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王宮へ

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ヴァレンティン王国は勝利した。

そして、亡くなったと思われていたヴィクトールは実は生存していた。

その事が新聞に載った。


初夏の日差しが眩しい。

クララは王宮に招待されていた。


それにしても妙だ。

ヴィクトールが平民のトールに化けていた。

確かに、命を狙われていた……ともばれば、素性を隠すのはわからないわけでもないが……。

原作に無い展開に驚きを隠せない。


それに、クララは貴族社会に嫌気が差していた。

もう、王侯貴族とは結婚しない、と決めていた。


確かに、生前。

子供の頃は確かにお姫様願望はあった。

姫系のファッションもしていた。

それに、どこかの国の王子様と結婚できたら……とも思っていたっけ?


それが、年を経るにつれ、なぜかお医者様と結婚したいと思うようになった。

そう、医者と結婚をしたいがために、婚活パーティのために全国を行脚あんぎゃした。

しかし、見向きもされなかった。


そして、自称クリニック開業という男性といい感じになった。

しかし、実際は結婚詐欺だった。

「将来、二人で暮らすためのマイホームを買った。それで、ローンを組んだから、二人で払っていこう!」

と電話が来た。


お金の話が出て「これは詐欺だ」と直感した。

なぜ、ローンを組むのか? なぜ勝手に家を買うのか? なぜ二人で払うのか?

お金を巻き上げられるすんでのところで事なきを得た。


それでも尚、お相手の職業は医師にこだわったっけ……。


そして、気づけば41歳生涯独身……。


その神田まりも時代からすると、どこかの国の王子と結婚するというのは俄には信じられない。

また、騙されているのではないか? 利用されているのではないか? と憂慮してしまう。


しかし、正真正銘の王子……。


「また騙されてみるか……」


馬車は王宮に到着した。

「お嬢様。着きましたぞ」

御者。

「はい」

クララは馬車を降りた。


王宮にはトールが迎えに来ていた。

トールは平民時代と明らかに違う服装をしている。

「来てくれたんだね、クララ」

「ヴィクトール王子殿下。参りました」

「あはっ。クララ。僕のこと、トールと呼ばなかったね」


屈託のない笑顔を見せると、執務室へと呼ばれた。


執務室は本で溢れかえっていた。

まさしく、読書好きなトールらしかった。


「ゆっくりしていくと良いよ。寛いで」


もはや、医師との結婚などどうでも良かった。

そう。モブで良かった。

モブなら、確実に結婚できるからだ。


もう、生涯独身はごめんだわ!!

そう思っていた。
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