【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari

文字の大きさ
10 / 11

祝福

しおりを挟む
戦争は終わり、平和が戻った。
犠牲者は出たものの、それでも穏やかな解決方法だったという。

結果エドワードとイザベラは投獄されたらしい。

しかも、アンドリューとイザベラは別々の独房に入れられたらしい。


その報告はキャサリンの耳に入ってきた。

キャサリンの胸は高鳴った。

やはり、罰は当たったのだ。


アンドリューとイザベラの挙式は盛大に行われたという。


しかし、愛を誓った神様はわかっていた。


独善的な二人を。


そして、エドワードとエスターがブラック契約を結んでいた事に気付かされ、むしろ、キャサリンはこれで良かったと思っている。


キャサリンは今、ヴァレンティン皇子と交際している。


エドワードの紹介だった。


ヴァレンティン皇子はアンドリューと違って誠実で聡明で紳士だ。


月とすっぽんとしか言いようがない。









今日はエドワードとエスターの結婚式だ。



穏やかな日差しの下で二人は永遠の愛を誓いあった。


エスターは宝石を散りばめたウェディングドレスに身を包んでいる。


何とも輝かしい。


「おめでとう、エドワード。エスター」

「ありがとうございます。キャサリン様」

「ありがとうございますわ、キャサリン様」

二人はキャサリンがアンドリューと婚約した時に祝福してくれた。

今度はキャサリンが祝福する側だ。


「キャサリン様。エスターの事は私がしあわせにします」

「ありがとう、エドワード。エスターの事はよろしくね」


「キャサリン様。お世話になりました」

エスターは結婚すると同時にキャサリンの侍女を降りることになる。


「お世話になったのは私の方よ、エスター」

「キャサリン様。私はレスター侯爵家の者になるのですが、貴族社会の事はよくわかりません。色々ご指導ください」

「そうね。エスターも貴族の仲間入りね」

それまでエスターは平民だった。

平民から、突如階級が侯爵まで昇格する。


「エスター・レスター。何だか変な響きですよね?」

「そんな事ないわ。覚えやすいわ」

エスターとレスター何だか似ているけれど、覚えやすくて良い。


「おめでとう、エドワード」

ヴァレンティン皇子がやってきた。

「はい、ヴァレンティン皇子殿下」

「お前は本当に優れた騎士だ。この戦争に活躍した者として称号を贈りたい」

「ありがとうございます」


「そしておめでとう。エスターさん」

「あ、はい。ヴァレンティン皇子殿下」


「平民から侯爵への昇格もおめでとう」

「はい」


「キャサリン。きみは有能な部下に恵まれたな」

「はい。二人共本当によくがんばってくれましたわ」


ヴァレンティン皇子の金色の髪が太陽に反射して眩しい。


「エスター」


「はい、キャサリン様」


「私の事はもうキャサリンでいいわ。主従関係は解消したし、それにもうあなたも貴族の一員なんだから」

「でも……」

「貴族が貴族に様をつけるのはおかしいわ」

「キャサリンの言うとおりだ」

「あ……はい。ヴァレンティン皇子殿下がそう仰るなら」


「エドワードは元々は私の側近だった。そして、レガローグに行ってもらった。今度はキャサリンの護衛を務めてもらえるかな?」

「はい」

「エドワードを私の護衛にしてもらって良いのですか? フレミング家に頂いて良いのですか?」

「ああ、勿論だ。騎士団の人事を決めるのは私の任務だからな。それに、今はフレミング家と雇用契約を結んでいるんだろう? それでいいじゃないか」

「エドワード。引き続き私の護衛をよろしく頼むわ」

「はい、キャサリン様」


「キャサリンさ……いえ、キャサリン。私とは友達でいてくれますか?」


「勿論よ。同じ貴族としてよろしくね、エスター」

「あはは。エスターは侯爵子息夫人として、キャサリンはフレミング公爵令嬢として……だね」


「そうですわね。ヴァレンティン皇子殿下」


「でも、キャサリン」


「何ですか?」


「もしかしたら、きみは僕の妻になるかもしれない」


ヴァレンティンがそう言うと、一瞬沈黙が走った。


口火を切ったのはヴァレンティンだった。

「だから、キャサリン。きみは次期皇妃になるかもしれないんだ」


「「えー!?」」


エドワードとエスターが目をまるくしていた。


「いやですわ、皇子殿下。悪い冗談はやめて下さい」

キャサリンは唾を飲み込んだ。


「いや……仮にだよ。仮に」

「でも、ありもしない話を」


「きみを悲しませた男と僕は違う。きみを側妃にするなど不届き者が言う言葉を口にはしないさ」

「そうね。キャサリン。ヴァレンティン皇子殿下とはお似合いですわ」

と、エスター。


「エ……エスター!?」


「そうですね。エスターの言うとおりだ。ヴァレンティン皇子殿下とキャサリン様はお似合いだと思います」

「いやだわ。エドワードまで」


「そう。そういう事も踏まえまてキャサリンの護衛を務めて欲しいのだ。つまり、今はフレミング家と雇用契約を結んでいるけれど、僕とキャサリンが結ばれた場合はまた王室と雇用契約を結ぼう。そしてキャサリンの護衛を頼もう」


「はい。仰せのままに」


「ま、ともあれ今日は二人の門出を祝う日だ。二人に幸あれ」


そして、二人の結婚式は厳かに行われた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる

冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」 第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。 しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。 カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。 カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。

【完結】王女と駆け落ちした元旦那が二年後に帰ってきた〜謝罪すると思いきや、聖女になったお前と僕らの赤ん坊を育てたい?こんなに馬鹿だったかしら

冬月光輝
恋愛
侯爵家の令嬢、エリスの夫であるロバートは伯爵家の長男にして、デルバニア王国の第二王女アイリーンの幼馴染だった。 アイリーンは隣国の王子であるアルフォンスと婚約しているが、婚姻の儀式の当日にロバートと共に行方を眩ませてしまう。 国際規模の婚約破棄事件の裏で失意に沈むエリスだったが、同じ境遇のアルフォンスとお互いに励まし合い、元々魔法の素養があったので環境を変えようと修行をして聖女となり、王国でも重宝される存在となった。 ロバートたちが蒸発して二年後のある日、突然エリスの前に元夫が現れる。 エリスは激怒して謝罪を求めたが、彼は「アイリーンと自分の赤子を三人で育てよう」と斜め上のことを言い出した。

側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。

gacchi(がっち)
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

【完結】妹が私から何でも奪おうとするので、敢えて傲慢な悪徳王子と婚約してみた〜お姉様の選んだ人が欲しい?分かりました、後悔しても遅いですよ

冬月光輝
恋愛
ファウスト侯爵家の長女であるイリアには、姉のものを何でも欲しがり、奪っていく妹のローザがいた。 それでも両親は妹のローザの方を可愛がり、イリアには「姉なのだから我慢しなさい」と反論を許さない。 妹の欲しがりは増長して、遂にはイリアの婚約者を奪おうとした上で破談に追いやってしまう。 「だって、お姉様の選んだ人なら間違いないでしょう? 譲ってくれても良いじゃないですか」 大事な縁談が壊れたにも関わらず、悪びれない妹に頭を抱えていた頃、傲慢でモラハラ気質が原因で何人もの婚約者を精神的に追い詰めて破談に導いたという、この国の第二王子ダミアンがイリアに見惚れて求婚をする。 「ローザが私のモノを何でも欲しがるのならいっそのこと――」 イリアは、あることを思いついてダミアンと婚約することを決意した。 「毒を以て毒を制す」――この物語はそんなお話。

処理中です...