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祝福
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戦争は終わり、平和が戻った。
犠牲者は出たものの、それでも穏やかな解決方法だったという。
結果エドワードとイザベラは投獄されたらしい。
しかも、アンドリューとイザベラは別々の独房に入れられたらしい。
その報告はキャサリンの耳に入ってきた。
キャサリンの胸は高鳴った。
やはり、罰は当たったのだ。
アンドリューとイザベラの挙式は盛大に行われたという。
しかし、愛を誓った神様はわかっていた。
独善的な二人を。
そして、エドワードとエスターがブラック契約を結んでいた事に気付かされ、むしろ、キャサリンはこれで良かったと思っている。
キャサリンは今、ヴァレンティン皇子と交際している。
エドワードの紹介だった。
ヴァレンティン皇子はアンドリューと違って誠実で聡明で紳士だ。
月とすっぽんとしか言いようがない。
今日はエドワードとエスターの結婚式だ。
穏やかな日差しの下で二人は永遠の愛を誓いあった。
エスターは宝石を散りばめたウェディングドレスに身を包んでいる。
何とも輝かしい。
「おめでとう、エドワード。エスター」
「ありがとうございます。キャサリン様」
「ありがとうございますわ、キャサリン様」
二人はキャサリンがアンドリューと婚約した時に祝福してくれた。
今度はキャサリンが祝福する側だ。
「キャサリン様。エスターの事は私がしあわせにします」
「ありがとう、エドワード。エスターの事はよろしくね」
「キャサリン様。お世話になりました」
エスターは結婚すると同時にキャサリンの侍女を降りることになる。
「お世話になったのは私の方よ、エスター」
「キャサリン様。私はレスター侯爵家の者になるのですが、貴族社会の事はよくわかりません。色々ご指導ください」
「そうね。エスターも貴族の仲間入りね」
それまでエスターは平民だった。
平民から、突如階級が侯爵まで昇格する。
「エスター・レスター。何だか変な響きですよね?」
「そんな事ないわ。覚えやすいわ」
エスターとレスター何だか似ているけれど、覚えやすくて良い。
「おめでとう、エドワード」
ヴァレンティン皇子がやってきた。
「はい、ヴァレンティン皇子殿下」
「お前は本当に優れた騎士だ。この戦争に活躍した者として称号を贈りたい」
「ありがとうございます」
「そしておめでとう。エスターさん」
「あ、はい。ヴァレンティン皇子殿下」
「平民から侯爵への昇格もおめでとう」
「はい」
「キャサリン。きみは有能な部下に恵まれたな」
「はい。二人共本当によくがんばってくれましたわ」
ヴァレンティン皇子の金色の髪が太陽に反射して眩しい。
「エスター」
「はい、キャサリン様」
「私の事はもうキャサリンでいいわ。主従関係は解消したし、それにもうあなたも貴族の一員なんだから」
「でも……」
「貴族が貴族に様をつけるのはおかしいわ」
「キャサリンの言うとおりだ」
「あ……はい。ヴァレンティン皇子殿下がそう仰るなら」
「エドワードは元々は私の側近だった。そして、レガローグに行ってもらった。今度はキャサリンの護衛を務めてもらえるかな?」
「はい」
「エドワードを私の護衛にしてもらって良いのですか? フレミング家に頂いて良いのですか?」
「ああ、勿論だ。騎士団の人事を決めるのは私の任務だからな。それに、今はフレミング家と雇用契約を結んでいるんだろう? それでいいじゃないか」
「エドワード。引き続き私の護衛をよろしく頼むわ」
「はい、キャサリン様」
「キャサリンさ……いえ、キャサリン。私とは友達でいてくれますか?」
「勿論よ。同じ貴族としてよろしくね、エスター」
「あはは。エスターは侯爵子息夫人として、キャサリンはフレミング公爵令嬢として……だね」
「そうですわね。ヴァレンティン皇子殿下」
「でも、キャサリン」
「何ですか?」
「もしかしたら、きみは僕の妻になるかもしれない」
ヴァレンティンがそう言うと、一瞬沈黙が走った。
口火を切ったのはヴァレンティンだった。
「だから、キャサリン。きみは次期皇妃になるかもしれないんだ」
「「えー!?」」
エドワードとエスターが目をまるくしていた。
「いやですわ、皇子殿下。悪い冗談はやめて下さい」
キャサリンは唾を飲み込んだ。
「いや……仮にだよ。仮に」
「でも、ありもしない話を」
「きみを悲しませた男と僕は違う。きみを側妃にするなど不届き者が言う言葉を口にはしないさ」
「そうね。キャサリン。ヴァレンティン皇子殿下とはお似合いですわ」
と、エスター。
「エ……エスター!?」
「そうですね。エスターの言うとおりだ。ヴァレンティン皇子殿下とキャサリン様はお似合いだと思います」
「いやだわ。エドワードまで」
「そう。そういう事も踏まえまてキャサリンの護衛を務めて欲しいのだ。つまり、今はフレミング家と雇用契約を結んでいるけれど、僕とキャサリンが結ばれた場合はまた王室と雇用契約を結ぼう。そしてキャサリンの護衛を頼もう」
「はい。仰せのままに」
「ま、ともあれ今日は二人の門出を祝う日だ。二人に幸あれ」
そして、二人の結婚式は厳かに行われた。
犠牲者は出たものの、それでも穏やかな解決方法だったという。
結果エドワードとイザベラは投獄されたらしい。
しかも、アンドリューとイザベラは別々の独房に入れられたらしい。
その報告はキャサリンの耳に入ってきた。
キャサリンの胸は高鳴った。
やはり、罰は当たったのだ。
アンドリューとイザベラの挙式は盛大に行われたという。
しかし、愛を誓った神様はわかっていた。
独善的な二人を。
そして、エドワードとエスターがブラック契約を結んでいた事に気付かされ、むしろ、キャサリンはこれで良かったと思っている。
キャサリンは今、ヴァレンティン皇子と交際している。
エドワードの紹介だった。
ヴァレンティン皇子はアンドリューと違って誠実で聡明で紳士だ。
月とすっぽんとしか言いようがない。
今日はエドワードとエスターの結婚式だ。
穏やかな日差しの下で二人は永遠の愛を誓いあった。
エスターは宝石を散りばめたウェディングドレスに身を包んでいる。
何とも輝かしい。
「おめでとう、エドワード。エスター」
「ありがとうございます。キャサリン様」
「ありがとうございますわ、キャサリン様」
二人はキャサリンがアンドリューと婚約した時に祝福してくれた。
今度はキャサリンが祝福する側だ。
「キャサリン様。エスターの事は私がしあわせにします」
「ありがとう、エドワード。エスターの事はよろしくね」
「キャサリン様。お世話になりました」
エスターは結婚すると同時にキャサリンの侍女を降りることになる。
「お世話になったのは私の方よ、エスター」
「キャサリン様。私はレスター侯爵家の者になるのですが、貴族社会の事はよくわかりません。色々ご指導ください」
「そうね。エスターも貴族の仲間入りね」
それまでエスターは平民だった。
平民から、突如階級が侯爵まで昇格する。
「エスター・レスター。何だか変な響きですよね?」
「そんな事ないわ。覚えやすいわ」
エスターとレスター何だか似ているけれど、覚えやすくて良い。
「おめでとう、エドワード」
ヴァレンティン皇子がやってきた。
「はい、ヴァレンティン皇子殿下」
「お前は本当に優れた騎士だ。この戦争に活躍した者として称号を贈りたい」
「ありがとうございます」
「そしておめでとう。エスターさん」
「あ、はい。ヴァレンティン皇子殿下」
「平民から侯爵への昇格もおめでとう」
「はい」
「キャサリン。きみは有能な部下に恵まれたな」
「はい。二人共本当によくがんばってくれましたわ」
ヴァレンティン皇子の金色の髪が太陽に反射して眩しい。
「エスター」
「はい、キャサリン様」
「私の事はもうキャサリンでいいわ。主従関係は解消したし、それにもうあなたも貴族の一員なんだから」
「でも……」
「貴族が貴族に様をつけるのはおかしいわ」
「キャサリンの言うとおりだ」
「あ……はい。ヴァレンティン皇子殿下がそう仰るなら」
「エドワードは元々は私の側近だった。そして、レガローグに行ってもらった。今度はキャサリンの護衛を務めてもらえるかな?」
「はい」
「エドワードを私の護衛にしてもらって良いのですか? フレミング家に頂いて良いのですか?」
「ああ、勿論だ。騎士団の人事を決めるのは私の任務だからな。それに、今はフレミング家と雇用契約を結んでいるんだろう? それでいいじゃないか」
「エドワード。引き続き私の護衛をよろしく頼むわ」
「はい、キャサリン様」
「キャサリンさ……いえ、キャサリン。私とは友達でいてくれますか?」
「勿論よ。同じ貴族としてよろしくね、エスター」
「あはは。エスターは侯爵子息夫人として、キャサリンはフレミング公爵令嬢として……だね」
「そうですわね。ヴァレンティン皇子殿下」
「でも、キャサリン」
「何ですか?」
「もしかしたら、きみは僕の妻になるかもしれない」
ヴァレンティンがそう言うと、一瞬沈黙が走った。
口火を切ったのはヴァレンティンだった。
「だから、キャサリン。きみは次期皇妃になるかもしれないんだ」
「「えー!?」」
エドワードとエスターが目をまるくしていた。
「いやですわ、皇子殿下。悪い冗談はやめて下さい」
キャサリンは唾を飲み込んだ。
「いや……仮にだよ。仮に」
「でも、ありもしない話を」
「きみを悲しませた男と僕は違う。きみを側妃にするなど不届き者が言う言葉を口にはしないさ」
「そうね。キャサリン。ヴァレンティン皇子殿下とはお似合いですわ」
と、エスター。
「エ……エスター!?」
「そうですね。エスターの言うとおりだ。ヴァレンティン皇子殿下とキャサリン様はお似合いだと思います」
「いやだわ。エドワードまで」
「そう。そういう事も踏まえまてキャサリンの護衛を務めて欲しいのだ。つまり、今はフレミング家と雇用契約を結んでいるけれど、僕とキャサリンが結ばれた場合はまた王室と雇用契約を結ぼう。そしてキャサリンの護衛を頼もう」
「はい。仰せのままに」
「ま、ともあれ今日は二人の門出を祝う日だ。二人に幸あれ」
そして、二人の結婚式は厳かに行われた。
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