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隣国情勢

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ヴァレンティ王国はガミゴン帝国と戦争をしていた。

ガミゴン帝国の皇帝リチャードは戦争が大好き。

ズッシーニ大陸中の国々に戦争を仕掛けていた。

ところが、実際は敗北を喫していた。

それでも懲りずに戦争をする。


なぜ戦争をするかと言えば一種のギャンブルらしい。

勝つか負けるか。

それを戦争という形で行っていた。


リチャードはカジノへは行かない。

戦争こそが最大のギャンブルなのだ。


ズッシーニ大陸ではもはや有名な国だ。

お騒がせな国。

度々周囲では隣国情勢が話題にあがる。


トールが貸してくれた本の英雄ドナルドは勿論この世にいない。

新たなドナルドは出るのか?


そこへ、トールが弁当箱を持ってやってきた。

「これ、美味しかったよ。ありがとう。僕がエビフライ好きってよくわかったね」

「喜んでくれて嬉しいわ」

(やっぱりモブよね)。

隣国について、トールに聞いてみる事にした。


「ねぇねぇ、トール」

「うん?」

「第二のドナルド将軍って現れると思う?」

「現れるでしょう。国を本気で守ると戦えば誰でもドナルド将軍だよ」

「そうね」

確かにそうだ。

「で、戦況はどうなっているのかしら?」

「そうだな。ま、リチャード皇帝陛下はマヌケで有名だから、ヴァレンティ王国の勝利に終わりそうだね」

マヌケ。

もはや、マヌケとしか言いようがない。


「でも、なぜガミゴンは戦争するお金が尽きないのかしら?」

「答えは簡単さ。人件費をケチっているのさ」

人件費をケチる。

トールは続けた。

「だからね、お金に困って騎士たちは自殺する人が多いんだよね」

自殺。もはや、ブラック契約……。

そう言えば、生前、クララの知人がブラック企業で働いていた。

給料は少ないのに、残業、残業、それまた残業だった。

最後は生活苦で自ら命を断ってしまった。

兵士たちの気持ちがなんとなく理解できるような気がした。

「人件費も安いから、騎士たちのモチベーションも上がらない。だから戦争に勝てない。勝てないからお金が貰えない。その悪循環さ」

確かに……と思った。


「うふふ」

マリーがやって来た。

「なあに? マリー。楽しそうな顔して」

「うん? なんかね、クララが幸せそうだから、こっちまで幸せな気分になっちゃって」

何のことだかわからない。

「どういうこと?」

「うふふ。クララとトール、仲良しなのねって」

「なんだ。そんな話ね」

「で、何を話していたの?」

「隣国情勢よ」

「ああ、戦争ね。戦争……かぁ。リチャード皇帝陛下はお間抜けだけど、ヴァレンティーン王国の第一王子、ヴィクトール王子殿下は亡くなられたらしいわよ」

「え~~~~~~~~!?」

ヴィクトール王子が亡くなった……。

なぜ? と思った。

ヤル気の無い騎士たちにいとも簡単に殺されてしまうのか?
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