私は悪役令嬢なの? 婚約破棄して悪役にならない道を選びました

hikari

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真の悪役令嬢

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ジェシカとササ、カレンがシルヴィアを取り囲んでいる。

何だか嫌な予感がする。

アレクシアは唾を思い切り飲み込んだ。


「ねぇ、シルヴィアさん。あなたに嫉妬している人がいるわよ」

ジェシカが意地悪そうに言った。


「え!?」

シルヴィアは目が点になっている。

それもそのはず。

何の前触れもなくジェシカたちに絡まれたのだから。


「シルヴィア。あなた、自分が一番だと思っているでしょ?」

「いいえ。思ってないわ」

ジェシカは左手を上げた。

「これが目に入らないかしら?」


先程まで特に意識していなかったから気づかなかったものの、ジェシカの左手の薬指には指輪が嵌められていた。


「それは……」

シルヴィアはたじろいだ。

「これはエマニュエル王太子殿下から賜った婚約指輪なの」


「そう……なのね。婚約おめでとうございます」

「違くて」

とササ。

「あなた、婚約者いるの?」

ジェシカがまた意地悪くシルヴィアに質問する。


「いえ、いませんわ」

「いないのね。あなた。やけにクラスで注目浴びているけれど、王太子殿下にみ見初められなければ意味ないのよ」

「そう……なんですか」


シルヴィアは心ここにあらずという感じだ。


「シルヴィア。あなたは人の恋路を邪魔してはいけないの」

――ジェシカ。性格が悪い。


「それに、確かにあなたは学問にしても、楽器演奏にしても一等賞だわ。でも!!」

ジェシカは人差し指でシルヴィアを指さした。


「あなたって本当はコンプレックスの塊じゃないの?」

とササ。

ササの切れ長の目がつり上がってきた。

「確かに何でもできる。それをいいことに逆ハーレムを狙っているでしょ?」

とジェシカ。

シルヴィアは左右に首を振る。


「逆ハーレムなんて狙ってませんわ」

「じゃあ何であんたはいつも異性の前で気取っているのよ!!」


シルヴィアは今にも泣きそうな顔をしている。


――可哀想に。


「とはいえ。ピアノだけは私には敵わないわね。勿論、ピアノの女王とは私の事」

「ジェシカ格好いい」

とサザ。

「そうそう。ピアノの女王とはジェシカの事よ」

とカレン。

「ふふふふ。おほほほほ」

ジェシカは高笑いする。


「そんな逆ハーレムなあなただけど、王太子殿下には指一本触れさせないわ。そう。王太子殿下は私一筋なんだからね。おーほほほほ」


ジェシカは高笑いしながらシルヴィアの元を離れた。


シルヴィアはほっと息をついた。



ジェシカは何という性悪女。

本当の悪役令嬢って誰なのだろう?


ゲームのシナリオとは全く違う展開にアレクシアは驚きを隠せない。


――松田樹里亜さんも『恋の鼓動』の展開がこうなるなんて想像にも及ばないだろうなぁ。



本当の悪役令嬢はアレクシアではなく、ジェシカ・テイラーだ。


王太子に見初められたと自慢したり、自分を『ピアノの女王』と自画自賛するあたり、まさに自己愛性人格障害とはジェシカそのものだ。

そうか。ジェシカが悪役を買って出てくれたのか!


アレクシアがジェシカなら、ここにいるアレクシアはシルヴィアの仲間?


そうね。そうに違いない。



逆に、ジェシカからすれば確かにアレクシアは悪役令嬢だ。

しかし、それでもヒロインはシルヴィアに変わりない。



アレクシアはシルヴィアに協力する事にした。



「シルヴィアが可哀想。見てられないわ」

アレクシアは思い切ってヴィクトリアに言ってみた。


原作でも、アレクシアの親友はヴィクトリアただ一人。

ヴィクトリアもまた『悪役令嬢』の1人なのだ。


しかし、あきらかに原作とシナリオが異なっている。

ヴィクトリアもシルヴィアが可哀想だと思ったであろう。


やはり、アレクシアは大井亜里沙そのものなのだ。



「アレクシア。私もそう思ったわ」

やはり、と思った。


――もう私は悪役ではない。




「「シルヴィア!!」」

アレクシアとヴィクトリアの声がかぶった。


「はい」

「大丈夫?」

「大丈夫……です」


「ジェシカ、実はね……ここだけの話!!」

アレクシアはシルヴィアにぶちまける事にした。



――私は悪役ではないの。真の悪役はジェシカ・テイラーよ。



「実はジェシカはね、私からエマニュエル王太子殿下を奪ったの」

「そう……なんですか?」


「そうなのよ。私から婚約者を奪ったの。なのに、勝手に王太子殿下から見初められただなんて」

「酷い……酷すぎる」


「シルヴィア。あなたがモテモテだったからって嫉妬していたのは間違いなくジェシカ本人よ」

「そうかもしれませんわ」

シルヴィアが笑顔になった。




良かった。これでアレクシアは悪役にならずに済む。


悪役になってくれたジェシカには感謝の思いでいっぱいだった。



これで過酷なエンディングを迎えずに済む。


だから、シルヴィアが誰と成立しようとも、悪役でないのだから、シルヴィアにとってもアレクシアにとってもハッピーエンドだ。


「アレクシア」

「どうしたの? シルヴィア」

「私……アレクシアがこんなに話しやすい人だとは思わかなかったわ」

それもそのはず。

アレクシアは悪役令嬢の設定なのだから。


悪役は当然話しにくいし、とっつきにくいに決まっている。


「シルヴィア。大丈夫よ。私はシルヴィアの味方よ!」

「うん。ありがとう、アレクシア」



すると、ジェシカはアレクシアを指さして、もう片方の手をアゴに添え、ササとヒソヒソ話をしている。

そして、手を叩いて笑い出した。


「あんなの気にする必要ないわ」

ヴィクトリアがシルヴィアの肩を叩いた。


アレクシアは本当の悪役はジェシカだと確信した。
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