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第187話 マッキュからのお返事はありますか?

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 ビクンと体が震え、ハッとなり目が覚めた。はぁ……はぁ……夢か?

 上手く思い出せないけど、ボクは何か怖い夢を見ていたような気がする……。もう夏が終わると言うのに、凄い寝汗を掻いてしまったようだ。ふと辺りを見渡すと、ヤリ部屋エッチルームの大きなベッドに夏子さんと桜さん、そしてアリスさんがスヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てているのでした。

「……あらあら……ユウタ君ったら早漏さんね~……むにゃむにゃ」

「っ!?」

 微かに聞こえた声に振り向けば、掛け布団がはだけてツンツンしたおっぱいが飛び出ちゃっている夏子さんでした。きっと肌寒くて寝言が出ちゃったのだろう。妊婦さんですからね、しっかりと暖かくして寝て貰いましょう。掛け布団の中におっぱいを押し込んでおきました。

 それにしても早漏って……変な夢を見てるんですねぇ。ボクは早漏じゃありませんよ?

「……んっ……ユウコちゃんダメですわっ……お母様が見てる……ああっ……むにゃむにゃ」

「ちょっ、凄い気になる内容ー!?」

 夢の中のボクは琴音さんが見てる前でアリスさんとエッチな事をしているのか? ヤバイ、興奮する!!

 夏子さんに続いてアリスさんまで寝言を言うとは思いませんでした。順番的に次は桜さんかな? ワクワク……。

「……ユウタさん……」

「……っ!?」

 ジッと桜さんの可愛い寝顔を見つめていたらボクの名前を呼びましたよ!? ふふ、どんな夢を見てるのかな?

「…………浮気したのでおしおき・・・・ですね……むにゃむにゃ」

「――ふぁっ!?」

 桜さんのおしおきという言葉を聞いた瞬間、体に電気が走った。ピシャゴーンと雷が落ちたような感じがしました。

 そうだ、ボクは皆との約束を破ってお外でピンクサキュバスをゴクゴクと飲んで楽しんでしまったのだ。そして約束を破ったボクは、恐怖のシコシコスプラッシュおしおきを受けてしまったのです。アレはヤバい、男の尊厳が失われてしまう……。

 シコシコスプラッシュおしおきは1回で許して貰えましたが、次は1回じゃ許してくれないかもしれません。もうお外でピンクサキュバスを飲むのは絶対に止めよう……。ユウタ反省。







 おしおきから数日が経ったある日、一人でモグモグとお昼ご飯のマッキュを食べてまったりとソファーでくつろいでいたところ、スマホから電話の着信音が聞こえて来ました。チラッと液晶画面を見たら姫ちゃん先輩ですね。姫ちゃん先輩なら急いで出ないでも良いかなーって思ったので、マッキュシェイクをチューっと頑張って吸って喉の調子を整えてから電話に出てみました。マッキュシェイクってストローで吸っても出て来ない事がありますよね?

「もしもし、ユウタですー」

「ユウタ様こんにちは! 今お電話宜しいでしょうか?」

「おっけーですよ~」

 お仕事モードな感じの姫ちゃん先輩からお電話が掛かって来ました。もしかしてユウタ・コーラの件で抗議の電話でしょうか!? まだマッキュの人から連絡が来ないのですが、ボクは諦めずにコラボが出来ないかなと期待しているのでした。

 千代ちゃんの好感度UPUP大作戦のためにマッキュとコラボしたいと言ったけど、もしマッキュから相手にされなかったら姫ちゃん先輩に土下座するしかないですね。最悪、ボクの体で誠意を見せるしかないな。お尻くらいまでは覚悟しよう……。

「実はですね、握手会の応募が始まりますよ。明日の正午に発表となりますので、ユウタ様も『つぶやいたー』で告知をお願いしますね」

「わーお! ついに発表されるんですね~。告知の件、了解しましたー! 雪乃マ……雪乃さんからも早く握手会やろうって急かされてるんですよー」

「美羽様がうちの上司と忙しそうに動いていましたよ。ふふ、凄い応募数になるんじゃないかって社内でも盛り上がっていました」

 握手会の応募は、サンガリー食品の対象商品に付いているシールのQRコードから応募が出来るそうです。対象商品もかなりの数があるらしく、買い占めや転売になる事は無いだろうとの事でした。

 握手会の応募と神楽坂リゾートホテル宿泊の応募があるらしく、ポイントを貯めてネットからIDカードを使って応募っていう流れになるそうです。ゲームの罰ゲームから始まった企画ですが、何やら大事になっちゃいましたね~。

「ここからが本題なのですが、来週末にCMの撮影を行う話が行っていたと思うのですが、ユウタ様のスケジュールは大丈夫そうですか?」

「来週の金曜日からですよね。う~む……」

 そう、遂にCM撮影を行う事になったのでした! ピュッピュチャレンジのクリア報酬ですよー!

 ふふふ、実は事前にスケジュール調整の依頼が来ていたのでボクの準備は万全ですが、ここで即答したらボクが暇だって思われてしまいます。なのでちょっと考えるフリをして忙しいアピールです。あー、売れっ子なボクは忙しいからスケジュールいけるかなぁ。う~む……。

「悩んでるフリしてもユウタ様が暇人なのは知ってますからね? 先生様が暇そうにしてるからいつでも良いわよって言ってましたから」

「ちょっ、ボクだって忙しい身なんですよー!!」

「ほうほう? 例えばどんなご予定が?」

「えっと、その……そうだ! お友達とマッキュを食べるんですよー!! あとあと、ゲームを一緒にやろうかなーって思ってます」

 お友達とはもちろん双子ちゃんの事ですが、そんな予定は全くありません。見栄を張っちゃいました……。くっ、夏子さんの言うように本当は何も予定が無い主夫なのでした。悔しいです……。

「ほほう、お友達とマッキュを食べてゲームですか? 随分と良いご身分ですねぇ……。まあ今の感じだと嘘なんでしょうけど、来週のCM撮影だけはしっかりとお願いしますよ?」

「はい、お任せあれ!!」

 姫ちゃん先輩はボクの事を良く分かっているようです。CM撮影を心配しているようですが、ボクのカリスマ溢れる演技でパパっと終わる気がするので大丈夫です。

 夏子さんも桜さんも不安そうな顔をしていたけど、成長したボクをテレビで見て下さいって言って納得させるのに苦労しました。

「その返事はかなり不安ですけど、本当にマジで真剣にお願いしますね? ……あ、そう言えばマッキュの件どうなりました? ユウタ様の例のジュースです」

「ううぅ……マッキュからはノーリアクションです」

「あははは! 残念でしたねぇユウタ様~。ちょ~っと頭のゆるいユウタ様はご存知無いかもしれませんが、マッキュはアメリカに本社を置く世界規模で展開する超スーパーウルトラビッグな大企業ですよ。そんな超スーパーウルトラビッグな大企業にユウタ様の配信如きで話が通る訳が無いんです。しかもジュースは怪しさ満点のオリジナルジュースですよ。あーあ、最初から私の話に乗っていれば今頃はヤホーニュースのトップ記事に掲載されていたでしょうねぇ~」

「ぐぬぬぬぬ……!!」

 先日のユウタ・コーラの件をまだ根に持っているのでしょう……めっちゃ煽って来ます。でも姫ちゃん先輩の言っている事が正しいと分かるので反論出来ません。そう、マッキュはボクが想像していた以上に大きな会社だったのです。姫ちゃん先輩の言う超スーパーウルトラビッグな大企業ですよ……。マッキュコラボは無理かもしれません。ごめん千代ちゃん……。

「そんなユウタ様に朗報です。ぐへへ……例のジュースのレシピ、私に預ける気はありませんか?」

「……ほほう?」

 姫ちゃん先輩が悪代官のような口調でボクを誘惑してきた。

「このままユウタ様の考案したジュースがお蔵入りするのは勿体無いと思うんですよね~」

「ふむ……確かに?」

 今のボクに自力でユウタ・コーラをマッキュに普及させるのは無理だから、姫ちゃん先輩が力を貸してくれるという事だろうか?

 でも放送でボクとサンガリー社が蜜月な関係である事を良く思わない人が居るのも確かなのです。マッキュがダメだったからサンガリー社に泣きついたとなったらボクのファンが呆れて居なくなっちゃうかもしれません。

 ここで姫ちゃん先輩の話に乗って良いものか……。

「ユウタ様が懸念される事は良~く分かってますよ。そこでユウタ様の興した会社を利用するのです。先生様から聞きましたが、既に設立は出来ているそうですね」

「ふふふ、良くご存じですね!」

「社名は『株式会社ユウタプロダクション』ですか。まさにユウタ様を前面に押し出した良い名前ですね!」

 そう、いつの間にかボクの知らないところで会社が出来ていたのです。そしてなんと、社長はアリスさんなのでした! アリスさんは芸能人だし、バックには西園寺家が付いてるので色々と上手いことやってくれるのでしょう。

 お金の事とかお嫁さん達が相談して上手くやってくれるそうなので、ボクは今まで通り配信に専念して欲しいと言われました。まるでボクに経営は無理だと言われているような気がしましたが、ボクには消費税くらいしかお金の事が分からないのでお任せする事にしました! 年末調整とか確定申告って何ですか?

「つまりですね、ユウタ様の会社からジュースの原液を販売するんですよ。それを購入した各社がオリジナルのブレンドでカスタムしたジュースを作って販売するっていう寸法です。これなら各社が平等に販売出来ます。原液を炭酸で割ったユウタ様のオリジナルを作って販売するも良し、カスタマイズして企業の味を売るも良し。ほら、これならユウタ様の懸念されるサンガリーとベッタリな関係にはなりません。しかもナースさんの話ではお酒にも合うとか。サワーとかチューハイにしても大ヒット間違い無しですよー!」

「ふぁおおおおお!? 姫ちゃん先輩は天才ですか!?」

 姫ちゃん先輩の口から語られた言葉は早くて半分くらいしか理解出来なかったけど、何か良いアイデアな気がしてきたぞ。

「もう、今頃気付いたんですか? 私はユウタ様のお陰で出世が出来たんです。その御恩は忘れていませんよ。だから二人でもっともっとビッグになって、世界に名を知らしめましょう!」

「姫ちゃん先輩!!!」

 ううぅ……ボクは何て良い人と巡り会えたのだろうか。それなのにボクは姫ちゃん先輩を差し置いてマッキュに浮気をしようとしてしまった……。

 あれ、でもちょっと気になる事があります。

「あのあの、でもボクの会社からジュースの原液を販売するとして、どうして姫ちゃん先輩にジュースのレシピを渡す必要があるんですか?」

「ふふふ、そんなのうちの関連会社でジュースの原液を作るからに決まってるじゃないですか~。ユウタ様の会社は工場なんて持ってないでしょう? そこでうちが間に入って仲介してあげるんですよ。ユウタ様の会社がうちにお仕事を依頼して、うちがジュースの原液を作って納品する。うちの会社は大きな生産ラインを持っているのでコスト面でもご協力出来ますよ。ほら、WIN-WINな関係ですよね?」

「……なるほどー!」

 抜け目のない姫ちゃん先輩ですね。結局のところサンガリー社に頼りっきりな気がしますが、サンガリー社がジュースを独占販売する訳じゃないので許して貰いましょう。

「それにうちはマッキュにジュースの原液を卸していますからね。もしかしたらマッキュの目に留まるかもしれませんよ?」

「……姫ちゃん先輩、最高です。愛してます!!」

「うふふふふ、やっと私の魅力に気付いたんですね? もしこのお話を進めるならお嫁さん達としっかりと話して下さいね。あ、あと特許とかしっかりとお願いしますね」

「了解しましたー!」

 ……ふぅ、やっぱり姫ちゃん先輩は頼りになりますね。でも特許とか言ってましたよ? 特許ってどうやって取るんですか? うーむ、困ったぞ……。



   ◇



「……という事があったんですよー!」

 夕食を頂きながら皆に昼間の事を伝えました。今日はアリスさんが立派なサンマを持って来てくれたのでした。脂の乗った肉厚な身を解して大根おろしと一緒にパクリと頂いちゃいます。ウマー!

「あらあら、姫ちゃんも商魂逞しいわね~」

「マッキュから相手にされてない現状、絶好のタイミングで話を持って来ましたね。ふふ……さすが姫ちゃん先輩です」

「そうですわね、特許は本来審査に時間が掛かりますけど、最近は日本の特許庁も迅速化に力を入れているそうですわ。上手く行けばすんなりと通るかもしれませんし、お母様にも相談してみますわね」

 特許とか全く分からないので相談してみたところ、頼りになるアリスさんが引き受けてくれました。さすが社長です!!

「わーい、ありがとうございますー! じゃあアリスさんにはお礼としてユウタ・コーラを作ってあげますね~」

「あら、嬉しいですわ~」

 みんなにユウタ・コーラを作って乾杯したのでした。




「ねぇユウタ君。明日は何か予定でもあるのかしら?」

「明日ですか。ふ~む……」

 今日は良く予定を聞かれる日ですね。明日はとりあえず掃除と洗濯をするくらいしかやる事が無いですね。でもここで予定が無い事を即答するのもどうかと思ったので、姫ちゃん先輩の時と同じように悩んでみました。う~む……。

「ユウタさんは明日も家でゴロゴロしてる予定です」

「ちょ、そんな事ないですよぉー。桜さんも決めつけるのは良く無いと思いま~す!」

「あら。じゃあユウコちゃんは明日はどんな予定があるのかしら?」

「ぐぬぬ……特にないです」

「やっぱり暇なんじゃないですの。嘘付いたらおしおきですわよ?」

「ぴぃー!?」

 お、おしおきはダメです。そう、シコシコスプラッシュは命に関わります。

 くっ、ボクは何かお仕事でも始めましょうか……。昼間に配信をすると仕事中にサボる視聴者さんが大勢出て来るので気が引けるんですよね。

「うふふ、それくらいでおしおきなんてしないから大丈夫よ~。あ、そうだわ。明日はユウタ君のお友達と一緒にゲームしたらどうかしら? 確か可愛い双子ちゃんとお友達になったのよね?」

「え、そうですけど……」

 あれ、ボクは皆に双子ちゃんの事を伝えただろうか? うーむ、まったく記憶にないです。

「お昼にマッキュを買って行ってあげたら良いんじゃないでしょうか。ユウタさんのポイントカードも埋まりますよ?」

「おお、それは良いかもしれませんねー!」

 バーガーキングちゃんの特大ぬいぐるみまであと10ポイントなのです。双子ちゃんと3人でセットを食べれば6ポイントになるので、目標達成まであと少しですね!

「お夕飯の準備は私がやりますのでゆっくりして来て良いですわよ」

「……んん? 分かりました」

 ど、どうしたのだろうか。まるでボクを双子ちゃんの家に行かせたいような感じがします。これはもしや……強制イベントか!? 世界がボクを双子ちゃんの家に行かせようとしているのか!!

「うふふ、私達の事は気にせずゲーム楽しんで来てね~」

「ふふ……たまにはお家の事を気にせず楽しんで下さい」

「ユウコちゃんにも休日は必要ですわ~」

「あ、ありがとうございます……」

 やけに優しいお嫁さん達を不審に思ったけど、双子ちゃんとゲームしてマッキュ食べるのも楽しそうですね。

 ボクはお言葉に甘え、明日はお出掛けする予定を立てる事にしたのでした。
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