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第12話 お客様がチョコスイーツを食べてくれません
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カフェを開いて、数日目。
私とユリクはぼうっと家の外の門前に突っ立っていた。庭の木にとまった小鳥が時々鳴き、風が花の香りを運んでくる。
……人が来ない。
この数日間、人はあんまり来なくて、すごく繁盛しているとはいいがたい。
でも数日間でやることはやったつもりだ。
私は客席をリビングだけでなく庭にも設置し、門前に看板も置いた。
看板には「絶品のチョコレートスイーツ、用意しました!」と大きな文字で書いて、チョコレートのイラストを描いたり、下の方に「獣人さんも大歓迎! 猫の獣人が働いています」と書いておいた。
もちろん店名である「カナメ喫茶」と書くのも忘れていない。
それから看板の隣に小さめのテーブルを置いて、メニューを用意した。店に入らなくてもどんなスイーツやドリンクがあるのか見れるようにしたのだ。
スイーツメニューは私一人で作るので他のカフェに比べると少ない方だが、写真を載せてある。
珍しいと思って、来てくれるかな? 誰か頼むから来て、という願いをこめて用意している。
他にも時々呼び込みもした。
通りすがる人たちに「カフェはどうですか~? 美味しいスイーツありますよ~」と声をかけると、止まってくれる人もいる。
でもその人たちにメニューを見せると、「え……、チョコレートのお菓子? そんなものにこんなにお金取るの?」と嫌そうな顔をして去って行ったり、「チョコレートなんていつも飾ったあと捨てるから食べたことないよ。普通のケーキが食べたかったな」と言って去って行ったり……。
私のメンタルはボロボロである。
オープンしたら行くって言ってたケイとルットはどうして来ないの~? と思っていたが、彼らに家の場所を教えていない。
場所がわからないし、お客さんも来てないからオープンしたことに気づいていないのかも……。
呼び込みでなんとか入ってくれた人も、チョコスイーツには目もくれず、紅茶とコーヒーを頼むだけ。
茶葉屋で買った紅茶の種類は結構あるのでみんなそっちを頼んでしまう。
しかも、「紅茶、美味しかったわ」と言って会計したあとそのまま帰ってしまう。
紅茶が美味しいって言われるのは嬉しいことには嬉しいけど、私のチョコスイーツは!? 誰も食べてくれないってひどくない!?
何故か「カルメ喫茶は紅茶の種類がたくさんある喫茶」なんて評判までつき始めてるし!
私は「ありがとうございました」と出ていくお客さんを見送ったあと、下を向いてはぁ、とため息を吐いた。
「全然みんな、ガトーショコラ食べてくれない……」
私が落ち込んでいると、ユリクが「カナメ、大丈夫だよ」と頭を撫でてくれた。
優しく撫でられて、ちょっとくすぐったく感じる。
「仕方ないよ。まだ店開いて数日だし。続けてたら食べてくれる人は必ず現れるよ」
「……」
「……今お客さんいないし、カナメの作ったチョコスイーツが食べたいな」
私はバッと顔を上げた。ユリクが微笑えんでいる顔が、視界に映る。
……そうだ。
私の作ったお菓子を食べてくれる人は、誰もいないわけじゃない。
今は店にお客さんが一人もいない。次にお客さんが来たときには笑顔で対応できるようにしないと。私が落ち込んだまま接客しては、お客さんもあんまり良い気分にはならないだろう。
キッチンにはあり余った材料とチョコがある。……今私たちの分を作っても、お客さんの分が足りなくなることはないだろう。
よし、と私は袖をまくった。
「じゃあ、早速家に戻って作る!」
「……ありがとう。美味しいスイーツが食べられるのを待ってるよ」
私は家の外から部屋に戻り、ユリクの期待に応えるように材料を準備した。
まず、チョコレートを細かく刻んで湯煎で溶かし、耐熱容器の内側にバターを塗る。
その後、ボウルに卵を入れてほぐし、砂糖を加えて混ぜる。
ある程度混ざったら、溶かしたチョコレートを加えてよく混ぜる。
薄力粉をふるって加え、滑らかになるまでゴムべらでよく混ぜる。
よく混ざったら、板チョコを小さく切っておく。……一欠片くらい食べたくなるが、我慢我慢。
先程混ぜた生地を耐熱容器に等分に流しいれ、小さく切ったチョコを五欠片くらい生地の真ん中に入れていく。
そして、魔石オーブンで十五分ほど焼く。
「何を作ったの?」
「ふふ、できあがってからのお楽しみ」
ユリクは尻尾を揺らしながらオーブンを覗いていた。私はその姿を見て微笑む。
ガトーショコラ以外のチョコスイーツにも、喜んでくれるだろうか。喜んでくれると嬉しいな。
やがてオーブンがポーン! と音を立てる。
「お、できたかな……?」
オーブンをあけると、丸く膨らんだふっくらした生地があった。表面はちょっと割れていて、溶けたチョコがちらりと顔を覗かせている。
「よし!」
フォンダンショコラの完成だ!
私は熱々のフォンダンショコラをテーブルに持っていき、冷たいアールグレイを用意した。
ユリクが「これはなんてお菓子?」と期待をこめた瞳で私に訊いている。私はにこっと笑みを零して答えた。
「フォンダンショコラっていうの。どうぞ、召し上がれ」
「ふぉんだんしょこら……」
ユリクは私の言葉を繰り返して、フォークで生地を刺した。
中からとろっとチョコが溢れ出る。
ユリクはガトーショコラとは違って中に溶けたチョコが入っていることにとても驚いたのか、尻尾をぶんぶん動かして私を見つめた。
「……!」
ユリクは興奮しながらぱくっと口に運ぶ。
その瞬間、ユリクは幸せそうな笑みを浮かべた。頬に手を添えて、ゆっくり味わっている。
「濃厚でなめらかな生地に、温かいチョコレート。口のなかでしっとり溶けてずっと味わいたくなる。……すごく美味しい。温かいチョコレートを食べるのは初めてだけど、こんなに美味しいなんて……」
ユリクは再びフォークで生地を刺し、どんどん口に運んでいく。ユリクの顔には自然と笑みが零れていた。
……こうやって、みんなを私のスイーツで笑顔にしていけたらいいな。
私も生地をフォークで刺して、一口食べた。
口どけの良い生地と、熱々なチョコレートが口の中で上品にとろける。
とろとろのチョコレートは甘くて少しだけビターな味。生地もガトーショコラより重くなくて、ふんわりしている。
生地も中のチョコも熱いので、冷たいアールグレイとも相性抜群だ。
……うん、文句なしで美味しい。
私が味わっていると、ユリクはもう食べ終わっていた。容器の中は空っぽだ。
こんなに気持ちよく完食してくれると、私も作った甲斐がある。
「美味しかった。元気になれて、疲れもなくなったよ。ありがとう」
「……なら良かった」
ユリクは少し黙ってから、ぽつりとつぶやいた。
「このスイーツで、獣人も人も分け隔てなくできたらいいね」
その言葉に胸が苦しくなる。表情を見て、これはユリクの本音であり一番の願いなのだろうと感じた。
フェルタ街でも差別があることは、ケイたちと市場を回ったときにわかった。
獣人が集まっているとあまり良い印象を受けないようで、時々すれ違う人たちから「何かしらあの獣集団」と言われたり、私ではなくユリクたちが肩をぶつけられていた。
ケイは表面では気にしていない様子を見せていたが、ぶつかったり嫌味を言われるたびに少しだけ翳りがある表情を見せていた。ルットは睨んでいたし、ユリクも目を伏せていて良い思いはしていなかった。
王都ほど差別している人はいないが、獣人が住む地方の方でも差別があることは、そのときよくわかった。
獣人の偏見がなくなればいい。
ユリクは私が作ったスイーツで笑顔を見せてくれた。獣人と人間の壁がなくなった瞬間だと思う。
私のスイーツで種族の壁をなくせるなら、なくしたい。
獣人と人間がなんの壁もなく話せるカフェにしたい。
「大丈夫だよユリク。そんな差別、私がなくしてやるから!」
私はにっこりと微笑む。ユリクは安堵したのか、少しだけ笑って金色の目を私に向けてくれた。
私とユリクが容器とティーカップを食洗機に入れようと立ち上がったとき。
カランカランとドアが開く音がした。
お客さんだ。
私とユリクはぼうっと家の外の門前に突っ立っていた。庭の木にとまった小鳥が時々鳴き、風が花の香りを運んでくる。
……人が来ない。
この数日間、人はあんまり来なくて、すごく繁盛しているとはいいがたい。
でも数日間でやることはやったつもりだ。
私は客席をリビングだけでなく庭にも設置し、門前に看板も置いた。
看板には「絶品のチョコレートスイーツ、用意しました!」と大きな文字で書いて、チョコレートのイラストを描いたり、下の方に「獣人さんも大歓迎! 猫の獣人が働いています」と書いておいた。
もちろん店名である「カナメ喫茶」と書くのも忘れていない。
それから看板の隣に小さめのテーブルを置いて、メニューを用意した。店に入らなくてもどんなスイーツやドリンクがあるのか見れるようにしたのだ。
スイーツメニューは私一人で作るので他のカフェに比べると少ない方だが、写真を載せてある。
珍しいと思って、来てくれるかな? 誰か頼むから来て、という願いをこめて用意している。
他にも時々呼び込みもした。
通りすがる人たちに「カフェはどうですか~? 美味しいスイーツありますよ~」と声をかけると、止まってくれる人もいる。
でもその人たちにメニューを見せると、「え……、チョコレートのお菓子? そんなものにこんなにお金取るの?」と嫌そうな顔をして去って行ったり、「チョコレートなんていつも飾ったあと捨てるから食べたことないよ。普通のケーキが食べたかったな」と言って去って行ったり……。
私のメンタルはボロボロである。
オープンしたら行くって言ってたケイとルットはどうして来ないの~? と思っていたが、彼らに家の場所を教えていない。
場所がわからないし、お客さんも来てないからオープンしたことに気づいていないのかも……。
呼び込みでなんとか入ってくれた人も、チョコスイーツには目もくれず、紅茶とコーヒーを頼むだけ。
茶葉屋で買った紅茶の種類は結構あるのでみんなそっちを頼んでしまう。
しかも、「紅茶、美味しかったわ」と言って会計したあとそのまま帰ってしまう。
紅茶が美味しいって言われるのは嬉しいことには嬉しいけど、私のチョコスイーツは!? 誰も食べてくれないってひどくない!?
何故か「カルメ喫茶は紅茶の種類がたくさんある喫茶」なんて評判までつき始めてるし!
私は「ありがとうございました」と出ていくお客さんを見送ったあと、下を向いてはぁ、とため息を吐いた。
「全然みんな、ガトーショコラ食べてくれない……」
私が落ち込んでいると、ユリクが「カナメ、大丈夫だよ」と頭を撫でてくれた。
優しく撫でられて、ちょっとくすぐったく感じる。
「仕方ないよ。まだ店開いて数日だし。続けてたら食べてくれる人は必ず現れるよ」
「……」
「……今お客さんいないし、カナメの作ったチョコスイーツが食べたいな」
私はバッと顔を上げた。ユリクが微笑えんでいる顔が、視界に映る。
……そうだ。
私の作ったお菓子を食べてくれる人は、誰もいないわけじゃない。
今は店にお客さんが一人もいない。次にお客さんが来たときには笑顔で対応できるようにしないと。私が落ち込んだまま接客しては、お客さんもあんまり良い気分にはならないだろう。
キッチンにはあり余った材料とチョコがある。……今私たちの分を作っても、お客さんの分が足りなくなることはないだろう。
よし、と私は袖をまくった。
「じゃあ、早速家に戻って作る!」
「……ありがとう。美味しいスイーツが食べられるのを待ってるよ」
私は家の外から部屋に戻り、ユリクの期待に応えるように材料を準備した。
まず、チョコレートを細かく刻んで湯煎で溶かし、耐熱容器の内側にバターを塗る。
その後、ボウルに卵を入れてほぐし、砂糖を加えて混ぜる。
ある程度混ざったら、溶かしたチョコレートを加えてよく混ぜる。
薄力粉をふるって加え、滑らかになるまでゴムべらでよく混ぜる。
よく混ざったら、板チョコを小さく切っておく。……一欠片くらい食べたくなるが、我慢我慢。
先程混ぜた生地を耐熱容器に等分に流しいれ、小さく切ったチョコを五欠片くらい生地の真ん中に入れていく。
そして、魔石オーブンで十五分ほど焼く。
「何を作ったの?」
「ふふ、できあがってからのお楽しみ」
ユリクは尻尾を揺らしながらオーブンを覗いていた。私はその姿を見て微笑む。
ガトーショコラ以外のチョコスイーツにも、喜んでくれるだろうか。喜んでくれると嬉しいな。
やがてオーブンがポーン! と音を立てる。
「お、できたかな……?」
オーブンをあけると、丸く膨らんだふっくらした生地があった。表面はちょっと割れていて、溶けたチョコがちらりと顔を覗かせている。
「よし!」
フォンダンショコラの完成だ!
私は熱々のフォンダンショコラをテーブルに持っていき、冷たいアールグレイを用意した。
ユリクが「これはなんてお菓子?」と期待をこめた瞳で私に訊いている。私はにこっと笑みを零して答えた。
「フォンダンショコラっていうの。どうぞ、召し上がれ」
「ふぉんだんしょこら……」
ユリクは私の言葉を繰り返して、フォークで生地を刺した。
中からとろっとチョコが溢れ出る。
ユリクはガトーショコラとは違って中に溶けたチョコが入っていることにとても驚いたのか、尻尾をぶんぶん動かして私を見つめた。
「……!」
ユリクは興奮しながらぱくっと口に運ぶ。
その瞬間、ユリクは幸せそうな笑みを浮かべた。頬に手を添えて、ゆっくり味わっている。
「濃厚でなめらかな生地に、温かいチョコレート。口のなかでしっとり溶けてずっと味わいたくなる。……すごく美味しい。温かいチョコレートを食べるのは初めてだけど、こんなに美味しいなんて……」
ユリクは再びフォークで生地を刺し、どんどん口に運んでいく。ユリクの顔には自然と笑みが零れていた。
……こうやって、みんなを私のスイーツで笑顔にしていけたらいいな。
私も生地をフォークで刺して、一口食べた。
口どけの良い生地と、熱々なチョコレートが口の中で上品にとろける。
とろとろのチョコレートは甘くて少しだけビターな味。生地もガトーショコラより重くなくて、ふんわりしている。
生地も中のチョコも熱いので、冷たいアールグレイとも相性抜群だ。
……うん、文句なしで美味しい。
私が味わっていると、ユリクはもう食べ終わっていた。容器の中は空っぽだ。
こんなに気持ちよく完食してくれると、私も作った甲斐がある。
「美味しかった。元気になれて、疲れもなくなったよ。ありがとう」
「……なら良かった」
ユリクは少し黙ってから、ぽつりとつぶやいた。
「このスイーツで、獣人も人も分け隔てなくできたらいいね」
その言葉に胸が苦しくなる。表情を見て、これはユリクの本音であり一番の願いなのだろうと感じた。
フェルタ街でも差別があることは、ケイたちと市場を回ったときにわかった。
獣人が集まっているとあまり良い印象を受けないようで、時々すれ違う人たちから「何かしらあの獣集団」と言われたり、私ではなくユリクたちが肩をぶつけられていた。
ケイは表面では気にしていない様子を見せていたが、ぶつかったり嫌味を言われるたびに少しだけ翳りがある表情を見せていた。ルットは睨んでいたし、ユリクも目を伏せていて良い思いはしていなかった。
王都ほど差別している人はいないが、獣人が住む地方の方でも差別があることは、そのときよくわかった。
獣人の偏見がなくなればいい。
ユリクは私が作ったスイーツで笑顔を見せてくれた。獣人と人間の壁がなくなった瞬間だと思う。
私のスイーツで種族の壁をなくせるなら、なくしたい。
獣人と人間がなんの壁もなく話せるカフェにしたい。
「大丈夫だよユリク。そんな差別、私がなくしてやるから!」
私はにっこりと微笑む。ユリクは安堵したのか、少しだけ笑って金色の目を私に向けてくれた。
私とユリクが容器とティーカップを食洗機に入れようと立ち上がったとき。
カランカランとドアが開く音がした。
お客さんだ。
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