キスをされていた。

「ごめんね」

「それは…」

「凛さんも、猫みたいに可愛かったから」

「そういう問題ではないよね」

「キスぐらいは、させてよ。それ以上は、望まないから」

一度、凛君のキスを受け入れた身として、突っぱねる事が出来なかった。弱みを握られてる感じがした。

「わかった」

私は、そう言うしか出来なかった。

「よかった!ありがとう、凛さん」

そう言って、またキスをされる。厭らしいキスじゃない所が、凛君らしい。フレンチキス。軽く挨拶のようなキス。

「じゃあ、次ね!食べ物は、何が好き?」

「何だろう!何でも好きだけど、好んで食べるのはカボチャかなー」

「カボチャ!煮物とか?」

「サラダが好き!マヨネーズを少しだけ入れるの!ブラックペッパーをミルで粗めに出したやつをかけてね」

「凛さん、本当に好きなんだねー。可愛い」

そう言って、頭を撫でられる。凛君は、ニコニコ笑ってて。ほとんど話しなんて聞いてない気がした。

「聞いてた?」

「ちゃんと聞いてたよ!あっ!ポテトチップス買ってなかったっけ?食べよう」

凛君は、そう言ってコンビニの袋からポテトチップスを取り出した。私、凛君と一緒の歳だった時、蓮見君とこんな風にしたかったんだよね…。凛君は、失(うしな)った何かを思い出させてくれる子。

「パーティー開けってのにしていい?」

「うん」

「泣かないで」

凛君は、私の涙を拭ってくれる。

「ごめんね」

「嫌な事、思い出した?」

「ううん、違う」

むしろ逆だよ!愛を真っ直ぐに信じていたあの頃を思い出してた。今みたいに打算的じゃなくて、何も考えずに、ただ好きな気持ちだけで突っ走れたあの頃を思い出してた。
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