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第31話 前世の記憶
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金色の睫毛がふるりと震え、リュザの目が見開かれる。
フレンチトーストを見つめたまま「やっぱり……」と呟き、その後私の方に向き直った。
真摯な瞳で私に視線を向ける。
「前世の記憶を持ってるでしょ、と俺が言った時、君は驚いていたよね? それは肯定ってことでいいのかな?」
「……」
……これは、答えていいものなのだろうか。
最初はこの人のことを本物の王宮魔術師じゃないかもしれないと警戒していたが、話し方や所作、結界の張り方からして本当に王宮魔術師なのだろう。
私はしばし迷ったあとに、リュザの向かい側の椅子に座ってゆっくり首肯した。
「……はい。前世の記憶を、私は持っています」
「……なるほど。謎が解けたな」
リュザは手を顎にあて、熟考しているのかしばらく黙ったあと、すぅっと息を吸った。
「君は、『癒しの力』を持っている。大昔にある人物が使っていた、どんな病気でも癒し、完治させてしまう力だ。何年も魔術を使ってきたからわかったが、君のショコラスイーツを食べたときに身体がふっと軽くなり、『癒しの力』の特徴である体力と魔力を全て回復してくれるのを感じた。君は『癒しの力』を、無意識にスイーツを作っているときに使ってしまっているのだろうね」
「『癒しの力』……?」
リュザは半分以下になったルイボスティーを口元に持っていき、こくりと飲んだ。
「大昔、この国は戦争に負け、大規模な飢饉が発生した。その国を立て直してくれた人が、ある女性だったんだ。彼女は雑草を美味しい料理や飲み物に変え、小さな種から今までにはなかった果物を生み出し、食べるなんて想像もできなかった魚を調理して綺麗な料理を作ってくれた。そしてその彼女が作った雑草の料理や飲み物、魚料理、果物を食べると体力や魔力が回復し、飢えていた人々は元気を取り戻した。彼女は新たな知識をこの国の人々に教え、人々を救い国を立て直すという多大な成果を残したことから、後に『癒しの力を持つ聖女』と呼ばれるようになったんだ。彼女は聖女と呼ばれ崇められた際に受けた取材で、「私は前世の記憶を持っています。別の世界の知識を生かしただけなのです」と言っていた。それ以降、稀に前世の記憶を持っている人が現れる」
「それ以降に現れた前世の記憶を持っている人は、聖女と呼ばれた彼女が持っていた『癒しの力』を、同じように持っているということですか?」
「察しがいいね。そういうこと。君は自分の属性魔法の他に、『癒しの力』を持っていたんだよ。どういう仕組みで前世の記憶を持っているから『癒しの力』を使うことができるのかは解明されてないけど、前世は別世界にいたから、この世界に別の人間として生まれ変わったときに世界と世界を繋ぐ間で何らかの不具合が発生したから、という仮説がある」
仮説になるけれど、前世の記憶、それも別世界の記憶を持っていて、そのままこの世界の人間として生まれ変わるときになんらかのバグが発生し、『癒しの力』を持てるようになった、ということかな。
きっとそのときのバグで、生まれたときには前世の記憶も忘れてしまっているのだろう。
そして前世の記憶を思い出したから、『癒しの力』も使えるようになったというわけか。
不思議な話だ。お母様からそんな話聞いたことなかったし、時々読んでいた書物にもそういう話はなかった。
もしかしたら、王宮の人にしか知れ渡っていない話なのかもしれない。
……あれ?
待って。
――その世界は、ここよりすごく便利で……。ここから何キロも離れた友人と会話ができる、『でんわ』なんてものがあったのよ。それから馬車より早く走れる、『くるま』というものもあるの
――それから娯楽として『てれび』もあったのよ。どう説明すればいいかしら……いろんなものを、放送している機械なのだけど
お母様確か、そんなこと言ってたよね……?
「もしかして、お母様も……!?」
「……?」
私の突然の大きな声に、リュザは首を傾げる。
私はぐっと前のめりになってリュザの瞳に自分の顔が見えるくらいの距離に近づいた。
「お母様のこと、調べてもらえませんか!?」
フレンチトーストを見つめたまま「やっぱり……」と呟き、その後私の方に向き直った。
真摯な瞳で私に視線を向ける。
「前世の記憶を持ってるでしょ、と俺が言った時、君は驚いていたよね? それは肯定ってことでいいのかな?」
「……」
……これは、答えていいものなのだろうか。
最初はこの人のことを本物の王宮魔術師じゃないかもしれないと警戒していたが、話し方や所作、結界の張り方からして本当に王宮魔術師なのだろう。
私はしばし迷ったあとに、リュザの向かい側の椅子に座ってゆっくり首肯した。
「……はい。前世の記憶を、私は持っています」
「……なるほど。謎が解けたな」
リュザは手を顎にあて、熟考しているのかしばらく黙ったあと、すぅっと息を吸った。
「君は、『癒しの力』を持っている。大昔にある人物が使っていた、どんな病気でも癒し、完治させてしまう力だ。何年も魔術を使ってきたからわかったが、君のショコラスイーツを食べたときに身体がふっと軽くなり、『癒しの力』の特徴である体力と魔力を全て回復してくれるのを感じた。君は『癒しの力』を、無意識にスイーツを作っているときに使ってしまっているのだろうね」
「『癒しの力』……?」
リュザは半分以下になったルイボスティーを口元に持っていき、こくりと飲んだ。
「大昔、この国は戦争に負け、大規模な飢饉が発生した。その国を立て直してくれた人が、ある女性だったんだ。彼女は雑草を美味しい料理や飲み物に変え、小さな種から今までにはなかった果物を生み出し、食べるなんて想像もできなかった魚を調理して綺麗な料理を作ってくれた。そしてその彼女が作った雑草の料理や飲み物、魚料理、果物を食べると体力や魔力が回復し、飢えていた人々は元気を取り戻した。彼女は新たな知識をこの国の人々に教え、人々を救い国を立て直すという多大な成果を残したことから、後に『癒しの力を持つ聖女』と呼ばれるようになったんだ。彼女は聖女と呼ばれ崇められた際に受けた取材で、「私は前世の記憶を持っています。別の世界の知識を生かしただけなのです」と言っていた。それ以降、稀に前世の記憶を持っている人が現れる」
「それ以降に現れた前世の記憶を持っている人は、聖女と呼ばれた彼女が持っていた『癒しの力』を、同じように持っているということですか?」
「察しがいいね。そういうこと。君は自分の属性魔法の他に、『癒しの力』を持っていたんだよ。どういう仕組みで前世の記憶を持っているから『癒しの力』を使うことができるのかは解明されてないけど、前世は別世界にいたから、この世界に別の人間として生まれ変わったときに世界と世界を繋ぐ間で何らかの不具合が発生したから、という仮説がある」
仮説になるけれど、前世の記憶、それも別世界の記憶を持っていて、そのままこの世界の人間として生まれ変わるときになんらかのバグが発生し、『癒しの力』を持てるようになった、ということかな。
きっとそのときのバグで、生まれたときには前世の記憶も忘れてしまっているのだろう。
そして前世の記憶を思い出したから、『癒しの力』も使えるようになったというわけか。
不思議な話だ。お母様からそんな話聞いたことなかったし、時々読んでいた書物にもそういう話はなかった。
もしかしたら、王宮の人にしか知れ渡っていない話なのかもしれない。
……あれ?
待って。
――その世界は、ここよりすごく便利で……。ここから何キロも離れた友人と会話ができる、『でんわ』なんてものがあったのよ。それから馬車より早く走れる、『くるま』というものもあるの
――それから娯楽として『てれび』もあったのよ。どう説明すればいいかしら……いろんなものを、放送している機械なのだけど
お母様確か、そんなこと言ってたよね……?
「もしかして、お母様も……!?」
「……?」
私の突然の大きな声に、リュザは首を傾げる。
私はぐっと前のめりになってリュザの瞳に自分の顔が見えるくらいの距離に近づいた。
「お母様のこと、調べてもらえませんか!?」
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