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第五話

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リディアはならず者の集団に狙われていたようだ。

「さあ、嬢ちゃん、金目のものを出しな」

三白眼の男が刃物を持って向かってきた。

「見るところ、いいところの出自のご令嬢様みたいじゃないか」

と、チビデブのゴロツキ。




「何かいいもの持っているんじゃないのか? あ?」

と、リーダー格の男。


「いいえ、私は無一文で家を追い出されました。お金なんかありません。解放して下さい」


「何生意気言ってんだ?」

三白眼の男が刃物を地面に突き立てた。







――誰か助けて。


すると、馬車が突如現れ、馬主がならず者たちを次々となぎ倒していった。

「次はどいつだ?」

ならず者の一人が

「ひぇ~お助けを。何でもしますから命だけは」

と懇願すると、馬主は

「その女性を解放しなさい」

と言った。



するとならず者たちはその場をあとにした。


「ありがとうございました」

リディアは馬主にお礼を言った。

「いいや。いいんだ。しかし、何故こんな人里離れた場所に高貴なご身分の女性がいるんだね?」


「それは」

リディアは本当の事を包み隠さず言った。


中肉中背の黒髪。黒いひげ。ネックレスをつけ、エメラルドの指輪をしている。

馬主もそこそこ身分の高そうな格好をしていた。


「私は隣国ハワードの公爵令嬢でした。しかし、家族と仲違いをし、家と国を追放されました」

そう言うと馬主は

「なるほどそうか」

と言った。




「しかし、こんな人っ子一人いない平原を歩いていたら、先程のように追い剥ぎに遭ってしまう。私は追い剥ぎ対策に戦闘能力を身に着けた。私はしがない商人だよ。どこまで行くのかい? 良かったら乗せていくよ?」

「ありがとうございます。ロダンに向かっているところでした」


「では馬車に乗りなさい」

リディアは促されるまま、馬車に乗った。









「しかし、貴族のお嬢さんが一人で歩くとはな。まぁ、何かしら事情はあるんでしょうが、独り歩きは危険だよ。この辺は」

「はい。私はボディガードもつけてもらえずに追放されましたから」

「私の名前はアーネスト。以後宜しくね」

「はい。私はリディア・ジョセフィーヌ・マリア・ゴンザレスです」


商人は顎を掻いた。

「それにしても、ロダンに着いても行くところはあるのかね? 宿なんかどうするんだ」

「それが……野宿を……」

実は無い。


「野宿なんか危ない。さっきのならず者の集団は街中にもいるんだ。また襲われたら大変だ。うちに来ないか?」

リディアは躊躇した。

助けてもらった上に居候までさせてもらうとは。

「遠慮しなくていいよ。うちは部屋など沢山あるからね」

しかし、迷った。

「大丈夫だよ。遠慮しなくて。事情は大分飲み込めたから」

リディアは押されるに押され、断りきれなくなった。

「ありがとうございます。何でもお手伝いさせて下さい!」
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