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抱き合い方なら知っている

拓実の話③

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俺は、自分の部屋に入った。

「とこちゃん、何で別れるの?母さんが、嫌なら捨てたっていいんだよ」

「拓実君、お母さんの事、悪く言っちゃ駄目だよ!」

「何で?俺、とこちゃんと一緒だったら」

「お母さんが、ずっと生きてるとは限らないんだよ。私の代わりは、いくらでも現れるよ。だけど、お母さんの代わりは現れないんだよ。だから…。私は忘れて、拓実君は幸せになって」

「とこちゃん」

俺は、とこちゃんと生きて行きたかった。

それぐらい、とこちゃんは魅力的で、とこちゃんは優しくて、しっかりしてて。

母さんは、見る目がなかったんだよ。

【明日もしよう、拓実】

何だよ、この人

「あぁぁぁぁぁーあーあー」

枕に顔を押さえつけて、俺は何度も泣いた。

とこちゃんのメールの画面を見つめていた。

「拓実君は、何が好き?」

「とこちゃん、可愛い」

「何、それ…」

手が触れたのが嬉しかった。

とこちゃんのクリクリの目が僕を見つめるのが嬉しかった。

「何?」

「とこちゃん、可愛い」

「恥ずかしいよ」


とこちゃんと生きてく未来は幸せだったのがわかる。

凄くわかる。

だって、とこちゃんは凄く素敵な人だった。

出会った瞬間から、結婚したいって思った人だった。

とこちゃんは、僕の運命の人だったんだ。

「拓実君、拓実君」

って、呼ぶあの可愛らしい声やはにかんだ笑顔が素敵だった。

俺は、流されるままに絵里香さんとまたエッチをした。

どんどん、汚れてく…。

とこちゃんに、出会った時の俺がどんどん消えていく。

とこちゃんを好きだった俺がどんどん消えていく。

「拓実、うまくなってきたね」

「そうだろ」

こんなのが、うまくなって何の意味があるんだろうか?

【拓実君】

夢では、こんなにとこちゃんに会えるのに…。

【したくなったから、行く】

【わかった】

とこちゃんが、消えてく。

どんどん、とこちゃんがいなくなってく。

「拓実、何回出来るの?」

「後、三回ぐらい?」

俺は、絵里香さんが好きじゃない。

「やばいね」

「何回でも出来るよ」

「拓実は、サルだね」

「かもな」

「若いね」

「まだ、16だし」

絵里香さんとは、数え切れないぐらいしたんだ。

「彼氏出来た」

「奇遇だね、俺も」

「じゃあ、終わりにしよっか」

「うん」

俺は、やっと絵里香さんと終わった。

ちょうど、一つ下の渚に告白されてた。

だから、俺は渚とそうなった!

それから、色んなやつとそうなったけど…。

とこちゃんを越えるような恋は出来なかった。

いつしか、俺は遊び人って呼ばれる人間になっていたんだ。
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